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急遽決まった変更に対応するため、
ただひたすらに劇の稽古に励む僕たちであったが、
体は正直というか、何というか、時が経つのを忘れつつあった
僕たちに昼の訪れをきちんと知らせてくれた。
昼食のため休憩を取ることにし、
さて、どうするか、と皆がそれぞれ相談していると
大きく積み重なった重箱を取り出してきた。
こういう所は本当に気が効くなぁ、。
感心というよりむしろ、若干引いていた。
達抖「あぁ。1つ1つ丹精込めて作ったよ。」
雛「私、ちょっと出かけてくるね。!」
達抖「まぁ、そう遠慮すんなって。!」
食い違った会話をしている2人を尻目に、
僕たちは、有り難く、料理を小皿に分けて、
ご飯をいただくことにした。
風「最後の場面のセリフは決まった?」
最初は、どうなるものかと思っていた稽古だけれど、
凛音姉や他のみんなの適応力は、尋常ではなく、
進行具合は、すでに中盤を終え、残すところ
あとわずかとなっていた。
凛音「うん。どうなるかは、富谷君次第だけど。」
風「へー。」
要求に応え切れるのか、不安が募るばかりだけれど、
ここまできたら、思い切ってやることにしよう。
さて、このまま、鶏君の料理を賞賛するのも癪なので、
代わりと言っては何だが、劇のあらすじを、ネタバレを
含まない程度に紹介することにしよう。
(今更感が凄いなぁ。)
まず、出演者は 松前
そして、僕と凛音姉、の三年生2人、二年生4人の合計6人。!
(もう、名前を呼ぶ気はないんだね。)
劇中では、これが増えたり減ったりするわけだ。
(減りはするけど、増えはしないよー。)
最初は僕を除いた5人が、地方の島の洞窟にやってくるところから、
物語は始まる。
彼らの目的は、洞窟の奥底にある祠、そこへお願いをしに行くことだ。
なぜ、わざわざ、近場に行かず、
そんなところへ行ったのか、
というと
、ここでお願いをすることで、その願いが叶った、
そういった話が少なからず、最近になって出てき始めたからだ。
特に、 深刻かつ 具体的な願いは、叶えられる率が高いとの噂だ。
その噂を耳にした、雛演じる少女は、
彼女の唯一の肉親、現在、余命宣告を受けている、母親を
助けてもらうために、神頼みだとしても、少しでも可能性が
あるのなら、そんな切なる願望を胸に抱き、この地に赴いてきたのだ。
3年生2人、それと鶏君は、彼女の先輩、及びクラスメートであり、
不安定な状態に陥っている恐れがある彼女を心配し、
付き添いとして訪れている。
鶏君が本当に彼女の心配をしてきてくれたのかどうかは、
見るものに判断が委ねられるところだ。
この4人に、凛音姉をクラスメートとして加え、友人として
少女を支える、という案も出たが、
それよりも、4人との立ち位置の違いが際立つことを重視し
たためか、凛音姉は、その島の住人、及び4人の案内役を
務める同年代の娘役を選択した。
その洞窟、それに祠はその娘が幼少の頃から身近にあるもので、
よって、願い事の成否の噂も、話半分にしか思っておらず、
少女に対し、根拠のない希望に縋るより、
1秒でも長く残された時間を過ごしたほうがいいのではないか?
そんな考えを抱いている。
そうして4人に凛音姉を加えた5人が、洞窟を進んでいくと、
娘の記憶と異なる洞窟、本来のとは異なる所に彼らは迷い込むことになり、無事に元の祠にたどり着けるのか、願いは叶うのか
それがこの話の焦点となってくる。
動機も、舞台も、シリアス性を十分に帯びているのだが、
1人、異端児がいるため、彼の悪目立ちを
凛音姉が、どれだけ上回れるか、
これが、最後の場面次第で決まってしまう、
あかりんの求めるものができるかどうかは、
僕と凛音姉にかかっているというわけだ、。
よしっがんばろっ。
これ以上の語りは
興を削ぐ恐れがあるため、
残りは、すべて本番にとっておくことにしよう。
(風ちゃんが演る役の説明をしてないよ。!)
願いを叶えるかもしれないし、叶えないかもしれない、
そんないい加減で、よくわからない、世界の歯車の一部、
以上!
(ざっくりだなぁ。)
そんなこんなで、昼ごはんを食べ終え、練習に戻った僕達は、
日が沈みかけの夕暮れに至るまで、劇の完成を追究し、
無事に明日を迎えていくのだった。
かえり道 @yumenogenjitsu
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