ラブコメ？いや、ラブパニックコメディだな。

所謂男の娘という其れは、ある種の男にとってはドリームであり、またある種の女にとっては妬むべきものなのかもしれないのだが、このお話はそんな雑念を吹き飛ばすテンポで進んでいく。
おおよそ考える間もなく、唐突に吹き荒れた風に流されてしまうような感覚で読んでいると、あれ？今どうなってんだっけ？という物語を読む者にとってあるまじき状態に陥るのだが問題はない。主人公も同じ状態だからだ。

読み手は主人公と同じようにテンパり、主人公と同じように焦り、主人公と同じように悩む。
そもそもマトモな奴が主人公しかいない（男の娘をマトモと称するかは些かぎもんではあるが）のだから、共感を得てしまうのは主人公以外に他ならないのだ。

そしてそのテンパり具合がどうにも心地よく、行き当たりばったりな釈明も矛盾が矛盾を呼ぶ主人公の言い分も、この物語では正常なんだと思わせられる。

こんな感情抱かせたこの話に感謝しつつ、今しばらくはこの感覚に浸っていようと思う。