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「みんなのうた」、「bye bye my love」サザンオールスターズ。「ONE DAY」KUWATA BAND。「じんじん」原由子。慧くんがdr. dreの「still D.R.E.」を歌った。私はsublimeの「what i got」を歌った。理沙ちゃんと瑠夏のデュエットがメインで、ほとんど二人が歌っていた。朝くんの元気な「あー夏休み」は最高に楽しかったし、朱里の「みずいろの雨」は最高に素敵だった。


 瑠夏が後ろのベンチシートで眠ったようだった。私は決心して声を出した。

「慧くんの右手のリングがすごく気になってるの。あたしより好きな人がいるんじゃない?」

 慧くんが、運転しながら一瞬こっちを見て、私の頭を軽く叩いた。

「ただのハワイアンジュエリーじゃねぇか。くだらねーこと言うなよ」

 一瞬怖かったけれど、慧くんの横顔は笑っていた。良かった。

「アイこそ指輪してたよな。今度ペアリングを見に行くか」

「めちゃくちゃ行きたい!」

 幸せ過ぎた。やっぱり少し怖かった。慧くんに嫌われてしまったら、どうやって立ち上がろう。やっとまた歩き始めた何かが、止まってしまったら二度と歩き出せないかもしれない。


「あと一週間だな。給食が始まってから来るか?」

「何?」

「仕事だよ」

「うん。早く行きたい、と思ってる」

「初めから頑張り過ぎるなよ。後ろにカタログを積んできたから興味があるものから見てみて。生体や水草は実物で覚えていった方がいいから」

 家に着いても起きない瑠夏を、慧くんがベッドまで運んでくれた。

「今日はもう戻るけど、水曜日にゆっくり会おうな」

 バンの後部のスライドドアが開いたままだった。慧くんが乗り込み数冊のカタログを取り出した。運転席に乗り込む慧くんを見送った。観賞魚の飼育器具のカタログ。Tetraテトラ。KOTOBUKI。NISSOニッソーEVARESエヴァリス。JUN。エーハイム。カミハタ。スドー。イワキ。ジェックス。キョーリン。日本動物薬品。タカラ。サンミューズ。水作。TIME STOP……。実は、とあるブランドが好きで横浜のペットショップでもらったカタログを二冊持っている。残念ながらAnuenueでは取り扱っていないらしい。そのブランドは、タンク、照明、道具から水草まで、全てかっこいいけれど、高い。慧くんには何か考えがあって扱っていないのだと思った。でも、良かった。湘くんがそのブランドに憧れていて、私に教えたのだから。

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