かえり道

@yumenogenjitsu

春 の めぐり

+2

子供たち「今回は、いつの話なの?」


凛音「春休みの最後の日、かな。」


風「あれは、 疲れる1日だったなぁ。」


凛音「 、。でも、私は楽しかったよ。、」


風「。、、、、。」





凛音「、、、始めよ?」


風「、そうだね、 。 、」



凛音「、、。それでは、 第2話、始まります。」


子供たち「始まるよー。」





時が経つのは何とやら、春休みも、残すところあとわずか。


過ぎ行く時の儚さを感じつつ、僕は、朝食をとっていた。


(食べる時ぐらいは気楽にしたりできないのかなぁ。)


凛音「富谷とみや君、今日も学校行くの?」


風「うん、まぁ。。。」




紅莉あかり「私と一緒に明日あしたの劇の練習だよ。」


凛音「富谷君も?」


凛音姉は、少し驚いた様子を見せた。


まあ、頼まれたからやっているという、流動的理由なため、

彼女のぼくに対する認識も間違いとは言えないだろう。



凛音「役者として?」


紅莉あかり「そだよー。」


凛音「、、想像がつかないんですけど、、、。」


紅莉「これを素で出した感じ。」


あかりん が僕を指差して説明すると、

凛音姉が抱いていた疑問も、見事に晴れたようだった。


彼女の頭の中では、どんな舞台が演出されているのだろうか?


(ご想像にお任せします。)


凛音「、。。なかなか面白そうですね。」


凛音姉の発言が、劇に対するものなのか、僕に対してのものなのかは

不明だが、多少の興味は持ってくれているみたいだ。


あかりん も、そのためか、嬉しそうに微笑んだが、

すぐに思案顔へと変化した。




紅莉「あとは、ラストがなぁ。」


凛音「納得いかないんですか?」



紅莉「若干、コメディー要素が強すぎる、、かな。」


あかりん は、そのまま思考にふけり、視線を空中へと彷徨わせた。



凛音「富谷君は、どう思う?」


風「、、、、、、。んっ?」


凛音「話、聞いてた?」


もちろん、







聞いていなかった。




(。。。。。)





凛音「劇のラストについてなんだけど、。」


聞いていないと判断したのか、

凛音姉は、注釈を添えてくれた。


風「まぁ、幕切れとしては、いいと思うよ。」


凛音「紅莉さんは、納得してないみたいですけど。」


風「笑いは『笑い』でも、見てる人が笑顔になる終わり方がしたいってことなんじゃない?」


ややぼかして言ったつもりなのだが、

凛音姉の表情から察するに、そこに

込めた意味を汲み取ったらしく、口元が僅かに綻んでいた。





そんな、のんびりとした談笑の中、



紅莉「よしっ 決めた。!!」


思考の旅から帰還した あかりん が、

一室に響き渡る声音を発した。


他のテーブルで食事をしていた数人の寮生が、

特に驚くこともなく、ちらりと、こちらを確認したのち

再び食事へと戻っていく。


彼らにとっては毎度お馴染みの見慣れた姿となっていた。

新入生がいれば、驚く者もいたであろうが、

今日現在、一階に降りてきているものはいなかった


(朝ご飯は、7時から8時の間だとナナちゃんが作ってくれますが、

それ以外は、各自、自室のキッチンか、この部屋のを使うかで、自炊となります。)


紅莉「全部作り直そう!」


風「公演は明日なんだけど?」


紅莉「よーし、忙しくなってきたぞ〜〜。」


テンション高いなぁ、、。


風「間に合わなかったらどうすんの?」


紅莉「加速する!!」


だめだ、何を言ってるか、全く理解できない。


それでも、何とか説得を試まねば、。



まだ冴えきらない脳に活動を促していると、

凛音姉が、仲介案を出してくれた。


凛音「話を作り直すのじゃなく、登場人物を増やすのはどうですか?

謎の旅人とか? 」


例として挙げるものに、他に良いものはなかったのだろうか。?



(分かりやすいのを選んだの。)



紅莉「ふむ、。、、、、



じゃぁ、その役をふうにやってもらうとして、」


風「ちょっと待って、。」


紅莉「んっ?あぁ、。違った、謎な奴かな、。」


本格的によくわかんない奴になっちゃた。

、いや、今それはどうでもいい。



風「それだと、普通に出番が、かぶるよ。」


合成でも使わない限り、人としては不可能だ。


紅莉「本気出せばできるでしょ?。頑張って。」


強引すぎる!!


風「普通に、他の人にやってもらおうよ。」


紅莉「でも、あと1日しかないんだから元の話が全部頭に入っている

人じゃないと難しいと思うけど。」


どうして あかりんは、 こういう時だけ、まとも なことを

言うんだろう??



