第24話 明暗3 (21~30 重要エピ 篠田行動埋め)

 捜査会議では、新たな方針は出なかったが、さすがにこの日はこれ以上続けても無駄ということで、昼休み後は通常体制に戻ることになった。西田は後番で外で昼食を取り、午後2時に帰署して警務課の前を通ると、警務課の女性職員に声を掛けられた。

「西田係長に封書が来てます」

「お、どうも」

西田は封筒を受け取ると、差出人を見た。思った通り稚内の種村からだった。稚内と遠軽の郵便移動を考えると、電話した翌日には、すぐに送付してくれていたのだろう。刑事課へと移動しながら封を破り、写真と便箋を取り出した。写真はほとんど見なくなった「ポラロイド」タイプのものだった。そこには、確かに三浦友和風の好青年的二枚目の人物が、ビールジョッキを片手に笑っている姿が写っていた。おそらく、ビヤガーデンのサービスか何かで撮られたものだろう。


「なるほど。当時はモテただろうな」

西田は写真を封筒に戻すと、今度は便箋に目を通した。

「写真は昭和52年ではありませんが、昭和53年に職場の懇親会でビヤガーデンに出かけた時のモノだと思いますので、違いはないと思いますから送付させていただきます。使用後は、封筒の差出住所宛に返送ください」

と記してあった。刑事課室に戻り、西田は便箋を封筒に入れ再び写真を取り出すと、課長に、

「飯から戻ってきてすぐで申し訳ないんですが、ちょっと弘恩寺の岡田住職に確認したいことがあるんで、出て来ていいですか?」

と許しを請うた(こうた)。

「先日の無縁仏事件の話の奴か?」

「それです。頼んでいた写真が今届いたんで」

「わかった。はよ行って来い」

課長はわかっていたことでもあり、目も合わすことなく淡々と事務的に許可を出した。


 西田は車のキーを壁掛けから取り、駐車場へ向かうと丁度竹下が車から降りて、キーをロックするところだった。

「どこ行ってたんだ?」

西田が玄関先から大声で話しかけると、ビクっとした後西田の方を向き、

「うちの係で本屋に頼んでいた、アメリカの法医学者が書いた遺体隠匿事例検証の専門書が届いたとさっき電話があったんで、課長に頼まれて今取ってきました」

「え? 課長も大場か黒須にでも頼みゃいいのにな。わざわざ主任のお前に頼むとは」

西田はそそくさと竹下の元へ歩み寄りながら喋った。

「いや、俺が課長に買うように頼んだんで」

竹下は苦笑いを浮かべた。

「はーん、なるほど。それならいいけどな」

「ところで係長はどこかへ?」

「ああ、今から弘恩寺に行くところだ」

「一昨日だったかの話の続きですか?」

「例の写真が届いたんで、面通しだよ」

「えーっと種村とか言う人の奴ですね。車なら近いし、ただの面通しなら大して時間掛からないでしょ。ついでに俺が送っていきますよ。多少遅れたところで課長も怒らないでしょ」

竹下はポケットにしまっていたキーを取り出してドアを開けた。

「俺も車出すつもりでキー持って来ちゃったからいいよ」

と断ったが、

「いやいや。正直言うと、今日はあんまりあの部屋に居たくないんですよ。なんか気分が沈んじゃって」

と言うので、西田も断り続ける意味もないと考えた。

「わかった。じゃあ送ってくれ」

「そうこなくっちゃ」

竹下は運転席に座るとエンジンを掛けた。西田もすぐに助手席に乗り込んだ。


 特に話すこともなかったが、沈黙も嫌だったので、

「ところで、おまえの推理は今のところほぼ当たっていると思うが、やはり、篠田が佐田の遺体を掘り出した原因が何だったのか気になるな」

と話しかけた。

「それなんですよ。大方シナリオ通りには来てると思うんですが……。だとすれば、その理由が具体的に何だったのかという点は、あれから自分もずっと考えているんです。伊坂と篠田の会話での、篠田の『信じられない』や『確認する』という会話のフレーズや動揺ぶりに鍵があると思うんです。そこで、死んでいたはずの佐田実が生きていたと勘違いさせられたって説をこの前説明しましたけど……。ちょっと突拍子もない考えではありますが、どうもやっぱりこれが1番しっくりくる」

「しかし、殺したはずの人間が生きていたと思うってのは、あったとしても良くわからんな。誰かに殺害がバレたと勘違いしたんだろうか」

「それはあり得ますが、結果的には警察にもそういう通報は来ていなかった。あるとすれば脅迫でもされたのかもしれません。とにかく伊坂と篠田は佐田の遺体を確認する必要に迫られ、米田にそれを見られて口封じに殺害した。ここだけは確かだと思います」

竹下は最後の言葉に力を込めた。具体的に何かわからないとしても、その部分には確信があるのだろう。


 そんな会話を交わしているとすぐに、弘恩寺が見えてきた。弘恩寺は遠軽でもっとも古い寺院ということもあって、中心部に近い場所にありながらかなりの敷地を誇っていた。これまた中心部にある遠軽署からは、車なら数分程度であっという間に到着する近さなのだ。広い駐車場に車を駐めると、用がない竹下も一緒に車を降り、門をくぐって境内に入った。晩夏を名残惜しむかの如く、木々からセミが時折鳴く声が聞こえたが、同時に赤とんぼも目の前を横切って飛んでおり、秋の訪れも感じさせた。それにしても、よく考えれば、住職が在寺しているかどうか事前に確認しておいた方が良かったかと後悔したが、今更言っても仕方ない。若い僧侶が箒で境内を掃いていたので、住職が居るか聞いてみた。

「はい、岡田住職なら墓地の方にいらっしゃると思います」

そう回答を得たので、安堵して2人は墓地へと向かった。


 広い境内を回りこみ墓地へ入る直前、丁度住職ともう一人の人物がこちらへ向かってくるところだった。ただ、その隣に居た人物をはっきりと視認すると西田と竹下は思わず、

「あれ?」

と声をあげた。


「おう、西田さんと竹下さんじゃないの?」

「大将! 奇遇だな。どうしてまたここに!?」

寺で小料理居酒屋の大将に出会うとは夢にも思っていなかったので、心底驚いた。

「いや、俺のおふくろの月命日で墓参りに来たら、見かけた住職が付き合ってくれてね。ありがたいことだよ」

「なるほど。ここが菩提寺なんだ」

竹下は森閑とした周囲の様子を見回すようにしながら喋った。

「俺なんかの話より、2人こそ寺に何の用だ? 刑事が来るような場所じゃないべ?」

2人は大将に穴が空くほど見つめられて、何となく居心地が悪い気すらした。

「いや、ちょっと岡田住職に確認してもらいたいことがあってね」

「ははーん、聞き込みかい? じゃああんまり詳しいことは聞けねえな。でも、例の事件の関係なんだろ?」

聞けないと言いながら、実際には聞いてくる大将に、少々辟易としたが、

「まあそんなとこだね」

と西田は誤魔化した。

「まあいいや。じゃ、俺は仕込みしないと行けないから、あんまり油売ってられないんで戻るわ。それじゃ住職、今日はありがとうございました。それからお二人さんもまたウチに寄ってくれよ。それじゃあ」

