第一巻 太郎さんこんにちわ

どこから話せばいいだろうかな・・・あっ、そうだ! まずは服を燃やしちゃったところから話していこうかな。

服に火がついちゃったあと、俺気絶しちゃったんだよ。あまりの熱さにね。人間危機的状況に陥ると生存本能的がカチッとスイッチを入れ替えてくれるらしいんだ。多分その時俺の体は、「あっ! 熱いわ。じゃあ、とりあえず体休めるか」という感じでスイッチを入れ替えてくれたんだと思う。まぁ、そのころは上洛とかそんなんで忙しかったしさ、近衛ちゃん、あぁ近衛前久ちゃんのことね。近衛ちゃんとはさ、おんなじ趣味だったからすごく馬があってさ、本当に楽しかったよ。その近衛ちゃんにさ、お茶会を開いてあげたのよ。あの時が一番楽しかったな・・・。

近衛ちゃん今どうしてるんだろうな・・・・。


それでだよ、気絶してた俺がふと気絶した状態から、目が覚めたわけよ。目を開けたら周りがすごく明るいもんだから、「えっ! なにここ。あっ、天国かな・・・」とかそういう風に思ってさ周りを見渡してみたらさ、ちゃんと生きている人間が俺を不審な目で見てくるんだよ。それに、俺自身なんか変な感覚がしたのよ。感じたことがない着心地がね。ふと自分の服を見てみると、俺Tシャツ着てるわけよ。すごくない? いつ着たかわからないけれども、なんかさ、すごくない? でも、その時は俺はTシャツとかそういうのを知らないわけだし、俺の事を見てくる人は俺が知らないような服を着ているし、周りの景色は俺が今までいたような建物じゃなくて、大きなビルが立ち並んでいる都市だったし、なんで俺がTシャツを着ているのかが、もうなんかわからなくなって、ちょっと頭がおかしくなっちゃったんだ。ウギャーッ! って叫んでみたよ。 ウヲーッ! とも叫んでみたよ。だけれどもね、そんな風に叫んでも何も解決せずに周りの人の目が、どんどんと厳しくなっていくだけだったよ。そのまま俺は膝から落ちていって地面に座り込んでしまった。どうして、こんなことになったのか。この世界はいったい何なのか? 俺は死んでしまったのか? 俺が死んでしまったあとの世界はどうなってしまうのか? 上洛の時に持ってきた茶器はしっかりと保存できているだろうかだとか、いろいろなことを考えこんでしまった。

「ちょっと君。何してんの?」

低い声が聞こえて振り向いてみると、そこには俺の嫌いなやつがいたんだよ。だけれどもそいつは、俺の知っている服装ではなくて、今になって分かったことだが警察官の格好をして俺に話しかけてきたんだ。

「太郎。なんでお前がそんな恰好をしているんだ・・・?」 俺は、びっくりしたよ。

だってあの太郎が不思議な恰好をして俺の目の前にいるんだぜ? あのおっさんがだぜ?

「私は太郎ではなく吉沢だが、どこか私の格好に変なところがあるのかね?」

太郎はそう続けてきた。その時はその人が太郎の言葉が冗談にしか聞こえなかったから、「何を言っているんだ。お前はあの甲斐武田家第十九代当主、武田晴信だろ?」とか聞いてみたけれども、そのおっさんは「何を言っているんだね君は。とてつもなく怪しいやつだな」

とか言ってきたんだ。そんで俺の洋服をつかんで、俺を立たせて、いきなり少しパトカーで事情を聞くからね。時間は大丈夫だね?」とか言うもんだよ。パトカーって何だよ? もう訳の分からないことを言わないでくれよ、太郎さんよ。いくら嫌いな奴でも、少しでも知っている奴がこんな世界にいるのであればそんなことを置いておいて、頼るしかないのだよ。いくら俺がどんなに偉いやつでも、頼るときは頼らなければ。

だけれども、太郎は俺の頼りたいという事を知ってか、知らずか俺の頼りたいという気持ちを、断ち切らせるためにパトカーに無理矢理乗せた。椅子がふかふかだったから本当に良かった。でも、無理矢理パトカーに乗せたことに関しては、ちょっとだけムッとなった。刀があったら切り捨てたいぐらいだよ。だけれども俺は力がなぜか入らずに、されるがままだった。

「で、君の名前は何なの?」

太郎による、俺への事情聴取がいきなり始まったのだった。

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信長さん はいむまいむ @haimumaimu

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