第2話 独りでいることは


 僕は聞いた。


「ねぇ。君は一人なのかい?」

「わたしか? ひとり? どういうことだ?」

「君は周りに誰かいないのかい?」

「なんの話かよく分からんね。人間の概念がよくわからないが、周りには水素と窒素と星のかけらがあるぐらいさ」

「なにか今日起きた出来事を話したり、愛する誰かがいたり、温もりが恋しくなったりはしないのかい?」


 星に質問できるのは本当に珍しい。なぜか声が上ずってしまった。


「そもそも今日とかいう区切りが曖昧だな。人間の視点でいうと」

「そうか、そこからなのか」


 そのパッとしない答えに僕は軽くから膝を打ったような、あるいはまた紙袋を紙袋と気付かず殴ってしまったような感触がした。


 星はもともとその感覚がないのか。

 たぶん独りという感覚も。


「それでも、一人でいるわけだろ?」

「まぁ、ひと……ほし……? なんて言えばいいんだ、わたしは」

「まぁ、分からない。ひとりぼっちだな」

「それだな。ひとりぼっちだ。でも、わたしは寂しいと思ったことも、つらいと思ったこともない」

「へぇ、それはなぜ?」

「そもそも、一人でいることはそんなに寂しいことかい?」


 だって、

「別にひとりでもいいんじゃないか?それが悪いことではない。宇宙は広いからな」


 と、そう言って星は笑った、気がした。

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