酒場『踊る小豚亭』で働くピアノ弾きの少女フィラ・ラピズラリには、困った能力があった。自分の意思に関係なく、突然、瞬間移動してしまうのだ。さらに、彼女には、二年前に街にたどり着く以前の記憶が、全くなかった。
ある日、フィラは、お店の常連である左官屋バルトロの忘れたノートを届けに、彼の工房へ向かった。またしても瞬間移動した彼女は、偶然、バルトロが記憶を消される場面に遭遇してしまう。バルトロの目標がある禁忌に触れていたため彼の記憶を消した青年は、フィラの記憶も消そうと迫る。聖騎士団の団服を着た青年ジュリアン・レイは、新しい領主でもあった。
空を飛ぶことを禁じられた世界で、真実の空を取り戻そうとする青年と、少女の物語ーー。
聖騎士、光の巫女、魔女や魔力といったファンタジーの存在と、自動車や飛行機などの機械が混在する世界です。その理由は、読み進めるにつれ明らかになります。
主人公フィラが健気で可愛らしく、最初彼女を脅かすジュリアンは怖い存在ですが、彼の内面の葛藤が解るようになると、そこが魅力になっていきます。少しずつ惹かれ合う二人の気持ちを、見守りたくなります。
重い宿命を負ったジュリアンが、フィラとともに生きられる世界を目指して闘う姿に圧倒されました。
最後に彼らの上にひろがる青空と感動を、是非読者の方も体感して下さい。
のっけから「自動車」「タバコ」と「光神」「騎士」「城」という異なったイメージの語彙で、「これは、どういう世界なんだろう」という想像力を刺激されます。
その世界で動きだす主人公は、陽気な酒場『踊る小豚亭』でピアノを弾く少女フィラ・ラピズラリ。対するは美貌の青年領主にして聖騎士、ジュリアン・レイ。
フィラの過去の謎、世界の謎、それらが少しずつ読者に明かされるに従い、フィラとジュリアンの関係も変化してゆきます。
フィラとジュリアンはもちろん、周囲の人物たちもそれぞれ魅力的。今のところ、ダスト・アズラエル嬢がとても気になっております(第三話File-6まで読んだ感想)