第6話 何 ん


「その前に、俺の名前を言っとくよ、念のためだ」


 そう言って、りすは語り出した。



 はじめまして。俺の名前は、のののっていうんだ。まぁ、少しの間、よろしくな……あ? この名前は、生きてた時の飼い主から付けてもらっただけだ。意味は知らん。俺に聞くな。


 まぁ、なんだ、幸せに生きたはずなんだけどな、死んだら、こうだ、分かるだろ?俺はまだなぜかこの世界に残ってるわけよ?なんでなんだか俺も知らねぇよ!


 だけど、このままじゃいけねぇし…そうしたら、たまたまそこのお嬢ちゃんみたから声をかけたんだ、どうしたらいいか分かんなかったしな。


 ん?質問、いいぞ。どんどんしてくれ。答えられることだけだぜ?


 ん?死んだ理由かー。普通に病気だよ。歳もたたって、罹ったと思ったらもうダメだったな、ははは。


 あー、飼い主かー。確かに近くに住んでるとは思うんだが、すまねぇ、恥ずかしいことなんだけどな、ずっと籠の中で飼われてただけだからよ、家が分からねーんだよ。

 あとさ……小さい少女相手にさすがに化けてでるのは、目覚めが悪いだろ?しかたないことだ、笑ってくれ。


 ん……?総務の反応?……あぁ、このお嬢ちゃんのことか?即決だったぜ。何日かさまよってたけどよ、幽霊見てビビることなく『頼れる子がいるから大丈夫です!安心してください』なんて、言うからな、ちょっと笑っちまったよ。なんだ、おめー、笑ったような諦めたような顔して………そうか。それならいいんだが……。


 ざっとまとめるとこんな感じか。

 名前はののの

 ・依頼 成仏

 ・なるべく1人の力で済ましたい……か



 ある程度質問して、また、質問を重ねた。

 まぁ、特に意味はないけど、僕がもしかしたらの意味を取りたいだけだ。


「なんで成仏したいんだ?」

「だってなんで死んでもなんか残んのか?」

「ん? おれが聞きたいのは成仏したい理由だ」

「おれが聞きたいのは、なんで、死んでも成仏せずに残る理由だ」


 そうか、そもそも成仏しないことは「異常」となるわけか。

 会話が成り立ってなかった。僕と価値観が違う相手は、すこし、すこしだけ、苦手だ。


「なんで成仏できないんだろうな」


 りすはぼやいた。彼にとって一番気になることだろう。


「分からない」


 そう答えるのがいっぱいだった。


「何か案がありますか?水乃くん?」

「うーん。まだちょっと分からないです」


 僕は総務の方を向いて、両手を挙げた。

 総務は僕に顔を向け、りすに目を向けて言った。


「私に案がありますが、やってみますか?」


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