第8話 覚醒?
刃物のように鋭い双眸。
目だけでも先程とは全くの別人に見える。
全身からは煙のような黄色い光が浮き出ていた。
「なんだお前」
テスカが不思議そうにこちらに視線を注ぐ
武流は無言で応える。スクールバッグを放り投げ、視線を地面に落とし、アリラの剣――
そのままアリラをそっと地面に寝かせた
瞬間。
「なっ!!!」
武流がテスカに斬りかかった。
それを紙一重で体を逸らして避けた
見えなかった。距離はあったはずだ。一瞬の内にゼロ距離まで詰められた。
動体視力が追い付いていなければ危うく死ぬところだった
「お前……まさか!」
テスカの言葉を無視して左手だけで雷皇を振り回す。
ありえない。右腕でアリラを担ぎ上げたままだというのにこの速さである。
テスカはそれらをギリギリのところで避ける
「あんま調子乗んな!!」
憤怒に満ちた声を上げる。
そして一瞬の隙をみて、武流の横腹に蹴りを入れた。
武流が少し体勢を崩す
このチャンスを見逃すことなく、顔面めがけて一撃を放った。
武流は、何とか不安定ながらも体勢を戻して雷皇の剣身でそれを受け止める。
「まだまだまだまだ!!!!!!!!!」
痛打の猛撃を武流めがけて放つ。
雷皇でガードしているものの、瞬きさえ許されないほどの速さの猛打撃である、それを片手だけで握られた雷皇で受け止めているのだ、腕にはかなりの負担がかかる
「どぉした!!どぉした!!」
テスカは笑みを浮かべ、更に力を込めて拳を振るう。
体が後方に押される。靴の裏が地面に擦れて削れていく。
一瞬、攻撃が止む。
だが、すぐだった。テスカが体勢を低くして雷皇の下に潜るようにして武流の腹に一撃を放つ。
内臓が抉られ、口からは胃液混じりの血を吐き出す。
後方に二、三歩、弱々しくさがる。アリラを落としてしまいそうになるが何とか耐える。
「ふ~ん。まだ立ってられんのかよ」
テスカが少し意外そうに笑う。
武流はそれを無視して地面に血を「ペッ」と吐き出す。
そして雷皇をくるりと回してテスカを睨み付ける
「おもしれぇ」
テスカは唇の端を上げて楽しげに笑った。
同時に二人が消える。
両者が立っていた地面には砂ぼこりが舞う。
武流は雷皇を振り下ろし、テスカはそれを拳で受け止める。火花が散って辺りを照らす。激しいぶつかり合い。
常人の動体視力ではとても追い付くことは出来ない速さでの攻防を繰り広げる。
そしてテスカが渾身の一撃を武流の顔面に放つ。
だが、空気を裂いただけだった。
「は…」
テスカは目を見開いて生唾を呑み込んだ。後方にとんでもない殺気を感じる
武流がテスカの背後をとったのだ。
そして雷皇を振り下ろす
「くっそ!――テスカトリポカ!!!」
テスカが奥歯を噛み締め、悔しそうに叫んだ。
同時、黒い煙のようなものがテスカの周りにうまれ、渦を巻きながら体を包んで見えなくしてしまう。
雷皇がその黒い渦に触れて火花を散した。金属の削れる音が空気を震わす。
「無駄ッ!」
黒い渦が炸裂し、武流の体を吹き飛ばした。
武流は両足で体を支え、何とか体勢を立て戻す。
アリラを落とさないように右手に力を込めた。
「クソがッ!!覚えとけよ!お前なんかが俺に勝てるわけねぇってな!」
ゆっくりと黒い渦が晴れていき、右手に漆黒の長い槍――テスカトリポカを握りしめた鬼が姿を現す。
「こんなとこで力を使わせやがって!」
言ってテスカトリポカを一振りした。瞬間、刃先から真っ黒な光の刃が生み出され、武流めがけて放たれた。
武流は雷皇をそれに向かって振り下ろした。
火花が散ったのと合わせて黒い光の刃が爆ぜる。その威力に圧倒されて雷皇が左手から離され、後方に回転しながら飛んでいき、地面に突き刺さる。
「消えろッ!」
叫びを上げて走り出す。テスカトリポカを両手で握りしめて突っ込んできた。
が、武流は避けようともせず、テスカトリポカの刃を握りしめて動きを殺す
血が滲み出てきても、まるで痛みを感じてないように更に刃を握りしめる
「何!?」
目を見開いてテスカが驚愕する。
全くびくともしない。そして、
「!!」
武流が刃を握りつぶした。
テスカトリポカの刃が粉々に破片となって散らばった
「嘘だ…ろ!?」
テスカは地を蹴って後方へと避難する。
信じられないといった表情で自分の右手に握られている槍の刃がボロボロになっていることを確認する。
「クソがぁぁぁあ!!!!!!!!!!」
テスカは地を蹴って宙に浮いた。そして空気を蹴って宙を跳ねていく
「次、会ったときは絶てぇ殺す!!」
武流を見下ろして叫んだ。そう言いのこすし、黒い渦がテスカを包んで空気となり消えていってしまった。
英雄が魔法使いはじめました @maousan927
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。英雄が魔法使いはじめましたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます