飲み物

和泉side



「これ、なんだ?」


阿久津先輩が部室の机にあったペットボトルを持つ。


「お茶じゃないですか?」


洋君がペットボトルを見て言う。

なんか、すごく怪しい……


「やめたほうがいいと思います」


俺は、阿久津先輩に言う。

阿久津先輩は、匂いを確かめる。


「なんか、よくわからない匂いだな……」

「飲んじゃいましょう」


洋君が、阿久津先輩に言う。

絶対に、何かわかっていると思う。

阿久津先輩は、一気に飲んだ。

すると、思い切りむせた。


「ゴホッ、ゴホッ!これ、苦い!まさか……」

「センブリ茶みたいですね。毒味をしてもらいました」

「お前……!」

「健康にいいからセーフです。毒じゃなくてよかったですね」

「言い訳ないだろ!」

「和泉も飲む?」

「いえ、結構です……」

「そうか、残念だな」

「何が⁉そんなに見たいの?なら……」


俺は、センブリ茶をグイッと飲む。

あまりの苦さにむせてしまう。


「ゴホッ!これ、キツイ!」

「洋は、一人だけ飲まないのか!」

「はい、まずそうなので」

「ちゃっかりし過ぎだろ!」

「洋君、酷い!」

「それが取り柄なので。今見つけたんですが、もう一つペットボトルがありました」


洋君がペットボトルを取り出す。

その中身は、濃い紫で、グレープジュースのようだった。


「ジュースか?」


阿久津先輩がペットボトルを開ける。

すると、ものすごい匂いが部屋中に広がる。


「なんだこれ⁉すごく臭いぞ!」


洋君は、普通そうにしていた。


「よく耐えられるね……」

「口で、息をしているので」

「俺もやってみようかな……」

「それより、阿久津さん。飲んでください」

「はあ⁉明らかに飲めないだろ!」

「飲め」


洋君がきつい声で言う。

阿久津先輩は、あまりの圧力に、仕方なく飲むことにした。

ジュースを少しだけ口の中に入れる。


「まずっ!なんだこの味!センブリ茶よりひどい」

「ノニジュースのようですね」

「わかっていて飲ませたのか!」

「はい。これも、健康にいいですよ」

「ふざけるな。飲めるわけない」

「流石に俺もちょっと……」

「今回は、阿久津さんだけでいいです。流石にかわいそうなので」

「俺は、かわいそうじゃないんだな!」

「もちろんです。かわいそうなわけないじゃないですか」


洋君は、真顔で言う。

阿久津さんは、その後、クラスメイトにセンブリ茶を飲ませたそうだ。

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