第二話 肖像画に恋する男
ルシエが住んでいるアパルトマンは、サン=ルイ島のラ・ヴィ・アン・ローズ通りにあった。河岸に面しているためパリの市街にしては日当たりが良く、往来する船音や大通りから届く喧騒も、溢れんばかりの薔薇色の陽光によってその響きを和らげる。アトリエの小さなバルコニーからは悠然たるセーヌ川の流れやそこにかかる橋々、シテ島の東端にそびえ立つノートルダム寺院の後姿、白く輝くパンテオンを中央に据えた左岸が見渡せた。
間借りしているアパルトマンの三階(フランス式では二階)には、寝室が二つ、浴室、台所、そして食堂から続く客間兼アトリエがあった。アトリエの白い壁と木張りの床はプリミティブな雰囲気を持っていて、私は一目見たときからこの場所が好きになった。
燦々と降り注がれる陽の光が壁に掛けられた絵を照らし、テーブルの上に雑然と散らばるパレットナイフや皿を宝石のようにきらめかせている。私は床に積み重ねられたカンヴァスをスカートの裾にひっかけないよう注意を払いながら、
視線を下ろすと交差した道を横切るご婦人の姿が見えた。階下に住むお喋り好きなフォルクレ夫人だ。ルシエが初めて私のことをアパルトマンに連れて来たとき、彼女は少しばかり呆れ気味に言ったっけ。「今度はずいぶん可愛らしいお嬢さんですこと。一体いつまでもつことやら」
夫人は私をお茶に招くたび、いつも尋ねてもいないのにフランシス・ルシエという人物について自分の知っている限りを話したがった。以前のルシエは絵のモデルとして、とっかえひっかえさまざまな女性をアトリエに連れ込んでいたとか、モデルたちは皆揃いに揃って彼に恋に落ちるが長く続いたためしがないとか、その手の話。
夫人はルシエが貴族であることなど知る由もなく、画家を目指している比較的裕福な家の道楽息子とでも思っているようだった。彼が使用人を必要としないのも親に勘当されて金銭的に余裕がないからと考えていたようだが、実際には甲斐甲斐しいモデルたちがあれこれと世話を焼き、夫人の雇っている家政婦がついでに面倒を見てくれていた。ちなみに、現在はただで居座らせてもらう代わりに私が最低限の家事を担っている。絵のモデル代は仕事として引き受けた以上、きちんと貰うことにした。
ルシエのスケッチブックの大半を占めていたのは裸婦画だったので、私は彼と出会った当初、すっかり自分が脱がされるものだと思い込んでいた。ところがそれは大いなる見当違いであり、大変ありがたいことにそういった面ではフランシス・ルシエという人は健全なる紳士であった。
「女性の体は神秘だよ。実に美しいものじゃないか。アルメル、君の体はどんなだろうね? 僕は実に興味を持っているんだよ」
ヌードモデルを強要することはなかったが、ルシエはいつもこんな調子で私を説得しようとした。なんだか妙な話だが、彼のこうした単純かつ明快なセリフはかえって私を安心させた。素のままのルシエには屈折したいやらしさがまったく感じられなかった。
そんなわけで、私は今の暮らしに不満はない。不満どころか満足している。それでもしいて何か良からぬ点を挙げろと言うならば、愛についての画家の戯言に耳を傾けなければならないことが、若干鬱陶しいくらいだろうか――。
「そのまま。動いてはいけないよ」
唐突に、音もなく部屋に入ってきたルシエが言った。いつの間にやらそばに椅子を運んでいたようで、背後から腰を落ち着けようとする衣擦れの音がした。振り向くことを禁止され、私は今しがた閉めたばかりの窓越しにルシエの姿が見えないものかと目を凝らしつつ、わざと不満気に呟いた。
「これから朝食の準備をしようと思っていたところなんだけど」
「後にしたまえ」
