第7話 朝からゲリライベント来すぎ。運営のミスか?

長身で形のはっきりとした筋肉の筋。

短い刺々した薄い金髪に鋭い目付き。

真っ黒で軍服のようなデザインの服に身を包んでいる。

腕捲りをして腰下でズボンを履いている。そのせいでとても乱暴なイメージに見える。

「鬼…!?」

武流はあまりのオーラに自分の体が無意識に震えているのに気づく。

「鬼~?あ~俺か?俺はテスカだ」

姿は人間だ。でも、なんだよこの迫力は…!!今、こうして姿を見て分かった。

角が生えていて全身真っ赤な虎柄パンツの生物ではないにしろ。これは人類が昔から恐れていた鬼という生物だと。

「神田先輩!逃げてください!」

アリラが必死な叫びを上げる。

わかってる!俺も逃げたい。でも体が動かねぇんだ。震えもとまんねぇんだよ!

「何してるんですか!早く!!」

更に焦ったようにアリラが叫ぶ。

さっきまでの適当な感じからは全く想像できない姿だ。

「何だよ女!その男、彼氏か?」

ニヤニヤしながら鬼――テスカがゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。

雷皇タラニス!!」

スクールバックを放り投げ、叫ぶように唱えるとアリラの手から眩しい光が放出される。光が長く細くなって立体へと変わる。

さっき見た大剣だ。

「先輩には触れさせません!」

雷皇を近づいてきたテスカに向ける

テスカは少し驚いて止まったあと再度ニヤニヤと笑う

「いいねぇ!その気迫!ゾクゾクするぞ!」

「はぁッあ!」

地面を蹴ってアリラが加速する。

その勢いのまま雷皇をテスカめがけて振り下ろす。

しかしテスカは笑いながら軽々と避ける

「まだです!」

アリラは体勢をすぐさま変えて雷皇を素早く振り回す

だが、テスカには全く当たらない。全て避けられてしまう。

「遅せぇ」

テスカは体勢を低くして雷皇の一撃を避けた、次いでアリラの腹に拳を突きだすようにして殴り込んだ。

「ぁあッ!!!!!!」

後方に勢いよく飛ばされ、背中を地面に擦り付けて、漸く止まる。

「アリラ!!!!」

武流は無我夢中でアリラの横に駆けより、しゃがみこむ。

「逃げてくださいって言ったのに…」

アリラの弱々しく、次第に細くなる声に武流はテスカに対する怒りを覚える。

どうすればいい。このままアリラを抱えて逃げるか?いや、無理だろう。絶対に追いつかれる。どうしたらいいんだ。

考え込む中で何を血迷ったのかこんな言葉が出てきた。

「俺はアイツを倒せんのか?」

武流は自分でも何を言っているのか分からなかった。

「多分…」多分って!おいおい俺になら倒せるとか言ってたよね!?何で今さらちょっと逃げたの!?

でも、そんなの関係ない!今は多分でも助けられるかもしれないなら賭けるしかねぇ!

「俺を魔法使いにしろ!」

「え!?」

「早く!!」

「はい!」

アリラは頷き、武流の胸元に勢いよく手の平を当てた。少し痛かったが我慢した

アリラの手の平から黄色い光が発光する。

瞬間。何かが流れ込んでくるのを感じる。

全身に力が込み上げてくるような感覚。何処か懐かしい。

そして、辺りに爆発的に光が放出される。

地面が割れて地鳴りがする。

一本の黄色い光が柱のように天を貫いた

「ぁん?」

テスカが怪訝そうに見つめる。

光の柱が渦を巻いて消えていった。

そして見えた。肩にアリラを担ぎ上げ、テスカを睨んで立っている武流が。

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