世界を二つに分けた七不思議

猪子馬七

前編 一枚の心霊写真

世界が真っ二つに分かれた。

その原因を生み出したのは一枚の心霊写真だった。




とある小学校の女子トイレで撮られた写真に写っていたのが一人の少女の幽霊、学校の七不思議で有名な花子さんである。


この写真は撮ろうと思って撮られた心霊写真では無い。

小学校に忍び込んで盗撮を繰り返してきた盗撮マニア。その変質者の撮った写真の中に、たまたま写り込んでいたのがクダンの心霊写真である。


盗撮マニアの変質者は御用となり、刑務所へ。

その時、押収された写真の中から出てきたのが花子さんの心霊写真であった。



警察が押収して管理してある筈の心霊写真。それが流出して世間の目に触れる事によって、問題が勃発。


まず、始めに騒いだのが心霊写真研究家の連中であった。

彼等は世界初の花子さんの心霊写真の存在に歓喜し、霊能力者などを集めて大々的に研究をする事を発表。


勿論、それに喰いついて来たのがテレビ局の連中であった。

偽物の心霊写真を取り上げては騒ぐだけの心霊番組も、最近では飽きられて数(視聴率)が取れずに低迷中。

番組プロデューサーにしてみれば本物であり、巷で騒がれている花子さんの心霊写真は、まさに喉から手が出る程のネタであった。


心霊写真をテレビで紹介する。

どのテレビ局でもよく見かける光景ではあったが、そこに待ったを掛けたのが女性の人権を考えるフェミニスト団体であった。


花子さんの心霊写真。それは盗撮によって撮られたものである。

本人の許可を得て撮られた訳でも無ければ、了承を得て公開される訳でも無い。


仮に許可があったとしても、フェミニスト団体が問題視しているのはその内容。


撮られた場所は小学校の女子トイレである。

つまり、盗撮された心霊写真は小学生の女子児童が用を足している姿を写し出しているのだ。


そして問題視されてる写真には、花子さんの放尿シーンがモザイク無しでクッキリと写されている。


たとえ被写体が幽霊である花子さんであっても、トイレで用を足している姿を全国に放送するなど以ての外。フェミニスト団体が怒るのも無理はない。



しかし、そんなフェミニスト団体の発言に疑問を投げかけたのが幼女を愛するペド集団、『ペ道の会』のメンバーである。


花子さんは幽霊である。

つまり、既に亡くなっている花子さんには人権は存在しないのではと。

人権の無い花子さんの放尿画像は人権を侵害しないのだから、この素晴らしい画像は世界に発信するべきだと、ペ道の会のメンバーは訴えかける。


それに真っ向から反対したのが児童ポルノ撲滅委員会のメンバーである。

人権があろうが無かろうが、幼女の放尿シーンなど公開するべきでは無いと反論。

その様な猥褻写真は燃やしてしまえと、過激なまでの発言が飛び出すしまつ。


撲滅委員会のメンバーは兎にも角にも、児童ポルノに対して過敏に反応する。

子供の猥褻画像など燃やすことは勿論のこと、所持している輩もついでに燃やして殺せと、過激な発言はどんどんエスカレート。

ついには子供じゃ無くても、見た目が若ければ猥褻画像は全て禁止とまで提案。


そんな行き過ぎた思想の撲滅委員会に反論したのが、世界貧乳選手権の上位入賞者達である。


18歳以上でも、貧乳で見た目が幼く見える入賞者達。

そんな世界でもトップレベルの貧乳達が、見た目が幼い事を理由にAVやヌード写真などを規制されるのは人権侵害だと批判。


巨乳がAVに出演出来て、貧乳は無理などと…貧乳をコンプレックスに感じているものにとっては侮辱以外の何物でも無い。


確かに撲滅委員会の発言は貧乳に対する完全なる人権侵害である。

しかし、こんな時に限って女性の人権を考えるフェミニスト団体は、何も物申さず我関せずを貫き通す。

所詮は口先だけのエセフェミニスト達である。女性の権利を主張して威張り散らしたいだけのダメ人間達と言えよう。


エセフェミニスト団体の援護射撃など元から期待してない貧乳達は、花子さんは見た目が幼くても長く生きているのだから大人として扱う様に発言。




…その後、妖怪研究会やツルペタ推進委員会、世界放尿選手権の関係者など、多数の団体が入り交えて討論がなされた。



いつしか『写真を世界に発信する派』と、『お祓いして焼却処分派』との二大勢力に分かれ、世界を巻き込んでの争いへと発展するのであった。



一触即発の二大勢力。

いつ戦争が始まるかと緊張が高まるさなか、ネット上で「肖像権は花子さんにあるんだから、まずは花子さんの意見を聞くべきでは?」と、最もな意見が。


このネットでの誰の発言かも分からない他愛ない一言により、花子さんの意見を尊重することが決定。

『発信派』か『焼却処分派』か、その判断は当の本人である花子さんに委ねられるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る