どう表現すればよいのか、よくわからない。ひどく美しいものを見てしまい、呆けている。そんな気分、そんな状態。幻想的である。少し古い純文学に似ている。ノスタルジックである。嫉妬を覚える。儚く静かに麗しい。その文体も世界観も、私には書けない。作者の完結済み短編『神様は、帰る場所にいる』は、戦後14年の時点から終戦間際へと遡る構成が独特だが、こちらもやはりとても美しく、郷愁を喚起する作品だった。