大将は2人にセールストークをした後、頭を深々と住職に下げると、小走りに境内を抜けて行った。


 その様子を見ながら、

「月命日って、大将のお母さんは最近亡くなったんですか?」

と竹下が聞くと、

「いや、相田さんの母君が亡くなったのはもうかなり前だと思いますよ。私が生田原の弘安寺からこちらに戻って来る前のことですから、かれこれ20年以上は優に経っているかと思います」

と住職は言った。西田と竹下は、大将の苗字が「相田」だということをこの時初めて知った。店名が湧別の「湧」と大将の名前の「泉」とから取った「勇泉」ということを、最初に西田が店を訪れた際に聞いていたため、名前が泉というのは知っていた。ただ、苗字は一切教えてもらってもいなかったし、自分達も大将のことは「大将」と呼ぶことで済ませていたので、特に不便がなかったからだ。吉村も知っているかどうかはともかく、西田達に何か言ったということはなかった。


「母君は大変ご苦労されて相田さんを育てたそうですから、思い入れは強いんでしょう。墓も数年前に立派なものに作り変えましたからね。その上、母子家庭や親のいない子供達に援助しているような団体に寄付したりもしているようです。若い頃のご自身の苦労故の行動ではないでしょうか」

住職の話を聞いて、調子の良いオヤジというイメージで見ていた大将、いや「相田 泉」を見る目に多少変化が出た西田だった。しかし、今日は来たのはそんなことを知る為ではなく、種村が当時、生田原の弘安寺に訪ねてきたかどうかを確認するためだ。


「すっかり忘れてましたが、例の種村さんの写真が今日署に届きまして。これですけど、どうです?」

胸ポケットから写真を取り出して住職に渡した。住職は老眼のせいか、受け取った写真を腕を目一杯伸ばし、目を細めて見ていたが、

「絶対とは言いませんが、多分この方だったと思います。ちょっと三浦友和の雰囲気があったのを憶えていますから」

と西田に告げた。


「ああ、住職もそう思いましたか。三浦友和風味が出てます」

西田も我が意を得たりとばかりに笑顔になった。

「そうですね。なかなかの男前でした」

住職も柔和な表情を崩してニヤリとしたが、一瞬で元に戻った。

「他には何か?」

「今は特にないです。今日はこれが確認できただけで十分です」

「そうですか。お役に立てて良かったです」

これ以上住職に時間をとらせるのも悪いと別れを告げ、その場を立ち去った西田と竹下は、駐車場へ向かいながら境内を抜けていたが、自然と捜査についての話になった。


「結局、薬物処理したという方向からは、何も見えてこなかったな」

「残念ながら……。かなりの薬品量が必要になりますから、よっぽどの裏ルートでもなければ、表に出てくる可能性が高いんで、現状としては無理筋でした」

「後は、どこかに移して隠したってことしか残らんが、課長も安易にそっちに持って行きたくなかったみたいだ。やっぱり捜査対象が抽象的になりすぎるからかな」

「ローラー作戦しようにも、範囲が広すぎますから仕方ないと思いますよ。まして対応できる捜査員の数的限界がある」

竹下はキーホルダーを指で回しながら、ため息をいた。


「でも、範囲は絞るにせよ、調べるなら他の場所に隠したことを前提としないと」

「そりゃあそうですけど、何か絞ることが出来る材料がでないと、捜査再開の端緒にならないのでは?」

「そんなこと言ってたら何時まで掛かるんだか……」

門をくぐると、セミの声より駐車場の砂利を踏みしめる音が大きくなった。


「ところで、木を切り倒した日の捜査会議で、課長と話した時に有耶無耶になったが、佐田がまあ殺されていたと言うことはほぼ確実なのは当然として、一体どこで殺されたんだろうな。こっちについては竹下はどう思う?」

「課長も言ってましたが、北見のセントラルホテルをチェックアウトした後、札幌へと戻るために乗る予定だった特急「おおとり」号に乗らなかったんだから、当たり前ですけど、そこからあそこに埋められるまでの間に何かあったんでしょうね。喜多川と篠田の出世経緯を考慮すれば、殺人と死体遺棄の両方、もしくはどちらかには最低でも関わっているのは自明でしょうから、そこで2人が絡んでるんでしょう。でも、あの現場と2人の関係性から見れば、同じ『だけ』で考えるならば、『殺人だけ』よりは『死体遺棄だけ』の方が可能性は高いと思いますよ。遺棄現場に土地鑑がありますからね、2人は」

一度会話を切って頭を整理する竹下だったが、

「しかし、係長がわざわざその話を蒸し返したんだから、係長は課長の意見とは違う考えを持ってるってことなんですか?」

と続けた。

「課長と違うと言う訳でもないが、もし佐田が米田同様、あの現場で殺されたとするとどうなる?」

「それは拉致されて現場まで連れて行かれてからってことですか?」

「当然そういう場合も含む」

「うーん。それならあり得ると思います」

「なら、自分の意思で来てということは?」

「自分で!? あんなところに自分で行く意味がわからないですよ!」

先輩刑事を立てる竹下にしてはかなり大袈裟な言い方で否定した。

「やっぱりそうなるか……」

西田も結論がそうなることは半ばわかってはいたが、はっきり言われると余り気分はよくなかった。


「だって佐田があそこに行く理由がないでしょ?」

竹下の反論の根拠はそれで十分だった。だが、それでも西田には気になっていたことがあった。

「そりゃそうだが、あそこまで直接車を乗入れられるならともかく、車を置いてからそこそこ歩くだろ。1体の遺体をかなりの距離歩いて運ぶのは、複数人でも厳しいように思える」

「そういうアプローチで来ましたか……。ただ脅されて現場までってのはありえるでしょ?」

「それは俺も考えたけどさ……」

竹下が車のドアの鍵を開けようと無言になったタイミングで、西田は大人げなく拗ねた。乗り込むと竹下はエンジンを掛け、西田がシートベルトをするのを確認すると車をゆっくりと駐車場から出した。そして何気なく、

「自画自賛する訳じゃないですが、自分の、『米田が殺されたのは佐田の遺体を見られた』って説も、突飛な意見でしたけど、どうもかなり事実に近かったみたいですし。係長の考えの方が案外正しいかもしれないですよ」

とフォローした。

「結局自慢じゃねえか」

西田は竹下の左肩に軽めのパンチを食らわした。


※※※※※※※


 8月27日の夕方。西田は吉村の運転で紋別から署に向かって覆面パトカーを走らせていた。日曜午後ということで、紋別から湧別までの国道238号、上湧別(現・湧別町 2009年旧湧別町との合併により)からの国道242号も、昼過ぎ遠軽から出発した時よりも混んでいた。当日深夜に生活安全課が職務質問した男が、紋別署管内でのコンビニ強盗の容疑者だったため、西田達が当日中に紋別署に引き渡しに出掛けたその帰り道だった。


 強行犯係は結局のところ、佐田の遺体捜索についてはっきりとした方針を決定することが出来ないまま、通常業務をこなしていたのだ。切迫していないという状況がなければありえない捜査状況だったが、人員面という側面が仕方なくそうさせていた部分があった。


