'umikūmāono、ウミクーマーオノ。ハワイの言葉で10と6の意味。

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 八月八日。瑠夏の九回目の誕生日。三分程歩いた県道沿いの、人気のパティスリーでバースデーケーキを買い、二人だけのパーティーをした。世界で一番嬉しい日。私も、ママ九年生になった。


 次の週。和希の店とAnuenueの定休日。和希と英くんと慧くん、そして瑠夏と一色海岸に出掛けた。家から瑠夏の足で二十分。慧くんがバンで迎えに来てくれた。五分程でビーチに着く。

 水平線はただそこにあって、隣に慧くんがいた。新しいチューハイのプルトップを開ける。慧くんは煙草を吸いながら海を見ている。砂で山を作る瑠夏と和希と英くん。彼等は家族みたいだ。一色海岸は、材木座よりものんびりしていて、音楽すら流れていない。ビーチでタトゥーを出すのが禁止されているだけ。慧くんと私はラッシュガードを羽織っていた。

「二人で厚着ってウケるな」

 英くんが煙草を吸いに来た。私は砂浜に走り出して、海に入った。瑠夏が続いて走ってくる。瑠夏は浮き輪がないと海に入れなかった。私は暫く波間に浮かんだ。それから瑠夏が運んできたイルカの浮き輪で一緒に遊んだ。浮き輪の無色透明のところから海の底が覗ける。シュノーケリングをしているみたいで夢中になって二人で覗いた。

「ケイくん! おいでよー!」

 慧くんは近くまで来て海底に潜った。瑠夏に貝を渡してくれた。瑠夏は嬉しそうに笑っていた。

 瑠夏にとって父親とは、私の夫のことなのだ。自分が私から産まれたことは知っている。でも父親と血が繋がっていることは知らないのかもしれない。だから、私と仲良くなる大人の男を求めている。

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