読了しました。第三次世界大戦ifの、比較的硬派な作品として楽しませていただいたと感じています。
物語は3世代に及ぶサーガでありながら、まるで海外ドラマ「24」を彷彿とさせるテンポの良い構成。しかしながらこれも海外ドラマ「SUITS」かのように会話の応酬で物語は進行する(海外ドラマで喩えるのはとんちんかんかもしれませんが)。
句点を用いない文体は自の分を短くまとめ、必要最低限の風景描写のみを読者に与え、補完させる。また登場人物たちもそれぞれ個性的でありながら、彼らの経歴に深く触れる描写は少なく、読み手の想像力に委ねられている。
これらの特徴は一見淡泊な印象を持つが、逆に前半の主人公である松本から、後半の主人公である花彩につながるストーリーを特に強調する役割を果たしているものと思う。
キャラクターにはそれぞれある程度政治的意思を感じるものの、作者の意図として戦争を政治的にどう捉えているのかは私には読み解けなかった。わかったのは、いかに戦争が痛ましく悲惨であるかという以上に、どうしようもなく愚かで不毛でな行為なのだというメッセージだ。
作中の次世代の登場人物たちはとても強く、理性的に描かれている。彼らが旧世代の諸悪と対峙したのちに手にするのは、遂に訪れる恒久的世界平和であればいいなぁ、と思いました。