風「生徒会長に頼んだらやってくれないかな。?」


あの人はあらゆる能力に長けてるので、

初見でもなんとかしてくれるだろう。



紅莉「今日は、仲良く、デートみたいだよ。本人は

『ただ、一緒に出かけるだけ』って言ってたけど。」


うらやましい限りだ。、僕も部屋でお菓子とジュースを食べながら

ドラマを一挙見したいなぁ。


(風ちゃんは、休みがない方が健康的でいられると思うなぁ。)


風「他に、喋るのが得意で、今日暇な人っていないのかな。?」




紅莉「風のおかしな問いかけにも切り返せるぐらいとなると

なかなかいないと思うけどなぁ。」


あかりん よりはマシだと思う。


凛音「それって、例えば、どんなのですか?」


紅莉「『間違えていなければ、正解なのか?』とか、。」


凛音「ひねた質問ですね。。」


紅莉「でしょ?。凛音ちゃんも気をつけないと、危ないよ。?」


僕は一体、何なんだよ?。


凛音「今のところは大丈夫そうです。」


僕は石になろう、。


そんな決意を固めていると、

あかりん が、唐突に提案を差し出した。


紅莉「凛音ちゃん、今日、空いてる?」


さすがのぼくでも、あかりん が、凛音姉を劇に誘おうとしている

事は読み取れた。


凛音「空いて ますよ。」


紅莉「その、凛音ちゃんが良ければなんだけど、劇に出ない?」


凛音姉は、あかりん の瞳を見つめながら、逡巡しているようだった。


よし、石の船で助けに行こう。


(危なそうだなぁー。)


風「気を使う必要はないよ、嫌なら嫌と言うべきだ、」



凛音「ねぇ、富谷君、わざとじゃないんだよね?」


風「わざとって?」


凛音姉は、呆れつつも苦笑していた。


なぜ??


(風ちゃんは、それでいいと思うよ。社会的にはダメだけど。)


凛音「いいですよ!けど、役は自分で決めます。」


紅莉「うん。わかった。」



あれあれ、?


気が向いていないように思えたけど、違ったの、かな。


紅莉「それじゃ、早速、学校へ行こう!」


凛音「少し待っててください。支度整えてきますので。」


朝食をすでに食べ終えていた彼女たちは、

次なる行動へとあくる間もなく、移っていく。


風「僕も後からいくから。」


凛音「何を言っているんですか?」


口調が厳しく感じられるのは気のせいだろうか?


風「いや、集合時間は9時だし、

僕は、少し部屋でくつろいでから行くことにするよ。」


凛音「そんな時間はありません。」


気のせいじゃないな。明らかに、厳しめな性格になってるよ。


どうやら、やるとなったら、何事もとことんやるといった性分らしい。


風「じゃ、すぐに食べ終えて、準備するよ。」


凛音「食べるのは別にゆっくりでかまわないけど?」


それなら、追加で、何か作ろっと。


(風ちゃんは人を怒らせたいのかな、。)


凛音「それじゃ、」


凛音姉は、身支度及び身だしなみを整えるため部屋へと戻っていった。










それからしばらくすると、外着の服装をした凛音姉が、

一階に戻ってきた。


そして、僕たちの方はというと、凛音姉の意見に従い

引き続き、朝食をとっていた。



紅莉「凛音ちゃんも食べる?」


もぐもぐと口に運びつつ、あかりん は

自分の焼いたパンケーキを凛音姉に勧めた。


凛音「いえ、遠慮しときます。」


凛音姉は、呆れ半分、戸惑い半分といった様子で、

僕たちが食べ終わるのをそのまま傍観していた。


凛音姉としては、明日に迫った劇の準備に少しでも早く

取り掛かりたく、焦る気持ちもあるのだろう。


全く、あかりん には困ったものだ。


少しは緊張感を持ってもらいたい。


(風ちゃんもやってることはおんなじだからね、。)




凛音姉の静観の下、春休み最後の朝食を終えた僕たちは、

まだ日も明けきらぬ早朝に、学校へと向かうことにした。



凛音「私服で学校に行くのは、なんだか落ち着かないです。」


葵葉高校には、学校制定の制服は存在しない。

代わりに学生証のカードの所持を原則としており、

忘れてきたものは、学校前の改札を通れず

、朝から痛い目にあうという寸法だ。


うん、ギリギリに学校に行くのは良くないな。!




風「まぁ、すぐに慣れるよ。」


凛音「でも、どの服を着ていくのか迷ったりして、

大変じゃないですか?」


紅莉「その質問は、無駄だと思うよ。?