「行楽帰りの家族連れとか眩しいですわ、俺にとっては」

吉村が信号待ちをしながらぼやいた。

「おまえ彼女いるんだろ? 結婚しないのか? 遠距離(恋愛)だったっけ?」

西田が、半分開けたサイドウインドウ越しに夕闇を見ながら話を合わせた。

「結婚? 刑事みたいな不規則な仕事してたら結婚ためらいますよ。いや、それ以前に会えてませんから最近。係長はよく結婚出来ましたね?」

「いや、さすがにその言い方はないんじゃないか?」

西田は視線を吉村に向けると、軽く文句を言った。

「いや、刑事とか警官やりながらって話ですよ。土日っていう概念のない職業ですし、夜勤はあるし、一度事件が起これば詰めないといけないし。彼女は室蘭ですけど、もう何ヶ月も会ってないですわ。ああ、課長みたいに結婚してても帰れないとかあるから、文句言えないか……」

なるほどそういうことかと腑に落ちた西田だったが、

「刑事なんて皆そんなもんだし、普通に結婚してるだろ? みんな。まあ俺の場合はカミさんは高校の同級生だったんで、縁が強かったってのもあったかな。確かに遠距離時代もあったが」

と答えた。

「高校の同級生だったんですか。うらやましいですね」

信号が変わりそうになったので、思い出したように急にギアを入れながら喋ったため、棒読みのようになった。

「おまえはどうなんだ? 今の彼女とは」

「前の職場が室蘭署だったんで、その時合コンで知り合いまして」

そう言うと、アクセルをゆっくり踏み込んだ。


 たわいもない話をしばらく続けていたが、どうも吉村は彼女に結婚を迫られているような雰囲気だった。吉村としては、家族連れに憧れている発言の如く、結婚自体はしたいと考えているようだったが、生活設計が見えてこないことがためらっている原因らしい。多少人生の先輩としては何かアドバイスしようかと思ったが、吉村自身が特にそれを求めていなかったと感じ、お仕着せがましいと思われるのも嫌だったため、敢えて言及することはしなかった。


 やがて遠軽町に入ると、通夜なのか国道沿いのこの周辺町村で一番大きい葬儀場の前が、駐車場に入る車で軽く渋滞していた。行く時には反対車線で気付かなかったようだ。道路沿いに出ていた案内の板には、遠軽町議の名前が出ていたので、参列者も多いのだろう。吉村は少々イライラしたか、ハンドルを指でトントンとリズム良く叩いていたが、突然話を振ってきた。

「ここを通る時、結構な頻度で気になるんですけど、すぐ横が骨董屋なんですよねえ。葬儀場の看板と骨董屋の看板が並んでる風景って違和感ありますよねえ」

西田はピンと来なかったので、

「なんで?」

とぶっきらぼうに尋ねた。

「いやだって、葬儀屋の横が骨董屋ですよ。骨ですよ骨」

「幾ら何でも考えすぎだろ。大体こんなもんが運転してる時にいつも気になるってことは、それだけ注意力が散漫な状態で運転してるってことじゃないか? どうもお前は忘れ物したり、集中力に欠ける時が目に付く。その話なんかも、そういう悪いところが如実に出てると思うぞ。事故らないのが不思議なぐらいだ」

そう切って捨てた西田だったが、吉村は日頃の振る舞いと違い、基本的に運転中はかなり冷静沈着で、集中して運転しており、運転技術そのものも悪くはない。たまたま視界に入っただけだろうとは内心思っていた。その発言に対し、吉村は動き出した車列に合わせてゆっくり車を発進させながら苦笑混じりに反論した。

「係長、何もそこまで広げて言うことないじゃないですか! 大体葬儀屋の隣の骨董屋なんて、骨壷連想しちゃうじゃないですか? 骨董屋で売ってるのが骨壷みたいなイメージで、なんか縁起悪そうな感じしませんか?」

「俺は気にならないなあ」

「見解の相違、個人差があるとは言え、そんなもんすかねえ……」

吉村は到底納得出来ないという口ぶりだったが、そこからすぐ近くにある署が見えてきたので、それ以上話が進むことはなかった。


※※※※※※※


 8月28日の朝から、さすがにこれ以上捜査方針を決めないでいることも出来ないので、捜査会議が開かれ、課長は1つの提案をした。

「残念ながら、薬物処理での筋が見えてこなかった後、何か発覚することもなく過ぎてしまった。ただ、このまま手をこまねいているのは時間の無駄なのは言うまでもない。篠田が佐田の遺体を移動したとして、それが何処ら辺りなのかはっきりしないままではあるが、自分達が動かないままという選択肢は、もうあり得ない。まずは篠田が米田を殺害したと思われる8月10日から、湧別の工事現場まで通った8月12日の間に、必ずアクションを起こしていたという前提で考えてみよう。最初に、国道242号のルート近辺に何か隠せるような場所がないか考えていくことが、現時点での1つのきっかけになるかと考えている。どうだろうか?」

 

 正直、「結局そこに戻るのか」という失望が強行犯係のメンバーの脳裏をかすめたが、だからといって代案があるというわけでもないことに苛立ちを覚えた。課長もそれがあるなら、普通に汲んでくれるはずだからだ。浮かない表情をする部下の顔色を窺いながら、課長も気まずさを隠すことはなかった。

「正直言って、良案が思い浮かばない。これはお前たちもそうだと思うが」

歯切れが悪い課長に、竹下が意見した。

「まず8月10日当日に遺体を移動したとすれば、何度も議論したように、現場で米田の遺体を埋め、その後更に佐田の遺体を別の場所で隠すという行為をするとなると、ほぼルート沿いというぐらいの感覚じゃないとダメじゃないですか? それ以降の二日間だと、篠田は失くしたと勘違いしていた喜多川の時計を探していたとは言え、ある程度時間に余裕がありますから、多少は捜査対象は広がります」

それを受けて、

「まずは8月10日当日に移動したという前提で捜査をしてみるのが先決かな。そうなると、当日中に何処か良い場所に隠すという発想が出てくることもキーポイントになるだろう。道路沿い、もしくは近くにありながら、隠しても見つからないと思えるような場所となると、かなり絞られる。具体的に何かは思い浮かばんが」

と課長は言った。

「沢井課長、そうなると、やっぱり課長がおっしゃったように、242号を中心に、周辺道路含めて徹底して調べることしかないんじゃないでしょうか?」

今度は澤田が意見した。

「実際に車で走り回って、何かヒントがないか調べることもしないといけないな」

「課長どうでしょうか、それなら今日の午後からすぐに開始しましょう! 現状かなり時間も無駄にしていますからね」

西田は即行動開始を課長に催促した。

「よし、そうしようか」


 いざ決まるとなると、案外簡単に決まったが、捜査方針を最初から立て直すというのは心理的に負担があるため、緊急性の高い事件ではない場合、意外と転換するまでに手間取ることがある。今回はまさにそれだった。ただ、所轄単体での捜査であったことも、緩慢な動きになったことに影響していた点は否定できなかった。緊急性の無さと上からの圧力の無さが緊張感を緩めたからである。