紙を捲る音から、彼が素描を始めたことがわかった。どうやら窓辺に立つ私の後ろ姿に創作意欲を掻き立てられたらしい。私は軽く溜め息をつくと、黙って遊歩道沿いに視線を留めた。
ルシエは確かに紳士だったが、時折こんな調子で自分勝手なところがあった。きっと世の芸術家たちの世界というものは、このように自分中心で回っているに違いない。少なくとも、私の知っているもうひとりの画家はそうだった。
「絵を描くことの、何がそんなに楽しいの?」
口からついて出た言葉は、自分が思っていたよりもはるかに冷めた口調だった。ルシエは動かしていた手を止めて、たぶんこちらを見上げたと思う。
「なんだか随分と批難めいた物の言い方をするね」
ご名答。だって批難しているんだもの。
「私のパパも画家だったのよ。知らない女の人とどこかに消えてしまったけれど」
私を捨てた身勝手でろくでもない父親よ――。最後に言いかけた言葉はあまりにも自己憐憫的だったので、そのまま飲み込むことにした。
こうした個人的ないきさつから、私は芸術家や芸術を愛する人たちがあまり好きではなかった。暢気な華やかさに虫唾が走る。偏見? その通り。まさに偏見なのだと思う。自分自身でそれを認識しているが、こんな風に感じてしまう心はもはや容易くは変えられないのだ。
「君はどこの出身なんだい?」
さらりとした口調でルシエが尋ねてきた。興味なさげな素振りを装ってはいるけれど、たぶんこれまできっかけがつかめなかっただけで、ずっと尋ねる機会を探っていたのだろう。
「生まれた場所は知らないわ。戦争後、革命が起こるまではパリにいたようだけど、育ったのは北西の港町」
「ル・アーブルかい?」
「さあ、どうだったかしら」
「父親のほかに家族は?」
私は首を横に振った。
「母は私を生んだときに死んだそうよ。ひとりっ子だし、親戚の存在は知らないわ。私は孤児院で育って、ヴェルヌ神父が――そこは元々教会だったから、教区の神父が院長をしていたの――彼が色々と面倒を見てくれたわ。……色々とね」
最後の方のあてつけるような口ぶりにルシエが気づいたかどうか定かではなかったが、止まった手が再び動き出した気配は感じられなかった。もしかしたら、浮ついた頭の中で私のパパのことを称賛しているのかもしれない。すべてを投げ捨てて愛に生きた芸術家は、きっと恋愛至上主義者の彼からしてみれば英雄なのだ。私にとっては情に溺れた無責任な自由人でしかないというのに。
突然、首筋にルシエの指先が触れ、私の体はびくりと反応した。
「動かないで」
耳元をかすめる低い声。彼はいつの間にかすぐ背後に立っていた。
「このあいだ、露店で見つけたんだ。ほら、君と初めて会った場所さ」
金の鎖を首元に回し、ルシエは私にアンティークのペンダントをつけようとしているところだった。
「君の瞳の色と同じ、琥珀の石がついてるんだ。綺麗だろう?」
ルシエは弄ぶようにペンダントを動かして見せた。陽の光を受けた小さな宝石がきらきらとした輝きを放つ。
「君にあげるよ」
頭上に優しいキスが落とされた。その直後、アパルトマンの戸口を叩く音がけたたましく響き渡った。
「誰が来たのか容易に想像がつくけれど、こんなに朝早くとはめずらしいね」
ルシエは私のそばから離れると、床の上に転がっていたたくさんの下絵をまたぎ、扉の方へと歩いて行った。
エミール・ド・ラペイレットはこの家の主であるフランシス・ルシエよりも尊大な様子でアトリエに姿を現した。老眼で耳の遠い門番のキトリー婆さんに気がついてもらえなかったことを彼はしきりに怒っていたが、窓辺に私が立っていることに気がつくと、いつも通りの嫌味ったらしい口調で挑戦的にこう言った。
「おや、アルメル。まだ捨てられずにいたのかい? 君はなんとも幸運な女だな」
