二部:思い通りにならないこの世界で
第二部第一話 思い通りにならないこの世界で
■ 世界歴2019年5月20日 第76行政区魔法大学校附属白魔法治療院
南病棟8階 802号室
真っ白なベットの上で、それよりもはるかに白い顔をした
僕は死に向かう彼女を前に、ただ呆然と立ち尽くしていた。僕はもっと前から、"この時"が来ることを知っていたはずだった。
報告されているケースにおけるその「最後」は、ある時点を境に急激に体内から魔力が失われ、二次性低体温症となり、そのまま眠るように死ぬことが多いとされている一方、何故、元々魔力を一切持たない
「悔いのないように。 ・・・まさか、"また"この言葉を言わなくてはならない時が来るとはね・・・」
左斜め後ろから松田先生の声が聞こえ、僕の左肩に優しく手を置く。しばらく手を置いたままにしたあとで、松田先生は病室を出て行く。自然と涙が頬を
僕は、彼女を救うための
僕はいつだったか松田先生が南大陸での昔話をしていた際に、先生が自分自身にいいきかせていたあのセリフを思い出していた。
“今でも時々悔やむことがあるよ。あの時、何故もっと注意深く行動できなかったのか、とね”
僕がもっと注意深く行動していれば、この結末は変えられたのだろうか? いや、少なくとも、これまで報告されている50歳直前までは生きることができたのかもしれない。そう考えると、また涙があふれ、喉からは
僕の第76行政区魔法大学院第三呪術研究室での最後の物語は、今から二年前、桜がちらほらと咲き始めて、キャンパスに彩りが戻ってきつつあった世界歴2017年4月5日 あの奇妙な新入生の入学から始まる。
■ 田中佳苗の「最後」まで、あと
―2年と3週間
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