 午後から、強行犯係は手分けして車で湧別大橋から生田原の現場まで、両進行方向車線から捜査を開始した。国道沿いは勿論周辺道路含め、何か遺体を隠せる場所に気付かないかのチェックである。湧別大橋から遠軽までを西田と吉村、遠軽から生田原の駐車スペースまでを竹下と大場、そこから逆に遠軽方向へは小村と黒須、遠軽から湧別大橋までを沢井課長と澤田が担当した。


 遠軽から湧別大橋までの周辺は課長と澤田がチェックするので、スタートラインの湧別大橋まで行く時にはチェックはする必要はなかったが、西田と吉村は242号沿いのみ軽くチェックしながら進んだ。そして、出発地である湧別大橋からかなりゆっくりとした速度で遠軽まで向かう。しかしながら、原野と湧別、上湧別に何か気になる場所は見受けられず、周辺道路も回ってみたものの、結局そのまま遠軽町内にまで戻ってきてしまった。


※※※※※※※


「成果なしと来ましたか。『ここに隠したい』という気にさせるような何かは、ちょっと見つけられなかった。やっぱりダメですかね」

吉村は諦めたような口調になっていた。

「佐田の遺体が埋まっていたというところまで折角来たが、そこから先もまた闇だ。いや、よく考えたらここまで来たのも奇跡だけどな。おまえのおかげでもある」

西田は幽霊騒ぎからここまで事件が発展した経緯を思い出し、吉村に礼を言った。

「まあこっちも偶然でしたけどね。大将サマサマですよ」

「JRのベテラン運転士に常紋トンネル調査会の調査予告記事、今となっては遠い思い出だ……」

西田には数ヶ月前のことがはるか昔のことのように思えていた。しかしそうは言ってもそれとは真逆に時間の進み具合は早く感じていたのだから、この矛盾をどう処理するか戸惑っていたのも確かだった。


「あ、昨日の通夜の人、今日は葬儀だったんですね」

吉村が昨日の葬儀場を通りすぎようとした時に、歩道沿いの葬儀案内の看板を見て声を上げた。

「もう時間的に葬式は終わってるな。看板ぐらいさっさと取り外しとけばいいのに」

西田は脇見しながら文句を付けた。

「骨董屋は今日も客が来てませんよ。と言うより、客なんて来てるのをまともに見かけたことがないような……。やっていけるのかな?」

「ああいうのは店に来る客に売るというより、上客の家まで行って売りつける商売という方が正しいんだぞ」


 西田は駆け出しの警官時代、所轄の生活安全課に勤務していた頃、古物買い取りの関係で質屋や骨董関係の店に職務で出入りしていたこともあり、骨董・古美術関係の商売に関する予備知識が少々あった。

「なるほど。店自体はあくまでギャラリーやショーウインドウ程度の意味しかないのか」

吉村は感心していた。


※※※※※※※


 全員が戻ってくるのを待って、午後6時から互いの成果についての会議が始まったが、案の定、これと言った場所の報告は捜査員からは当初出なかった。その様子を見た後、竹下から新たな提案があった。


「今日の捜査の範囲外で、周辺とまでは言えないかもしれませんが、自衛隊の遠軽駐屯地なんてのは、案外盲点かもしれないですね。国道から数キロほど離れてますが」

「場所的には一般人は近付きづらいという点、だだっ広いが利用されているのは敷地の一部という点は利点ではあるが、結構面倒じゃないか、あそこで穴掘ってってのは。警備も回ってくるしな」

「ええ。ただ、警備の巡回はそれほど頻繁じゃなかったと思いますよ、係長。意外と夜の方がマズイと思います。昼間は一般人も駐屯地の中とは言いませんが、道沿いで山菜採りとかしてる人もたまにいますから。問題は道路からちょっと中に入り込むとなると、あんまり時間は掛けられませんね」

「それだけじゃなく、調べるにしても対象がかなり広いな、道道244号だったっけ? あの駐屯地を通る道路は?」

「課長、そうです。あともう一つ弱点が。当然捜査許可を自衛隊側からもらわないといけないです」

竹下はむしろそちらの方を問題視しているようだった。

「ああ、それもそうだ。一般なら警察の威光でなんとかなるが、自衛隊となると色々面倒だ。確信があるならいいが、厳しい部分があるな……」

沢井は唇を噛むと、

「それについてはちょっと署長とも協議する必要があるから、一旦保留にさせてくれ」

と竹下に告げた。

「どうだ? 他に今日の捜査で何か気付いたことはやっぱりないか? 何でもいいぞ」

沢井課長の発言に促されたか、小村と黒須が互いに顔を見合わせて一言二言言葉を交わすと、小村が挙手した。課長はそのまま発言を許可した。


「242からちょっと離れますが、分岐から国道333号沿いの遠軽スキー場なんかどうでしょう? 夏場はそれこそたまに山菜採りぐらいしか人も来ませんし、利用者が多くなる冬場は雪で埋まってるんで、丁度良いかと」

「ああ、あそこは確かに狙い目ではあるな。分岐してから1キロぐらいしかなかったはずだ。うむ」


 課長には好感触という感じだった。ただ、おそらく課長も内心はわかっているのだろうが、生田原の現場から駐屯地にしろスキー場にしろ、わざわざ遺体を移動して隠す程のメリットがあるようには西田には思えなかった。いや、課長や西田だけでなく、強行犯係全体もそうは思っているはずだが、暗中模索でもしないよりはした方がいいというのが結論なのだから仕方ない。他には意見も出なかったので、駐屯地はともかく、スキー場については許可もすぐ下りそうということで、早速翌日調べてみることになった。


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 翌8月29日午前、前日に許可を貰っていたので、警備課の捜査員から正田しょうだ相馬そうまを借りだし、遠軽スキー場へ捜査へと捜査に出向くことになった。捜索範囲が広いということで、警備課から応援してもらうことになったのだ。若手が車の準備のために、課長や西田より先んじて階段を駆け下り、西田達がそれをゆっくりと追っていると、「キャッ」という声と共に、吉村の「ああ、ゴメンね」という声が下から響いてきた。西田達は吉村がおそらく女性職員と激突したのだろうと思ったが、案の定1階の階段からすぐの場所で吉村と大場が警務課の女性職員と共に、何やら資料と思われる紙の束がダンボールから大量に散らばっているのをかき集めていた。

「ごめんごめん」

吉村はひたすら謝っていた。西田と竹下も黙って手伝おうとしたが、課長からは、

「吉村、おまえは集中力が足らんからこうなる」

と叱責の声が飛んだ。ただそう言いつつも拾うのを手伝うのが沢井らしいとも言えた。


 無造作に紙を黙々と床から拾い集めて、同じ場所に重ねていた西田達だったが、女性職員が何となく気不味そうな表情でそれを見ていたことに竹下が気付いた。

「なんか問題ある?」

竹下が問うと、

「あのー、すみません。これ全部で7種類あるんですけど……」

と意外な答えが返ってきた。


「え? それぞれホチキスで止めてあるから、同じ資料かと思ったよ……」

大場は持っていた資料を読み比べていた。

「こんだけ同じようなモンが混ざると分けるのが面倒だな」

西田がそう呟くと、

「『木の葉を隠すなら森の中』っていう話があるが、まさしくこれも同じだな……」

と沢井が応じた。

 

