迷路

阿久津side



「まよった」


戸田のメールが来た。


「なんだ?迷子?」

「真実ちゃん、さっき学校の裏にある迷路に行きましたよ」

「そもそも、なんで迷路があるんだ!」

「わかりません……真実ちゃんは、まだ迷路の中じゃ……それに、その迷路、かなり大きいことで有名ですよ」

「まずいな……すぐに戸田を助けないと」

「迷路が得意な洋君に聞いてみるのがいいと思います」


俺と和泉は、洋の所に行った。

洋は、すぐに見つかった。

教室の端で本を読んでいた。


「洋、戸田が迷路で迷ったらしい」

「そうですか。迷路は、平面的ですか?」

「うん。もしかして、右手法?」

「はい。ゴールやスタートが迷路の中だとダメですが」

「今回は、大丈夫だと思う」

「じゃあ、阿久津さんか和泉が行ってください。できれば阿久津のほうで」

「洋……?また俺を騙そうとしているのか?」


洋が、少し下を向いて悩んでいた。そして、言う。


「いいえ。そんなことは全く思っていませんでした」

「「嘘だろ!」」

「チッ」

「洋君……舌打ちした……」

「気のせいじゃないですか?」

「とにかく、早く助けるぞ!」


俺たちは、結局全員で行くことにした。

そして、迷路のスタートを見つけた。


「ここか……というか、ここはバラ園か?一体いくらかかっているんだ!」

「水やりとかどうやっているんだろうね……」

「そんなことはどうでもいいです。早く探しましょう」

「そうだな。えっと……右手を壁に当てて……」


そのまま俺たちは進んでいった。そして、しばらくすると、突然洋が言う。


「止まってください」

「ん?どういうことだ?」

「いいから!」


あまりに真剣だったのでその場に止まる。すると、突然地面が開いた。


「お、落とし穴……!しかも、底には針山……」

「洋……ありがとう。洋がいなかったら俺は死んでいたかもしれない」

「今は仕方ないです」


そして、再び俺たちは進んだ。


「ゴールはまだか?」

「本当に長い迷路ですね……」

「なんだあれ?」


俺たちの前には、何かの画面があった。すると、画面に戸田が映っていた。

そこには……


「あ!みんな、今マヨっているよ!」

「戸田……?これはどういうことだ?」


画面の中の戸田は……ジャガイモにマヨネーズをかけているところだった。


「戸田、なんでこんなところにいるんだ?」


俺は、怒りをこらえながら戸田に聞く。戸田はそんな俺の様子に気が付かないまま笑顔で言う。


「校長先生がなぜか迷路の地図をくれて、クリアしたらマヨネーズあげるって言われて……丁度使いたいと思ったから……」

「ふざけるなー!俺たちは、何のために苦労したんだー!」


俺は、どこか遠くに向かって叫んだ。

その後、戸田は無事に回収され、なぜか洋の説教が始まった。その説教は、二時間も続いたそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

日常生活部 一瀬信乃 @itinose

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