私はルシエからもらった琥珀のペンダントに陽の光を当てるのに夢中な振りをして、黙って暴言を聞き流すことにした。
エミールはルシエの親戚で、唯一の男性モデルだった。しかし、私がこのアトリエにやって来てからというもの、ルシエがまったく自分のことを描かなくなったので、いつも八つ当たりのように憤っていた。
「言っておくがね、アルメル。君のような小娘に我が従弟(いとこ)(名家の人々は五親等までを叔父や従弟などと呼びあうらしい)は決して夢中になどならないのだから、そこのところをよく覚えておくんだね」
シルクハットを脱いだエミールは、なんとも鼻持ちならない様子で淡い金色の前髪をさらりと後ろに掻き上げた。黙っていさえすれば洗練された紳士だが、絵に描いたようなスノブで、極度の女嫌いなくせに自らの内には女性的な気質を持った同性愛者なのだった。そして、どこまで本気なのかは知らないが、彼はルシエのことを愛していた。
「ねえフランシス、こんな流行から外れた場所に一体いつまでいる気だい? そろそろ私のアパルトマンに引っ越してきたまえよ。もしくは郊外の美しい邸宅を君のために用意するよ」
オスマンのパリ改造によって整備された華々しいブルジョワ地区に住むエミールからしてみれば、古い館が建ち並ぶここラ・ヴィ・アン・ローズ河岸はひと時代前の陰気臭い場所でしかないらしい。
貴族である父親とブルジョワ出身の母親を持つエミールの価値観は、両者の影響からひどく複雑な独自性を形成していたので、ブルジョワたちが欲する貴族的な威厳や高尚な精神を発揮することもあれば、時に上流階級の人々が卑俗であると揶揄するようなものを好んだりした。
「エミール、悪いが僕はデッサン中でね。用があるなら単刀直入に頼みたい」
ルシエが素っ気無く言い放つと、エミールはわざとらしく肩を聳やかす。
「つれないね、フランシス。君が私にそんな態度をとるのなら、この吉報はなかったことにしたっていいんだよ」
ちょうどそのとき、ラペイレット家の従僕がアトリエに白い布のかけられた荷物を運んでくるところだった。奇妙なまでにもったいぶった仕草で布がするりと取り払われると、貝殻紋様の金の額縁に収められた肖像画が現れた。
いかめしい顔つきのダンディな紳士が、左手に杖を持って立っている。シルクハットを被り、腰下まで丈のあるゆったりとしたダブルボタンの上衣に、縞柄のズボンといった出で立ちだ。絵を見たとたんにルシエの表情は一変した。
「エミール、君、これをどこで手に入れた?」
「遺産相続の件で大叔父のアパルトマンを訪ねたときに、偶然見つけたんだ」
ルシエはまるで壊れ物にでも触れるかのように、絵の表面にそっと指先をかすめた。
「この線、この画風、彼の作品に間違いない!」
「それを聞いて安心したよ。絵を見たときにぴんときたんだ。これは君が集めている画家の作品に違いないってね。確信はあったが、まさか大叔父の家から見つかるとは思ってもいなかったから本当に驚いたよ。彼が亡き今、この絵がどのような経緯で描かれたのかを知っている人間がいるとすれば、当時の給仕頭であったユノーぐらいだろう。現在はアルジャントゥイユに住んでいるそうだ。もし君が彼に会いたいと言うのなら――」
「もちろん会いたいに決まってる!」
即答したルシエに対し、エミールは満足気に微笑んだ。
「そう言うと思って、先方に電報を打っておいた」
「ああ、エミール。今日の僕はどうかしている。君を愛してしまいそうだよ」
「好きなだけ愛してくれ、フランシス」
エミールはルシエを抱きしめようと両腕を広げたが、当の相手は身支度を整えに颯爽と自分の部屋へと姿を消した。抱擁が空振りとなったエミールは、気を取り直すようにして私に勝ち誇った視線を向けてきた。