 女性職員が7つに分けたそれぞれの資料を確認しながら、それぞれに分類していく刑事達は同じような文句をブツブツと呟きながらも、資料の冒頭を読んで分けて置いていった。数分掛けて仕分けが終わると、女性職員は礼を言いつつそれをダンボールに順番に入れて、間に付箋を挟むと抱えて上階へと上がっていった。


「あの重さを楽々と持ち上げるようには見えん……」

小村は後ろ姿を見送りながらボソッと言った。確かに割と細めで可愛らしい容姿からは想像できない筋力ではあった。

「彼女、高橋って言う、ああ見えて柔道強い子ですよ。今年遠軽に来て柔道部に入ってます」

署内の柔道部で活躍する正田が説明した。

「柔道部か。なるほど見かけによらずパワーあるわけだ」

吉村はたった今起こったことの原因が自分であることも忘れたかの如く、他人事のように言った。西田はそれについてツッコミを入れようとしたが、課長のさっきの発言と共にふと頭の中にあることが閃き、そして駆け巡った。


 西田以外のメンバーはその場から動き出し、駐車場へと向かったが、西田は一人そのまま立ちすくんだままだった。

「おい西田、どうした? 行くぞ」

課長が声を掛けると、ハッと我に返り、

「課長すいません! 先に行ってもらえますか? ちょっと寄りたいところがあるんですが?」

と突然口にした。

「え? お前何言ってんだ!?」

課長は唖然としたが、

「いや、本当にすみません。確証は何もないんですが、どうしても気になることがあるんで、今すぐに確認しておきたいんですよ!」

と懇願した。課長はその様子に思うところがあったか、

「何だかわからんが、おまえがそこまで言うならいいぞ。後でちゃんと報告してくれよ。相方の吉村にもそう言っておく」

と、敢えて詳細を聞かずにOKを出してくれた。

「勿論です! 正直、成果があるとも思えないんですがね……」

西田は感謝すると課長を見送り、そのまま刑事課に駆け込んで、捜査資料の入ったキャビネットから資料ファイルを取り出した。そこから更にあるモノを取り出すとポケットに忍ばせた。そして車のキーを持って生活安全課へと向かう。


 生活安全課の室内に入ると、西田は下山課長のデスクに真っ直ぐ突き進んだ。勢いよく向かってきた西田に面食らったような下山だったが、

「刑事課の西田がウチに何の用だ?」

と一呼吸置いてからゆっくりと言った。

「忙しいところ申し訳ないです。古物担当、ちょっと貸してもらえませんかね?」

「古物担当? 西田の案件だと強盗でもあったか?」

何の脈絡もないことを唐突に言われ、下山は困惑していた。

「いえ、窃盗でも強盗でもないんですが、骨董店に聞き込みしたいんで、顔馴染みが居た方が円滑に進むと考えまして」

西田の説明を受けて意図が理解出来たか、下山は割と簡単にそれを受け入れたようで、

「おい、栄村、宮部、ちょっと来い!」

と担当者を呼んだ。


「課長、何か?」

西田も面識がある栄村主任が、西田に視線をやりながら聞いた。

「強行犯の西田が、古物商担当に協力して欲しいと言ってきてる」

下山も西田を見ながら告げた。

「西田係長、協力というのは?」

「栄村、署の近くにある葬儀場の横の骨董店……」

そう西田が言いかけたところで、

「ああ、冴島骨董店ですか? ええ、勿論ウチが担当してますよ。特にこの宮部があそこの店主とは懇意です。何か調べたいことでも?」

と遮って言うと、宮部の背中を押して西田の前に出した。

「そういうことなら、宮部君? ちょっと俺の聞き込みの際に口利きしてもらえないかな? 警察手帳出して聞くのもいいが、やはり知り合いが居たほうが相手の心証も良いだろうし」

と西田が切り出した。

「はい。勿論喜んで! 刑事課に協力できるなんて光栄です!」

やや緊張気味に姿勢を正した宮部は、20代前半のかなり若手に見えた。

「じゃあ下村課長、ちょっとこの宮部君を1時間も掛からないと思いますが、今から貸してもらえませんかね?」

「栄村と宮部が問題ないなら、俺も異存はない」

下山はそう言うと、栄村と宮部を確認した。二人共黙って頷いたのを見て、

「問題ないみたいだから、すぐ連れてってくれ。宮部! 足手まといになるんじゃないぞ!」

「そんなに大したことじゃないですから」

課長の心配を笑って否定すると、西田は宮部を伴って駐車場へと向かった。


「あれ、車で行くんですか? てっきり自転車かと」

宮部は少々驚いた様子だったが、

「ああ、確かに大した距離じゃないが、俺は聞き込みの後、遠軽スキー場に行かなきゃならんのでな。勿論君を署に送り届けてからだが」

と説明した。

「運転は西田係長に任せていいんですか?」

と恐る恐る聞いてきた宮部に、

「ああ、気にするな。どうせこの後も一人だから自分で運転するんだ」

と言って運転席に乗り込んだ。そして会話する間もなく、あっという間に反対車線の冴島骨董店の駐車場に滑り込み、宮部を先頭にして西田も暖簾をくぐった。


「どうもー」

宮部が愛想よく声を掛けると、奥から店主らしき中年のメガネを掛けた男が出迎えた。

「何だ、宮部さんかい。客かと思ったよ。がっかりさせないでくれ。古物の買い取りのチェックなら1ヶ月前にしたばかりだべ?」

「いや、今日はそういうことじゃなく、ちょっと他の担当の刑事さんが、冴島さんに聞きたいことがあるって言うんで、俺が仲介というか紹介というか……。こちらウチの刑事課の西田係長」

店主の毒舌の入った挨拶にも構わず、宮部が西田を紹介した。西田は一応警察手帳を呈示して挨拶した。

「刑事さんがウチに用があるって? 昔盗品買い取った時以来だなあ。あれはかれこれ20年前ぐらいだったべか……」

店主はメガネを右手で上下させながら、しげしげと西田を見た。

「いや、自分は盗品関係の担当じゃないんですよ。今日はそういう話ではなく、無関係なことでお話を聴きたくて」

と冴島に言った。


「へえ。じゃあどんな話だべ?」

「冴島さんは売上を記録した帳簿みたいの、ずっと付けてます?」

「え? 買い取りじゃなくて、売上の帳簿? 刑事さんじゃなくて税務署の人じゃないのそんなこと言い出すのは? おかしいなあ」

冴島は怪しい人物でも見るように、顔をカウンターの前に突き出して覗き込む程だった。

「いや刑事さんだから」

宮部が苦笑しながら否定した。

「じゃあなんで売上の帳簿なんか?」

「端的に言うと、3年前の夏に、この店で買い物した人物がいるんじゃないかと思って聞きに来たんです。3年前の売上状況とかまで記録ありますかね?」

西田は申し訳無さそうに聞いた

「いや、税務署に申告するのに売上なんかの帳簿を7年持ってないといけないから、3年前なら当然まだ保管してあるよ。しかし警察に買い取り名簿ならともかく、売上なんて見せたこと無いね今まで……」

