第35話
ベートによるウィンの拷問は日が沈むまで続いた。
そして今ちょうどその拷問が終わったところだ。
「さて……これからどうするよ……。しばらくは飯とか寝る場所には困らないけど、それも街に帰るまでだぞ。ったく、何してくれてんだよ」
「すまん……俺がもっと気をつけてれば」
——こいつ、人のせいにはしないんだよな。
てっきり、リオさんがウィンに預けたせいだ、とかいうようなことを言うかと思っていたのだが。
もしかするとそんなことを言ってベートにこっぴどくやられたことが前にあるのかもしれない。
「とりあえず、街に戻ったらクエストを受けるしかないだろうな……」
「あ、一つ考えが」
「どうした、ベート」
「こいつの内臓をう——」
「分かった、それ以上言わなくていい」
しかし、本当にベートはウィンに対してだけ口が悪い。他のウェポンドールはどうなのだろうか。
例えばアルトとか——
「ああっ!」
「ど、どうしたんですか、コーヤさん?」
いきなり叫んだ俺を心配してかリオさんが声をかけてきた。
「アルト、アルトはどこだ!」
「え? あ、ああっ!」
遅れてリオさんたちも気づいたようだ。
そう、アルトがいない。
「いつからいないか分かりませんか?」
「そういえばコーヤさんが連れて行かれた時にはいなかったような……」
「ということはアルトはその時いなくなってたのか」
それにしても随分急だ。しかもよりにもよって俺が捕まった日とは。
「ギルドの人たちに連れて行かれたんじゃないのか?」
「それだと俺が帰ってきてるのに一緒に帰ってこないのはおかしいだろ」
アルトが戻ってこないとどうなってしまうのだろうか。そもそもアルトはギルドから借りてるウェポンドールだ。失くしたとなるとギルドに罰でも与えられてしまうのだろうか。
——おかしい。
何もかも一度に起こりすぎじゃないか?
いなくなったロマとアルト。
謎の空間を作り出す転入生、
何かとんでもないことでも起こるのか……?
結局この日は特にすることもなく眠りについた。
**********
「よう、音野。あの後本当に転入生に会いに行ったのか?」
「う、うん……一応」
「……その様子だと睦月がまた何かしたのか」
「……ご名答」
やはり。まあ予想は出来たことだが。
「そういう交也は転入生見たの?」
「ん、ああ、一人だけだがな。同級生の女子だったよ」
「へえ、僕たちが会ったのは同級生で男だったよ。他にはいないようだし今月は2人みたいだね」
「意外だな。いつもは1人受かるかどうかもわからないのに2人もか」
アムストラ学院の転入試験は全国でも難しい部類だ。これはこの学校のシステムが基本自習制のため、自分よりも上のレベルの勉強をしているか、すなわち自習ができるかどうかを見ているらしい。
「まあ転入生が何人にしろ、1つ除いて心配は無いからな」
「そうだね、その1つ以外は」
その1つ、というのは——
「「
ハモった、そのことに気づいて俺たちは思わず笑ってしまった。
——だが、この時俺は知らなかった。いや、知ろうとしなかった、興味が無かった。
本当は転入生は1人も来ていなかったことに。
**********
どこまでも続く、白い空間があった。
「奴には接触出来たのか」
どこらから声が響く。
「……いえ、未だ出来ていませン」
別の声が響いた。
「言い訳、というわけではないのですが、別の『存在』が接触したとの情報ガ」
「ふむ……別の『存在』か。邪魔なことをしてくれる」
謎の声の会話は続く。
「今すぐにでも接触してみせまス」
「期待しているぞ」
「ええ。必ずや奴を始末しまス。そしてその
会話はこの声で終わった。
「——二世交也の首を捧げまス」
《更新停止中》平行世界の交差点〜The world crossing〜 葦 @redzone-x
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