だって、毎日、ほとんど同じような服を着てるし、。」



自分の着たいものを着る、それが服というものなのだ、と

僕は思うのだけど、これに関して、他人と議論するつもりはない。



なので、僕は二人の話を聞き流しながら、

凛音姉が、どういう形で、物語に加わるのが好ましいのかを

学校に行くまでの間、考えておく事にした。





あれこれと考えつつも、毎日の習慣のせいか、足と手は勝手に動き、

意識を視界に向けた時にはすでに、

学校内の文化施設へと到着していた。


(演奏会などはここで行われています。

普段は、演劇と音楽関連を専攻している

生徒によって使われています)





開いてないかなぁ、と 駄目元で扉を押してみると、

願いが通じたのか、扉は力に従い、後ろへと引いた。


紅莉「開いてた?」


風「うん。」


紅莉「みんな、先に来てるのかな?」



僕たちは施設の中に入ったのち、コンサートホール入り口の扉を

おそるおそる引いた。


すると、開いた隙間から2つの声が漏れ出てきた


達抖たつと「妖精さん、妖精さん、出会いは、どこにありますか?」


ひな「ごめんなさい。それは売り切れてしまったわ。」


そうか、中には妖精さんがいるのか、。

仕方ない、出直してまた来よう。


紅莉「ひなの声だ。!」


なんだ、妖精じゃないのか。

期待して損したよ。

帰れると思ったのになぁ。


(仮に妖精が出たとしても、紅莉さんなら、

一緒にやりそうだけれどね。)


確認が取れたため、ホールの中に入ると、

舞台上の2人の他に、観客席に、十数人の人影が見えた。


紅莉「みんな、おはよー。」


「「「 おはよー 」」」


「「「おはようございます」」」


あかりん が 部員の人達と朝の挨拶を終えると、

彼らの方から、1つの疑問が挙げられた。


「その子は?新入生?」


僕がそう言われたら、一睨みして暗に苦言を呈する所だけれど、

みたところ、特に気にしてはいないようだった。


(中学生?と言われていたなら、話は違いますけどね。)


違いがよくわからないけど、まぁ、いいや。



紅莉あかり「皆月 凛音ちゃん。2年からの編入生!風と同室だよ!」



その情報を聞いた鶏君は、熱を上げて苦論を呈してきた。


(あだ名の由来は今後わかると思います。)


達抖たつと「神様は不平等すぎるよ。!僕にだって少しぐらい

良い思いをさせてくれたっていいじゃないか。」


彼は何を言っているのだろう?


(私から言えることは何もありません)


ひな「普段の行いの差じゃないの? 、」


達抖たつと「そっか、じゃ明日から、寡黙でミステリアスな雰囲気

を漂わせてみるよ。」


ひな「無駄な努力をするくらいなら、

素直に諦めたほうがいいんじゃない?」


達抖たつと「僕は最後まで諦めない!」


ひな「しつこい男は嫌われるわよ?」


2人の話はまだまだ続きそうだったので、放っておくことにし、

僕たちは、劇の変更点について話し合うことにした








僕の方から、凛音姉の出した提案、及び道中で浮かんだ、凛音姉の配役

について話し終えると、予想通りの、僕の期待を裏切る嬉々とした反応

を演劇部のみんなは、浮かべていた。


誰か、止めてくれる人を欲していたのだけれど、

残念ながら、この場には1人もいないらしい。


「うん、それ、面白いよ、。、けど大丈夫?それだと、

皆月さんは自分のセリフを全部即興で考えないといけないけど。」



凛音「はい、大丈夫です。それよりも、、」


口ごもった理由を理解してか、あかりんは、

凛音姉の代弁をする形で、言い合いを続ける2人に、

質問を投げかけた。



紅莉「ひな達抖たつと、多少のアドリブ

ぐらいわけないわよね?」


雛「あたり前。」


達抖たつと「まぁね。」


何の躊躇も無く、

2人は平然と答えを示してみせた。



紅莉「後の2人も、心配いらないと思うよ」


確かに、、、、


アドリブの10や20、

あかりんの普段からの無茶振りに比べれば、

容易いに違いない




紅莉「それじゃ、時間も惜しいし、始めよっか。

肝心の残り2名が来ていないけど。」


と、そこで


その言葉に喚起される形で、



正面の扉が、開き、、



みなさん、お待ちかねの、ご両人が遅ればせながらやって来た


皆の視線が注がれて、

2人は少し戸惑った様子を見せていた。


光夜こうや「あれっ、もうみんな来てたのか?」


美優みゆ「おはよー、みんな早いね!」




「「「「 遅い!!!! 」 」 」


あからさまに、理不尽な文句に対し、反論を押し込め

ただ心の中で、


『みんなが、早すぎるんだよ!』


と苦言を浮かべるしかない




2人であった。



(2話 おしまいです。)



凛音「引き続き、3話をお楽しみください。」
































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