第11話 エピローグ

 リア・シャノンの勢力はこの10年で順調に拡大していた。

 シャノン家のグラディウスアクイラの紋章は今や汎銀河帝国パン・ラクティウス・オルビス・インペリウムの6割を制圧していた。


 帝国の秘宝ゲムマもすでに8割を手中におさめた。

 太陽系学園からスタートした大戦争は全銀河を巻き込んだ戦争へと発展した。


「ただいまーユピテル家の領土は全て制圧したわよ」

 事もなげに言うのはリア・シャノンだ。

 彼女は現在27歳。

 赤毛に、若々しさよりも瑞々しさが顕著になり、しなやかで筋肉質の要望はむしろ美しさが増している、とサトルは思った。


 あの時、サトルはリアではなく枢機卿を撃った。

 銀河の大騒擾よりもリアをとったのだ。


 そして彼女の宣言通り、サトルは適合者として彼女の婚約者となった。

 いまリア・シャノンは皇帝位を継ごうとしている。

 すでに皇帝インペラトールマグヌム7世に付き従うのは、適合者の素養が比較的強くリアの声に制圧されにくいディアナ家とケレス家とその軍勢のみ。


 それももう掃討戦という様相だ。


「お帰り」

 サトルはにっこりと笑ってリアを出迎えた。

 いまサトルはシャノン家の家宰となり全てを取り仕切っていた。

 そしてリアは常に戦陣に立つ。戦闘になれば彼女は声の力で相手を制圧する。


 もちろん通信ではなく直接のほうが効果は高いが、単なる通信でも一定の効果があった。


 帝国軍は敗走につぐ敗走を重ねた。

 リアは容赦なく降伏した貴族たちを断罪した。

 

 しかしそれはサトルには関係のないことだ。

 ここには彼女がいるのだから。それが何よりも重要だ。


 彼女と彼女に宿るもう1人。

 適合者と声の力を持つものの遺伝子が融合すると、かなりオリジナルの初代皇帝インペラトールに近い力の持つものが生まれるという。

 その人物はこの銀河全てを継ぐ者になる。

 

 汎銀河帝国パン・ラクティウス・オルビス・インペリウムシャノン王朝。

 後世そう呼ばれるだろう。


 あの惑星エリスの戦闘に参加した者たちは今やシャノン家の親衛隊として戦場の中核を占めている。エリカ・コーカ機動歩兵中将は今や銀河中で恐れられる存在だ。

 

 幸い一命をとりとめたダン・リコはシャノン家の戦闘航空団の団長をつとめていた。そして名だたる将軍たちが次々にシャノン家の軍門に降っていた。掃討戦が終わればリアは皇帝となる。初代皇帝以来、史上最強の皇帝として。


 銀河の歴史はまだ始まったばかりだった。


 

 

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太陽系学園の叛乱―赤毛の"カリスマ"貴族令嬢が婚約者!? Edu @Edoo

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