第4話 うちの家にいる○○○(2)
お兄ちゃんが投げたお札は、ベランダから吹き込んだ風のせいで逆戻りし、お兄ちゃんの太ももにぴたりとくっついただけだった。
「あっ! くそ! さすが1000年生きる化け猫めっ!」
お兄ちゃんが悔しそうに歯噛みしている。
いや別に、翔汰はなにもしてないと思うけれど。
鎖につながれている今、妖力は封じられていて、風を起こせるような能力はないはず。
さっきのは、自然界に自然に吹いたただの風だと思う。
「ちっ、うるせーのがやってきた」
うんざりした声が、わたしの上から降ってきた。
見ると、翔汰が嫌そうに顔をしかめて、よいしょ、とその小柄な体を起こしている。
さっきまでの異様な雰囲気は、すっかり搔き消えていた。
お兄ちゃんの持ってきた、たぶん自作と思われるお札にはなんの効果もなかったけれど、お兄ちゃんの存在が、さっきまでの空気を払い除けたのは間違いなさそうだ。
「翔汰……?」
「おれ、あいつは面倒臭いから苦手なんだよ。じゃあな、いくあ。遊んでくれてありがとな」
最後に子どもらしいセリフを吐いたかと思うと、翔汰はじゃらりと鎖を鳴らしてベランダの柵を飛び越え、鎮守の杜の奥へと帰っていった。
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