石榴と苺

@tsaskn

第1話

はわぁ。また新しいお店がオープンしたんてね!なになに、期間限定苺のみるふぃーゆ?

凄く美味しそう!いいなぁ。きっと素敵な味がする。一度は食べてみたいもんだ。お店はもちろん東京。

あーあ。

私の住んでる所は田舎、島根の海側、キラキラケーキなんて売ってない。しょっぴんぐもーるも近くにない。スーパーまでは1時間も掛かるし、バス程も遠い、コンビニはちょっと近いけど、キラキラケーキはもちろんない。近くには海しかない。

良いことなんて何もない。ご近所さんは踏切のカンカン鳴ってるやつ。

ね、良いことなんてないでしょう?

でも、私は今新幹線の中。お母さんとお父さんに一生懸命お願いして許可を貰って、東京に一人旅に来てるんよ。わくわくする、どきどきする。東京ってお洒落だろうな。新幹線って快適。ビュンビュン進む、風より速いんじゃないかな。

もうすぐ着くの、夢見たい。


あ、着いたみたい。


はわぁ!す、凄い、沢山の人が歩いてる。都会って凄いんね。テレビで見るより100倍も凄い。人酔いするって言葉が良く分かった気がする。あ、お母さんに連絡しないと。

「もしもしお母さん?」

ーあら、石榴ざくろ?もう着いた?

「うん、今着いたよ、凄い人。」

ーふふふ、楽しんできんさい。

「ありがとう、お土産買ってくるね。」



苺のみるふぃーゆを食べないと。雑誌の地図だとこの辺かな。あ、見つけた、ここのお店だ。なんだか私なんかが入っていいのかな…。お洒落すぎて神々しい。

「「いらっしゃいませー!」」

はわぁ、可愛いお店。こんなお店見たことない。

「お一人様ですか?」

「は、はひぃ!」

慌てて噛んじゃった。都会、凄いよ。メニュー見てたら全部食べたくなる。でも、

「苺たっぷりみるふぃーゆ、で。」

「かしこまりました。」


美味しい、凄く美味しい、苺が沢山だ。今まで食べてきたケーキとは全然違う。乗ってる苺が一つじゃない。なんだか嬉しい。都会にはこんな食べ物があるんだ。田舎にはこんな食べ物もお店もない。凄いなぁ。今、凄く幸せだ。

お店の中では可愛い音楽が流れてる。なんて曲なんだろう。来ているお客さんも店員さんも皆お洒落だ。都会って感じがする。






お土産も沢山買った。東京ばなな、買ったよ。つい一つ食べてしまったけど。凄く楽しかった。良い思い出になった。お母さんとお父さんに感謝しないと。


でも、気づいたの。都会には海も田んぼも畑も無い。あるのは最新のお店ばかり。ガヤガヤ、ガヤガヤ、耳が慣れなかった。楽しかったけどずっと居たら私は倒れそう。もちろん、いい意味で。

私はやっぱり田舎が好き。大好き。何もなくて不便かもしれないけど。キラキラケーキには勝てないかもしれないけど。キラキラの海がある。ご近所さんは踏切のカンカン鳴ってるやつだけど、その音は結構好き。夜空も田舎はとても綺麗。満天のお星様、都会じゃ見れないでしょ。自慢なの。


私はね、田舎に生まれてよかったよ。嬉しいことも沢山あるよ。楽しいことも沢山あるよ。都会も好きだけど、田舎の方がもーっと大好きだよ。


大好き。田舎で食べる石榴ざくろが好き、都会の苺より甘酸っぱくて美味しくて大好き。




ねぇ、波の音と満天の夜空をもっと頂戴。

お皿いっぱい石榴をのせて。

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