第2章
第1話 同じクラスにいる○○○
「きゃあー! やった! UR(ウルトラレア)出た~!」
教室でお弁当を食べていたら、突然、向かい合って座っていた佳帆(かほ)が叫んだ。
ゆるくウェーブのかかった髪が、興奮している佳帆の動きに合わせて揺れている。
「おめでほ~」
タコさんウインナーの足をかじりながら言うと、佳帆がスマホの画面をこちらに向けた。長めの爪は、きれいに磨かれている。
佳帆の女子力はかなり高い。
けれどその中身はゲーム命。
家には各種ゲーム機が揃っていて、数えきれないほどのソフトが積み上がっているのを、わたしは知っている。
「ほら、いくあ、見て! 月読(つくよみ)キター!」
その画面には、頭部がデフォルメされたマスコットみたいなキャラクターが映っていた。
佳帆が最近ハマっているアプリで、マスコット化された日本の神様を集めるというゲームらしい。
日本には、八百万の神っていうくらいたくさんの神様がおわしますらしいから、集めるのは大変だろうな~なんて思ったりする。
「あ、可愛い」
男の子のキャラクターだけれど、三日月をモチーフにしたらしい首飾りをつけている。
「でしょ? いくあもやりなよ。今始めれば好きなSSR1枚もらえるよ?」
佳帆が、スマホにぶら下げている神様マスコットを揺らしてみせる。白い鳥の姿をしたそのマスコットも、ゲーム内のキャラクターらしい。
わたしにはSSRとURのどっちがいいカードなのかの違いすらわからないレベルなんだけど。
面白そうなゲームの話を聞いたらすぐにダウンロードする佳帆のようなアクティブさは、残念ながらわたしにはない。
「ゲームの中で集めるより、どうせなら、そのスマホにぶら下がってる実際のマスコットのほうを集めたいかなぁ」
いくつか集めて、自分の部屋の棚に並べて置きたい。
「あ、カミサマスコット?」
「かみさますこっと?」
「これのこと。神さまマスコットの《マ》をつなげてカミサマスコット」
なるほど、とわたしはぽんと手を打った。
「こっちも可愛いでしょ? なんか噂では、お守り効果もあるらしいよ?」
「お守り……?」
「そうだよ。キャラクターによって、厄除けとか合格祈願とか、いろいろ。まぁ、噂だけどね~。あ、気になるなら、帰りに売ってる店寄ってく?」
悪霊退散、なんていうのは、さすがにないのかな。
それでも、少し気になる。
効果なんてなくても、可愛いからそれはそれで構わないような気もするし。
まだ、買うと決めたわけじゃないけれど、見に行ってみるのもいいかもしれない。
「行ってみようかな」
わたしは丸っこい白い鳥のマスコットを眺めながら、そう答えた。
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