ぶつくさと文句を言いながら、冴島は奥へと引っ込んだ。宮部は直立したまま西田の様子を窺っていたので、西田は、

「うちが『殺し』を追ってるのは知ってるよな?」

と確認した。

「はい。勿論です!」

「この聞き込みはその捜査の一環なんだ。まあおそらく空振りだとは思うがね」

「え? そうなんですか? 自分も将来は刑事志望なんで、そんな大事な捜査にこういう形であれ加われて光栄です。父はただの会社員ですが、祖父が刑事だったもので、憧れてまして」

西田の発言に、より一層、直立度合いを高めた宮部を見て、なんとなく微笑ましいと思った。


「はい、これだね、3年前の売上帳は」

戻ってきた冴島はカウンターに帳簿を広げて置いた。それを見ながら、

「3年前の夏、具体的には8月中旬ぐらいに、大きな壺、具体的には白色の円筒状っていうのかな、そういう奴を売ったことないですか? おそらくだが1点ではなく数点、多分3から4点は購入してるんじゃないかと踏んでるんだけど」

と西田が言うなり、店主は、

「ああ、憶えてるよ! すごく印象に残ってるんだ、あの客は!」

と声を張り上げた。


「これだこれ! 8月10日の売上の客だな」

指を指した部分に、8月10日 白磁中華用食器壺4口(作者注・壺は口で数える)とあり、売上金額は80万とあった。西田は金額もそうだが、日付に特に注目した。

「おい初日からかよ」

西田は正直驚いてもう一度確認せずには居られなかった。つまり、米田が殺された当日である。

「これ売ったのは8月10日の夕方?」

「いやあ、確か真っ昼間だったと思うよ。昼飯を食べながらここでテレビ見てた記憶があるから。少なくとも夕方ではなかったな」

「となると、伊坂の電話を受けて生田原に向かう途中で、篠田は既に思い付いていたんだな……。遺体は確実に現場にあると信じてたんだ」

西田は独り言のつもりが周囲にも丸聞こえなのも気にせず、興奮気味に確認する。

「この中華用の食器壺ってのは、円筒形で間違いない?」

「あんたがさっき言ったように、普通の壺の割には上下の丸みが少なく、骨壷みたいな円筒形に近い、食器としては大きな壺だよ。蓋も付いている蒸し物なんかに使う奴だったと思う。白磁で焼きもいいし、手触りもいいし、悪いもんじゃなかったが、まあ原価1万もしないね。北見の潰れた高級中華料理店から安値で引き取ったな。仕入帳見ないとわからんが、多分1点5000円しなかったはずだ」

本来ならボッタクリについて一々思うところがあるはずだが、気にせず続けて聞く。

「これを買った男はもしかして、今ご主人が言ったように、『骨壷』という言葉を出して買い求めたの?」

「おう、よくわかったね!? だから尚更よく憶えてる。いきなり店に入ってきた知らない男が、『骨壷あるか?』なんて聞くもんだから、『ウチは葬儀屋の隣だが、一応骨董屋だからそんなもんはない』と呆れて言い放つとすぐに出ていこうとした。だけどなんか急に要り用になったからそんなことを言うんだろうと思ったんで、『骨壷はないが、形も色も骨壷みたいなもんならあるよ! 大きさは若干小さいけど』と声を掛けると、『それでいいから5点ぐらいくれ!』と言うもんだから、白磁のそれを見せると『これでいい』と言ったんでね。その食い付きぶりを見て、単価20万で、あるだけの4口分80万とふっかけてみたら、最初渋い顔したけど、すぐに『それで構わないからくれ』とあっさり言うんで、こっちもびっくりしたんだ。ただ、クレジットカード出したんで、『ウチは現金商売』と言うと、『近くに北見銀行があるか?』と聞いてきたから、遠軽支店の場所を教えてやって、しばらくしたら現金持ってきてね。デカイ紙袋二重にして、壺2口ずつの2袋両手にそれぞれ下げて急いで出て行ったよ。いやあ、あの日みたいなイチゲンの飛び込みの客が、言い値で高いモンを買ってく日はまずないね。でもそういうのだったり、掘り出しモンを安値で仕入れたりするのがこの商売の醍醐味だね。刑事さんにはわからんべ?」

冴島はニンマリした笑顔を見せた。刑事には刑事なりのそういう瞬間があるのだが、一々反論するのも時間の無駄だ。西田は胸ポケットから3枚の写真を出した。捜査資料から取り出した写真とダミーの写真2枚だった。


「その壺を買っていった男はこの中にいる?」

店主は出された写真を手にとって確認するとすぐさま、

「この人だよ! 刑事さんよくわかったな! あんた刑事辞めて超能力者にでもなれや!」

と満面の笑顔を見せた。店主が指した写真は、篠田のものだった。西田もしてやったりの表情で写真を胸ポケットにしまった。そして、

「おそらくまた、参考人聴取として来ることがあるかと思いますけど、その時も協力してくださいよ」

と頭を下げた。


「それについてはなんも問題ない! それにしてもあの客、何か事件に関係してんの?」

「おそらくは。あくまでまだ仮説の段階ですがね。じゃあ申し訳ないがこの後も予定が立て込んでるんで、今日はこの辺で失礼させてもらいます。ほんと、今日はいきなり来て色々すいません。助かりました」

斜め後ろから黙って一連の流れを見ていた宮部に目配せで「退散」の合図を送ると、先に店を出た。ただ、宮部がドアを閉めようとした時に、思い出したようにそれを制止して、店主にドアの隙間から声を掛けた。


「ところで横の葬儀場とおたく、勿論おたくの方が先に店出したんでしょ?」

「そりゃそうだ。こっちが後だったら、わざわざこんなところに骨董屋出さないよ。20年前まではボーリング場だったんだ」

「なるほどね。そうなるとご主人には申し訳ないが、警察としては隣に来た葬儀場に感謝だよ。それじゃまた!」

「え?」

店主が西田の発言の意味を理解できなかったことにも構わず、西田はドアを閉めると車に乗り込んだ。


※※※※※※※


「俺も早く西田係長のように刑事になりたいです!」

駐車場を出るなり宮部が「宣言」してきた。

「それならば、まずは今いる生安での仕事をきっちりすることだ。俺も交番から所轄勤務になった当初は、生安で今の君と同じ古物商担当だった。そこは絶対見誤ったらいけない」

「西田さんもそうだったんですか。わかりました、肝に銘じます」

宮部はハキハキと答えた。西田も若かりし頃の初心に戻ったような新鮮な気持ちになった。


 署に一度寄り、玄関前で宮部を下ろすと、一旦無線で課長と連絡が取れるか試してみるも、全員車から離れているらしく繋がらなかった。

「携帯の電波も届かないし、やっぱり直接行ってから説明しないとダメだな、課長には」

西田は結局そのままスキー場へと車を走らせた。


 10分程度で着いたスキー場の駐車場で同僚の車の横に駐車してから、冬にはゲレンデになる斜面を見ると、課長達が真ん中に居て、部下達が離れた雑木林との境界や笹やぶに居るのが見えた。西田はゆっくりと斜面を登り始めて、課長の元に着いた。課長は腕時計を確認すると、

