ウォーターサーバーアラウンドザワールド
六日目に人を作り、それを眺めて良しとしてから神は長らく安息を取られていたのだが、ふとひさしぶりに下界を眺めてみると愚かな人間どもが盛んに奪いあい罵りあい削りあいせめぎあいしているので、神は大変驚かれた。
争いをなくすためにはどうすればよいのであろうか。神はお考えになり、人々に足りていないものは何なのか調査すべきと結論付けた。そこまでは良かったのだが、テストサンプルとして砂漠で遭難している人を選んでしまったのが悪かった。
「人の子よ、あなたは何を求めるか」
「み、水……」
そういうわけで、次の日には世界中にウォーターサーバーが出現したのだった。人々は驚いたが、すぐにこれを便利に使いだした。なにせ神の力を宿すウォーターサーバーである。どこからともなく無尽蔵に水が出てきて、季節を問わずよく冷えている。おまけに軟水か硬水かまで選択できる。
飲み物代節約のために人々はじゃんじゃんウォーターサーバーから給水を行ったが、暫くしてから異変に気づく。どこからともなく無尽蔵に水が出てくるということは、世界の水の絶対量が増えているということだ。海面の水位が上がり、いくつもの島が沈没した。
そこで神がアフターサービスにお見えになる。
「人の子よ、あなたは何を求めるか」
「水をどうにかしてください」
そういうわけで、次の日にはウォーターサーバーは忽然と姿を消し、代わりに吸水性の良いスポンジが転がっていた。しかしなにせ神の力を宿す吸水性の良いスポンジである。水どころかあらゆるものを吸い始めた。建物、動植物、大気、人間、地面。あっという間にその星は吸いつくされて跡形もなく消滅し、吸水性の良いスポンジだけが宇宙に残され、散り散りになった。
それからどうなったか。
ある一つの吸水性の良いスポンジは太陽の周りをぐるぐる回り、スポンジに吸われた人々はその中で暮らし続けているのだ。自分たちの住むスポンジに「地球」とかいう名前をつけて。
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