第5話 は 死


 総務についていくと、旧2-4組の教室にたどり着いた。

 古びた木。錆びたイス。それらが放つ独特な匂い。

 もう机列きれつもぐちゃぐちゃで、床の隅には見える大きさの埃が溜まっていた。


 そんな教室の真ん中にぽつんとが存在していた。


 りすの幽霊である。


「いやいや、美しいお嬢さんがた。ご足労様です」

「いえいえ」


 りすの言葉に丁寧に答える総務。

 りすがこちらを見て一言。


「確かに可愛らしいお嬢さんだ……」

「いや……」

「失礼ですが、貴女あなたのお名前は……?」


 なんでみんな僕のことを女だと決めつけにかかるのだろうか。

 何度もいうが僕は男だ。だから、ついてるものだってついてるし、ないものはない。

 生まれてこのかたそういう趣味とも無縁だし。


 だから……こういう期待を裏切るのは嫌だ。


「僕の名前は、水乃真白」


 僕のせいじゃないけどさ。


「男です」


「……」


 ほら、こうなる


「チッ……」


 りすは途端に荒っぽくなった。


「なんだよ、男かよ、しけたツラしやがってよぉ……」


 こんなに堂々を怒りを露わにしてくるのは珍しかった。


「関係ない。君が女だと決めつけるのが、悪い」


 だから、僕も強めに返した。

 りすは僕をひと睨みして、その視線を総務に向けて、


「なんだよーー!!可愛い子連れてくるって言ってたじゃねぇか!」

「いやだって……可愛いじゃないですか、真白くん」

「てめぇの可愛い可愛くないなんていいんだよそんなこと!」

「えぇ〜〜、でも〜〜」


 あ、総務、笑ってやがる。


「もう怒るな、話が逸れるだろ」


 僕が会話を元に戻すことにした。


「で、なんだ、その依頼って」

「そうです!りすさん。何の依頼なんですか、詳しく教えてください!」

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