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 あたしがそのままへたりこんでいると、五分と経たずに第一陣のパトカーが現場に駆けつけた。


 パトカーから降りた二人組の片割れは中年の婦警さんで、あたしの姿を見つけるとすぐに駆け寄って介抱してくれた。そうこうしているうちに車はどんどん増えていったが、あたし自身はほどなく近くの交番へと連れてかれて、事情聴取を受けることとなった。


 質問してきたのは、事件現場であたしを介抱してくれた婦警さんだった。穏やかな声で、言葉も選んでくれている。でも、その内容はなかなかシビアだった。


 住所氏名年齢から始まり「死体を発見した時の状況を」「飛び降りた少年とは面識があったか」「そもそもどうしてあんな朝早くにマンションの前を通りがかったのか」等々。


 しまいには「死体を発見したとき、あなたとの距離はどの程度離れていたのか」「自転車は止めていたか、動いていたか」「誰が回りにいたか。その中に知り合いはいたか」とごくごく些細なことまで尋ねられ、体重と胸囲以外のトップシークレットは全て自白しなければならないほどだった。


 事情聴取が終わると、婦警はパトカーで家まで送ると言ってきた。聞けば愛車のルイガノはもう家に移送済みだと言う。


 あたしはとりあえずの謝意を述べつつ「でもあたし、自分の足で学校に行きます」と答えた。例えこんな状況でも、両親とも家を留守にしている時間帯に帰宅するのはごめんだった。


 婦警は初め「休校の許可はもらっているわよ」と言ったが、あたしの意志が固いと見ると、案外簡単に折れてくれた。


「川原さん」


 別れ際に婦警は妙なことを尋ねてきた。


「なんでしょう?」


「ジャンピング・ジャックって言葉に聞き覚えは、ある?」


 この場に似つかわしくない横文字の並びに、あたしは思わずきょとんとする。


「ジャンピング・ジャック……? えっと、洋楽の曲かなんかですか?」


「あ、ううん。知らないなら良いの。ごめんなさい、変なことを聞いてしまって」


 そう言ってから、婦警は急に質問したことを悔いたようにそっぽを向いて、「今の話、お友達には内緒にしてちょうだいね」と付け足した。

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