「どうだい、アルメル。フランシスはもはや私に首っ丈だと思わないか?」
馬鹿馬鹿しくて返事をする気にもなれなかった。私は彼の存在を再び無視することに決めて、改めて肖像画に視線を投じた。
色に溢れたこの画家の絵とルシエの絵には、どことなく共通点があった。というよりも、ルシエが模写をするときはいつも決まって彼の作品を写し取っていたわけだから、影響を受けていないはずがない。
ルシエは幼い頃からずっとこの無名の画家の熱烈な収集家で、こうした人物画のほかにも風景画など数点を所有していた。署名があるわけでもないのに同一人物が描いたものであると判断できる理由は私には皆目検討もつかなかったが、彼にはそれがわかるらしい。
「フランシスは『彼女』のことになると随分と偏執的になるからな」
横でエミールがフフと笑った。私が理解不能な一瞥を傾けると、彼は驚いたような顔をした。
「なんだいアルメル、君はフランシスがこの画家の作品を追っている本当の理由を知らないのかい?」
応える間もなく、エミールは「へえ、なんだ。そうだったのか」と嫌味ったらしく口端を上げ、尋ねてもいないのに親切な紳士ぶって講釈し始めた。
「彼にはね、ずっと忘れられない女性がいるんだ」
「その話なら知ってるわ。幼い頃に一目見て恋に落ちたんでしょう? ルシエはいつも尋ねてもいないのに、どこかの誰かさんみたいに勝手に語り始めるもの」
エミールはむっとしたように眉を吊り上げたが、わざとらしく咳払いをしてすぐに話を続けた。
「フランシスが恋に落ちた相手というのは、ある画家によって描かれた肖像画の少女なのだ。実際のモデルに会ったことはないそうだが、琥珀色の瞳を持った大変美しい少女だったそうで、彼はその絵をもう一度見るために、画家の足跡を追い続けているというわけさ。その画家というのが、今我々の目の前にある肖像画を描いた人物なんだ。私はフランシスのためにこの作家の足跡を追い、琥珀色の瞳の少女の肖像画と、モデルを務めた少女の行方も必ず探し出してみせる」
「わざわざ自分の恋敵を探してあげるってこと? 随分とお優しいことね」
「私はフランシスを心の底から愛しているからね。彼が喜ぶことならなんだってしてあげるのさ」
エミールは誇らしげに言いながら、ふいに気がついたように私の瞳をじっと見つめた。
「そうか、そうだったのか。君のような小娘をわざわざ専属モデルにするなんて、ずっとおかしいと思ってたんだ」
彼は嘲笑的な笑いを漏らす。
「フランシスは琥珀色の瞳を持った君に、『彼女』の面影を見てるんだ。傑作だな、アルメル。君はフランシスの慰み者というわけだ」
二人がエミールの亡き大叔父の給仕頭であったユノー氏の元へ出かけてから、私はテーブルの上に頬杖をついて、日がな琥珀のペンダントを揺らしていた。ペンダントが作り出す光の影を、ただ、ぼんやりと何も考えずに眺めていた。
ルシエが帰宅したのは細い三日月が空に昇り始めた夕暮れどきだった。無造作にシルクハットを放り投げ、外套を羽織ったままがっくりと長椅子に横になる様子から察するに、画家に関する情報は彼が期待していたほど得ることが出来なかったに違いない。私がお茶を淹れて戻ってくるまで、彼はそのままの格好でぼんやりと天井を眺めていた。
「残念ながら元給仕頭は加齢による意識障害を患っていてね、肖像画を見せてもなんの反応も示さなかった。画家の消息どころか、かつての主人に関する記憶も極めてあやしいものだったよ」
事の顛末を話しながら、ルシエは角砂糖を三つもティーカップに放り込んだ。私も甘めが好きだったが、彼は根っからの甘党だった。
