後編 爆弾投下

お祓いして焼却処分派には勝算があった。


常識的に考えて女の子が放尿を盗撮され、挙げ句の果てにその画像を世界に発信なんぞ喜ぶ訳が無いと。


恨み、憎むことがあっても発信なんて望むわけが無い。だからこそ、花子さんの判断に委ねることに賛成したのだ。



だが発信派にも勝算はある。それは花子さんの生態だ。


花子さんは元々、構ってちゃんである。構って欲しくて死後もトイレに居座り続けているのが幽霊として居座る理由。


そんな構ってちゃんの花子さんの写真が世界中に発信されて喜ばない訳が無い。

それも見事なまでの放尿写真。多くの人が喰いつく筈である。

その証拠にネット上では今もこのネタの話題が持ちきりである。




そして二大勢力の関係者達が、花子さんの目撃された小学校へと集結した。


花子さんの居る女子トイレに集まると、花子さんは都合良く皆の前に現れた。


そして皆が問い詰める。『発信』か『焼却』か。



だが、そんな二大勢力の思惑などお構い無しに、花子さんはとんでも無い爆弾を投下するのだった。


















「脱糞写真なら世界に発信してイイよ♪」





一同は凍りついた。


え?この人、何言ってるの?と、誰もが その意味をすぐには理解出来なかった。





元々、この事件は構ってちゃんの花子さんが盗撮マニアの変質者に放尿シーンを盗撮されたことから始まった。


変質者は盗撮した時に花子さんに見つかり、盗撮の言い訳に「この写真があれば皆が注目してくれるよ」と、花子さんが構ってちゃんであることをいい事に言葉巧みに丸め込む。


その後、変質者は逮捕され警察が放尿写真を流出。

世間が騒ぐ程に花子さんは喜んだが、写真ばかりに注目が集まり、自分のところに誰も来ないことには不満を覚えた。


そこで花子さんは職員室のパソコンを利用して、膨れ上がった二大勢力に花子さんの意見を聞くべしと提案。

花子さんの思惑通りに事は進み、こうして沢山の人が花子さんの元に来訪したのだった。




花子さんは思った。

放尿写真でこれだけ騒がれたのだから、それ以上の写真ならもっと騒がれるのではと。


そして思いついたのが脱糞写真である。

しかし、脱糞発言で一同はフリーズ。予想では皆が喜んでくれると思ったのに…。


信じてくれてないのかと思った花子さんは、その場でパンツをズリ下げて本気である事を証明しようとするが、エセフェミニスト団体がそれを阻止。

後ろでペ道の会のメンバーがあからさまに舌打ち。

「チッ!」




花子さんを落ち着かせると、改めて皆で話し合いを始めた。


花子さんの言い分は兎に角、目立ちたいこと。そして構ってもらいたいこと。この二つである。


だからと言って脱糞は無いだろうと反対意見が多数。

反対意見に不満な花子さんをどうにかして真っ当な真人間…いや、真幽霊にするために一同は協力体制を取ることに。


つい先ほどまで一触即発で戦争でも起こりそうだった二大勢力。

それが花子さんの脱糞発言によって、お互いに手と手を取り合うこととなるのだった。





長い長い話し合いの結果、花子さんをアイドルとしてデビューさせる方向に決定した。それも清純派アイドルである。


清純派アイドルはウンコなんかしない、そんな都市伝説を見越しての決定である。

そうまでして花子さんから脱糞を遠ざけたいのは、先ほどの脱糞発言が余りにも衝撃的だったからであろう。

満場一致で清純派アイドル路線が決定したのであった。





それから花子さんの活躍は目覚ましいものであった。


アイドルとして活躍すればカメラ小僧の追っかけが増え、撮る写真全てが心霊写真であるのだから心霊写真研究家にとっては好都合。


アイドルとして活躍すればテレビ局としても数(視聴率)が取れるから大歓迎。特に心霊特番ではゲストに本物の幽霊が来るのだから言うことなし。


アイドルとして活躍すればエセフェミニスト達も女性が社会で活躍してると御満悦。ペ道の会も世界貧乳選手権の連中も文句無し。


世界放尿選手権の関係者も、ライバルである世界脱糞選手権に秀逸なる逸材が流れることを阻止出来て安堵の表情。







一枚の心霊写真から始まった世界を二分する程の大騒動、結果的には世紀のスーパー清純派アイドルを生み出し、皆が一つになるという大団円を迎える事となるのであった。



そんな清純派アイドルで大活躍の花子さん。

多くのファンが支持する中、ネット上では中傷する輩も出て来ることは、人気者ゆえに仕方の無いことなのかも知れない。


ネット上での中傷、『花子さんは実は脱糞マニア』だとか、根拠の無い中傷をするものが少なからず存在。

勿論、清純派アイドルの花子さんに限ってそんなわけが無いと、ファンは信じることも無く一蹴。




年をとって女優に転向など、幽霊である花子さんには無縁の事。

永遠のスーパー清純派アイドルとして、花子さんはいつまでも輝き続けるのであった。





FIN

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

世界を二つに分けた七不思議 猪子馬七 @chocobanana

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