りすの成仏

第1話 残 あ


「あなたは間違っています」


 総務は僕に向かっていった。

 黒髪のロング。あかいメガネ。やや小柄な身体。女子特有の柔らかさと香り。

 対する僕は、


「ふぇ?」


 と情けない返事しかできなかった。


「ん…おはよ…ござ……なんか…はぁ…ふぅーー…すいません」

「完全に寝起きじゃないですか」

「でもだって今起きたばっかりだし」


 とか口で言っておいたが、どうやら、寝ていたようだ。おはようございます。舌が回らない。水が足りてない。なにしたか覚えてない。長く息を吐いた。けれども、とりあえず謝りながら、布団をはがして、むっくりと起き上がった。


 総務はなぜか怒りを顔に出しながら言った。


「今5時ですよ。さっきから、4時間しか寝てないじゃないですか」


 見回してみると僕の部屋だった。いつも通り。ちゃんと服は着ていた。安心した。


 先ほどまで真上にあった太陽はもう夕暮れに変わっていた。もっともこの狭い部屋からは見えないけれど。

 僕は唾をむりやり口の中で広げた。


「いつものことです」


 彼女の言いたいことがようやくわかった。


「とりあえず、顔あらってきます」

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