「思ったよりは早いな」

と言った。


「おかげで面白い情報が取れました。ところでこんな斜面には幾らなんでも埋めないでしょ? 大雨でも降ったら露出しやすい」

と西田が懐疑的な言動をすると、

「そりゃそうだ。俺は斜面から全体を見回して、どこか埋めそうな場所がないか、まずチェックしてただけだ。」

と仏頂面になった。

「あ、そうでしたか。失礼しました」

「ところで西田の面白い情報ってのは?」

「ああ、その話ですか。別に大したことじゃないんですがね」

西田は勿体を付けた。

「何だよ。いいから早く言えよ!」

しびれを切らしたように課長は急かす。

「確信があるとまでは言えませんが、おそらく佐田の遺体の在処がわかりました」

「そうか、それは良かったな」

課長はぶっきらぼうな言い方になった直後、

「は? お前今何て言ったんだ?」

と西田を二度見した。


「佐田の遺体の隠し場所が、おそらくわかりました」

「ええ!?」

スキー場一面に響き渡るような声だったせいか、遠く離れた場所に居た部下たちも一斉に課長と西田に視線を集めた。

「何で早くそれを言わないんだ?」

「いや、みんな捜索してるんで、それからでもいいかと」

「遺体の在処がわかったんだろ?」

「まあ、7割程度の自信ですからね。今調べてるのを止めさせるとまでは……」

「5割で十分だ。7割もいらん。早く説明しろ」

「いや、ここで説明してもわかりづらいだけですよ。ちゃんと戻ってから話します」

「よーしわかった! おい! 署に戻るぞ!」

沢井課長は山に木霊するかの如く腹から声を出すと、散らばっている部下に命令を下した。おそらくは課長も「スキー場説」はかなり確率が低いと考えていたのだろう。撤収判断は素早かった。突然の変心ぶりに、割と近くに居た吉村と竹下は戻ってきて早々露骨に

「来たばかりで何言ってんすか?」

と文句と疑問をぶつけたが、

「西田が佐田の遺体の場所について新しい情報を掴んだらしい。会議のやり直しだ」

と説明した頃には、他の捜査員も急いで課長と西田のところに集まってきた。

「それで、佐田の遺体は何処にあると?」

「竹下、それは署に戻ってからのお楽しみだ」

西田は意地悪そうにニヤついた。


※※※※※※※


 署に戻ると、西田は早速説明を始めた。強行犯メンバーとしては、結論から先に聞きたかったようだが、西田としては、じらして自慢したいこともあったものの、それ以上にどうしてそういう結論になったかのプロセスを説明することが、ある意味結論より重要だと考えたこともあった。


「話は先日紋別署からの帰りに、吉村がおかしなことを言い始めたことから始まっている」

「俺、変なこと言いましたっけ?」

吉村は素っ頓狂な声を出した。

「葬儀場と骨董屋の話だよ」

「あれですか。骨董屋と骨壷の話?」

「それだ。葬儀場の隣にある骨董屋なんて、如何にも骨壷売ってるイメージだとね。わけのわからない発想だけを責めたな、あの時は」

「散々言いたい放題でしたね」

吉村は怒っているような口調をわざとしておどけた。

「そして今日だ。ぶつかって資料を散らかしてくれた。課長にも色々言われてたな」

「はいはい、確かに怒られました。ただそれがどうして佐田の遺体を見つけたことにつながったんですか?」

「まあ焦るな吉村」

西田はそう言うとホワイトボードにマーカーで要点を書きながら説明をし始めた。


「篠田を捜査していた時に、喜多川の時計を失くしたこともそうだったが、奥さんの話では相当忘れ物をしやすいタイプだったと聞いた。この点はどうも吉村同様、悪く言えば注意力がない、良く言えばって程でもないが、色々周りのことにドンドン目が行ってしまうというタイプでもあったと思う。つまり、篠田も3年前の8月10日はほぼ確実、11日12日も湧別大橋の工事現場から生田原の事件現場まで時計を探しに行っていたと仮定すれば、242号を走るのは間違いない。その時に「冴島骨董店」の前を通り過ぎた、いやもしかしたら信号待ちで止まったことがあったんじゃないかと。そしてあの葬儀場と骨董店の並びに目が行って、吉村と同じようなことを考えたのではないか? そんな気がしたんだ」

「うん? よくわからないが、つまり骨董屋で骨壷が売っているって言う妄想をしたって?」

課長は怪訝な表情をして言ったが、すぐに問いなおした。

「つまり、西田の推理ってのは、骨壷を使って、佐田の遺体を墓地みたい場所に移動させるつもりだったってことか? 言われてみれば遺骨が当然ある場所に隠すことは、それこそ推理小説でもあるように、悪いやり方じゃない。だとすれば生田原か遠軽の辺りの墓地ということになるのか!? ただ葬儀場から骨壷の着想の時点で、少々飛躍がありすぎるような気がするが。骨壷は骨董屋には売っていないだろうし、そう簡単に手に入るもんでもないだろ」


 西田は、篠田が骨壷に類似した壺を、3年前の8月10日に骨董店で購入していたという事実を既に抑えていたことを敢えて隠し、話を再開した。結論よりもプロセスを追って話したい気持ちを貫徹したからだ。いや、もはやただ単に勿体ぶりたかっただけかもしれない。


「ええ、確かにかなり突飛な発想だと思います。でも骨壷は骨壷と同じような色や形状のもので足りますからね。それは骨董屋にもあったはずです。そして篠田にはそういう発想をしてもおかしくない事実認識があったことも確かだと考えています」

「事実認識?」

「篠田、これは喜多川もですが、彼らは1977年、昭和52年9月25日の慰霊式典において、タコ部屋労働の犠牲者の遺骨が骨壷に入れられて、慰霊碑の下の墓標に納骨されるのを目の前で見ている。これは当時、生田原の弘安寺の僧侶として出席していた、今は遠軽の弘恩寺の岡田住職が証言しているので間違いないでしょう」

「ああ、そんな話を先日ここで住職がしてくれていたな」

課長は思い出したように言った。


「そうです。同時に大事なのは、その時に、事件化出来ずに無縁仏として葬られた3体の遺骨が入った骨壷も、一緒に納骨されていたと言うことだと思います」

「それについては、種村とかいう発見者が後から篠田や喜多川に報告したって話だったっけ?」

「課長、そうです。そうなると、目の前で見ていた納骨された骨壷の中に、全く無関係の遺骨が入っていたものも含まれていたということが、大きく篠田に印象付けされたのではないかと。そして8月10日は、竹下の説を採れば、殺したはずの佐田の遺体について、確認しておかなくてはならないような情報を伊坂大吉から得ていた可能性が強いわけです。そうだとすれば、篠田としてはあそこに埋めたと確信を持っていて、確認してみたら実際に遺体がその場所に現実にあったとしても、この先のことを考慮すると、心理的にもっと安全な場所に隠したいという意識が働くかもしれないという考えには説得力がある。だからこそ、篠田が湧別から生田原の現場に向かっている時には、遺体がちゃんとそこにあるなら、更に何処に隠すかということを常に考えながら運転していた可能性があるかもしれない。そうなれば、尚更吉村の発想と似たような考えを思い付くことは十分考えられるのではないかと。5年の経過を考えれば、当然かなり白骨化していると考えるのも不思議ありません」

