献辞

 父と母に。

 そして健やかなるときも病めるときも傍らで僕を支え続けてくれた妻と、健やかなるときも病めるときも傍らで泣きわめき続けていた1歳半の娘、葵にこの小説を捧ぐ。

 また、幼い僕に本を惜しみなく買い与えてくれた祖父母と、幼い僕に本の面白さを教えてくれた英雄たちに――かいけつゾロリ、かいぞくポケット、ズッコケ三人組、エヌ氏各位、明智小五郎に――この小説を捧げたい。

 僕の拙い小説に一片の価値を見出し、こうして文芸誌に掲載する機会を与えてくれた民芸書房には感謝して止まない。特に、思いやり溢れる罵詈雑言にて僕を叱咤激励してくれた編集長と、公的には優れた編集者であり私的には僕の最低な親友である松良井氏に。

 床にこぼした生米のように僕の小説中に散らばる誤字脱字を逐一修正してくれた校正の皆様の協力のおかげで、この小説は曲がりなりにも一つの読み物として完成した。この場をお借りして感謝の意を表明する。

 再び父と母に。

 良く指摘される通り、僕の作風はダニエル・キイス氏に多大な影響を受けている。多感な時期の僕に大きな爪痕を残していったチャーリィとアルジャーノンには感謝と恨み言を述べたい。

 本小説内に登場するエピックである「フーリエ解析を用いたゴリラのドラミングにおける周波数特性とゴリラの有する情緒との相関の統計的分析」については、東都大学の山際教授に取材のご協力をいただいた。厚く御礼申し上げる。彼のような優秀な研究者がいれば、ゴリラと会話できる日もそう遠くはないだろう。

 登場人物のモデルとして、以下の二名にインタビューをさせていただいた。感謝の言葉と、簡単なメッセージを彼らに送りたい。実家に住んでいるヨシオお兄ちゃん。ドア越しのあなたの言葉はとても身に染みました。大丈夫、誰もあなたを貶めようとなんかしてません、だからそろそろ部屋から出てきてください。頑張って。そして橋の下の段ボールハウスに暮らしているゲンさん。あなたに投げつけられた空き瓶のことは一生忘れません。

 執筆手段としてはASUS社製のTransbook T100TA ルージュレッドを使用した。優れたデバイスであるこのモバイルPCがなければこうして小説を書き上げることも叶わなかったろう。ASUS者の優秀な技術者たちに感謝する。あと次モデルでは本体のCドライブ容量をもう少し増やして下さい。

 最高のリラックス手段を供給してくれた、ネスプレッソ「イニッシア」に。

 おい葵、そろそろ泣き止まないと小説捧ぐの止めちゃうぞ。

 三度父と母に。

 作業用BGMとしてはI am robot and proud氏の曲を愛用した。ファンです。これからも頑張ってください。

 本小説は旧約聖書の「バベルの塔」を大いに下書きとしている。というのも、この小説を書くきっかけとなったのがそもそも、僕の夢に主がお出でになり、かような幻視を授けられたことによる。それは世界中に濫立した、天まで届かんばかりの塔が、一斉に崩壊する光景だった。僕はこれを警鐘であると捉えた。僕は主の警鐘を世間に伝える予言者として選ばれたのだ。おお、主よ、偉大なる主よ、かくも枢要なる役目として矮小なわが身を選定してくださったこと、まこと光栄の至り、私は誓います、必ずや主の仰せられた警鐘を無知蒙昧なる世間一般の人々に伝え


(紙面の都合上、以降の献辞と本編は割愛いたします)

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