「砂糖の入れすぎで病気になっても知らないわよ」と忠告すると、彼は微笑を含んだ顔つきでミルクを注ぎ淹れ、「女性に対するように、つい甘くしてしまうのさ」と細い指先でカップを摘んだ。私は何も聞こえなかったのだと自分自身に言い聞かせつつ、両手で耳を塞いだまま、壁に立て掛けられている例の肖像画と向き合った。
ルシエは紅茶を一口啜ってから、疲れをほぐすように長椅子にもたれ、両足を伸ばして交差させた。
「この絵は帝政時代に描かれたものなんだ」
「どうしてそんなことがわかるの?」
「一八六九年と制作年が記されてあった」
それは普仏戦争の前年だった。フランスがプロイセンに降伏する前の、
「あなたが恋に落ちた相手って絵の中の少女だったのね。モデルの少女にもう一度会うために、幼い頃から画家の行方を追っているんですって?」
私の問いかけにルシエの呆れ顔が向けられる。
「エミールが言ったのかい? 誤解しないでほしいのだが、僕はね、純粋にあの絵をもう一度見たいだけさ。僕の人生を変えた、あの少女の肖像画を」
彼は静かに長椅子から立ち上がると、そっと窓辺に寄り添い、夕闇に流れる雲を見上げた。少し開いた窓の隙間から、川舟に積まれたリンゴの香りが漂ってくる。
「まあ、『彼女』が実在するのならもちろん会ってみたいがね。当時、今の君と同じ年頃のモデルだったのだから、すでに結婚でもして幸せな家庭を築いているかもしれないな」
アトリエが暗くなってきたので、ルシエはランプに明かりを燈そうとホヤを外してマッチを擦った。横顔に映し出された影はとても複雑で、私は無意識にルシエの心の奥に潜む『何か』を暗がりに紛れて探り当てようとしていた。彼は自分が見られていることに気がつくと、物憂げな様子でテーブルに寄りかかり、私の瞳を覗き込んだ。
「君の琥珀色の瞳は、『彼女』を思い起こさせる」
胸にチクリと、小さな疼きを感じた。エミールの意地の悪い表情がうっすらと頭の中に蘇る。
「私は『彼女』の身代わりなの?」
ほとんど反射的に口から飛び出たその言葉に、ルシエは驚いたような顔をした。
「妬いてるのかい? アルメル」
「馬鹿言わないで。エミールがそう言っていただけよ」
嫉妬? 冗談じゃない。嫉妬とは愛する者の愛情がほかに向くことを憎む感情だ。私は決してルシエのことを愛していないし、そもそも男の人を好きになどならないのだから、私には関係ない。
「確かに『彼女』の面影は君にとても似ているけれど、僕は君を身代わりとして雇ったつもりはないよ」
「じゃあ、どうして私を専属モデルにしたの? あなたのためにモデルをしてくれる女の子なんて、ほかにいくらだっているでしょう?」
「彼女たちはモデルという枠を超えて、僕という人間を知ろうとする。恋する女性の洞察力は大変鋭いものだ。僕が心のどこかで肖像画の少女を忘れずにいることを悟るのだろう。自ら傷つき去っていくか、奇行に走るかのどちらかだ。だから、僕はモデルには色恋沙汰に溺れることのない君のような女性を求めていた」
ルシエはそこで一度言葉を切ると、何かを考えるようにして黙り込んだ。そして、遥か遠くの風景でも眺めるように、私の瞳の奥を今一度見つめた。
「君を雇ったのには、もうひとつ理由がある」
彼はカップに二杯目の紅茶を注ぎ淹れ、砂糖を三つ中に落とした。
「君があまりにも似ていたのさ。あの頃の僕にね」
そう言って、ルシエは私に向かって微笑んだ。
彼の奥に見え隠れするぼんやりとした世界が、ほんの一瞬垣間見えたような気がした。だが、黄昏がすぐに深い夜を連れてきて、その淡い世界を隠すように包み込んだ。
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