「あ、ちょっと待て! 西田は墓地じゃなくて、あの『辺境の墓標』に佐田が紛れて隠されているって言いたいのか?」

課長の声は上ずっていた。課長自ら慰霊碑と墓に名付けた「辺境の墓標」というフレーズが余程気に入っているらしい。他の誰も使っていなかったにも関わらず、この期に及んでも使っていた。


「そうか! あの場所なら、人骨があっても当然で、仮に見つかってもただのタコ部屋労働者の遺骨ぐらいにしか思われないし、そもそもが誰も開けない。確かに墓地に隠されたのと同じだ。5年見つからなかった場所から敢えて移す価値はあると思います」

小村は感嘆の声を上げた。

「いや、それだけじゃない。遺体を移動させる際に人目に付くという、ある意味最も大きなリスクがほとんどない。佐田が埋まっていた場所から距離も相当近いし、更にあの山の中だから。うってつけの隠し場所だ」

竹下が更に付け加えた。


「その通りだろう。篠田は国鉄の職員だったから、あの場所に入り込んでくる人間が滅多に居ないことは知っていた。鉄道写真を撮るために入ってくる人間や保線の人間は居ても、あの場所は鉄路からそれなりに離れてるし、あったとして山菜採りが居るか居ないか程度だろう。だからこそ、米田が篠田の前に現れたのは、2人にとって、考えられる中で最も不幸中の不幸だったと思う……」

西田は神妙な顔つきでそう言うと、

「おそらくだが、米田は、篠田の人影が鉄路の近辺から山中に入り込んでいくのを見たんだろうな。だからこそ何かと思って近づいてみたんじゃないか」

と続けた。

「ほんと、酷い話ですよ……。米田はまだ若かったのに」

黒須も残念そうに言った。


「課長が結論をいきなり言っちゃったんで話が飛んでしまったけど、自分がそう考えるに至ったのは、今日の散らばった資料が、実は見た目は丸っきり一緒だが、中身は別のものだったということがあったんだ。つまり『木の葉を隠すなら森の中』という、課長が言ったフレーズが印象に残った。それが別の『種類』の遺骨でも、一箇所に集められれば、同じ種類の遺骨として扱われるようになると、篠田が考えたんじゃないかということにつながった。さっきも言ったが、昭和52年の慰霊式でのタコ部屋労働の犠牲者の納骨の際に、実は3体の無縁仏も一緒だったことを後から知ったことが、篠田にとっての大きなヒントになったのではないかと」

「なるほど。じゃあ今回の西田の推理が出てくる背景には、終始吉村の落ち着きの無さがあったってことなんだ。吉村、怪我の功名だな!」

茶化す課長を前に、

「いや、よく考えてみれば今回の事件、吉村が幽霊騒ぎの虚構説を持ってきた上に、更に常紋トンネル調査会の遺骨収集話を聞いてきたことで、喜多川が浮かび上がるきっかけになってるわけですから、ある意味ほとんど吉村のお手柄でここまで来たと言えないですかね?」

と西田は真剣に言った。

「そうか。言われてみればそうだな……。全部吉村がキーマンになってるわけだ。ははーん。こいつは天才かもな」

「褒められてるのか馬鹿にされてるのかわかりませんね」

吉村は課長の言葉に困った顔をしたが、

「いや、本気でおまえのおかげだよ、ここまで来たのは」

と西田は相変わらず真面目な顔をして礼を述べた。


「盛り上がってるところ申し訳ないんですが、ちょっと待って下さいよ。まあ推理としては確かに筋は通るし面白いとは思いますが、やはりかなり大胆なものであることには変わりないような気がしますが……。壺の話も仮説ですよね? まだ喜ぶべき段階ではないかと」

黒須が言いづらそうに異を唱えた。

「いや、まあそれはそうだが、調べてみる価値はあるだろう」

課長も先程までの調子の良い発言は控えた。西田はそれを見ながら、切り札を見せるときが来たとほくそ笑んだ。


「実は、さっき渦中の冴島骨董店で確認したんだ。そして、ある男が3年前の8月10日に白い大きな白い円筒状の壺を4つ購入したことが判明した。更にその男が誰か確認したら、この男だと店主は証言してくれたんだ」

西田は胸ポケットから篠田の写真をゆっくりと出した。

「おい! 早くそれを言え」

課長は声は怒っていたが、表情は完全に笑顔だった。他のメンバーも喜んで手を叩いた。竹下だけは冷静を装って、

「3年前でしょ? その点だけがちょっと不安ですね」

と言ったが、それに対して、

「ちゃんと無関係の写真も見せたし、何より店主の証言と帳簿で確認したが、篠田は飛び込み客でありながら、円筒状に近い壺4つで合計80万の買い物をキャッシュでしたそうだ。そんな客は滅多にいないからよく憶えていたらしい」

と西田が付け加えると、

「なるほど! 80万をいきなり現れてキャッシュで払って行ったんですか。じゃあ間違いなく印象に残ってるはずです。課長の説はほぼ確実なものになったわけですか!」

と竹下も最後の疑念が晴れてすっきりしたようだった。


「しかも4つってのが重要だ。一体分の遺骨を埋められていた場所から墓標まで運ぶのに、おそらくある程度の大きさの壺でも4つぐらいは必要だと思う。普通火葬場では全部入れないからな、骨壷1つには。火葬場では残ったものは処分してしまう。でもこの場合はそういうわけにはいかないからね」

西田は胸を張った。

「そうなるとだな、西田。今回の推理は、まだ見つかってないとは言えほぼ完璧だな。それにしても8月10日か……。現場に確認に行った当日の道中には、既に隠す方法を思い付いていたんだな。相手は故人とは言え、いやらしい工作をしやがったわけだ……。さて、しかしそうなると、今度は『辺境の墓標』を直接暴かないといけないわけか……」

課長は先程までよりトーンを落とした。さすがに『墓』を掘り返すとなると、色々問題はある。

「課長、寺川さんには『自分の土地を調べる際には連絡はもういらない』とは言われてますが、今回は場所が場所だけに一応断りは入れた方がいいと思います。そして岡田住職と松野住職にも参加してもらえる時がいいと思いますよ。やはり墓ですからね。供養してもらった上でやらないと、こっちとしても落ち着かないですから。その上納骨当時の状況については岡田住職が詳しいですから話も聞きながら捜査できます」

「うむ、西田の言う通りにしよう。早速手配しなくてはな!」

課長はすぐに目の前の受話器に手をかけた。


※※※※※※※


「いやあ今回の課長の推理はお見事でした!」

竹下が、課長が寺川に電話しているのを横目に握手を求めてきた。

「まあな。さっきも言ったが、今回の考えが浮かんだのは半分は吉村のおかげだ。ただ、まだ現実に佐田が見つかったわけじゃない。あくまで仮説がほぼ完璧だったというだけだからな」

そう言うと、西田は自分を戒めるように口を真一文字に結んだ。

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