番外編 冬の昼休み

 池と言ってもコンクリートで作られた、四角四面の味気ない小さな池だ。

 しかしそのおかげで氷は綺麗な長方形を形作っている。

 私は途端にその氷をそのままの形で取ってみたくなった。

 まずは氷の左端を指でゆっくり押して水に沈める。すると反対側が持ち上がる。私は持ち上がった先を壊さないように優しく右手で掴み、さっきまで左側を押していた左手を隙間に滑り込ませた。そしてその左手をゆっくりと左へ動かす。

 後はこれをゆっくり自分の方に引っ張っていけば氷をそのままの形で取り出すことが出来る。

 私がいざ引っ張ろうと身構えた時、後ろからサッカーボールが私の頭の上をかすめて池に飛び込んで来た。

 当然、氷は粉々に砕けた。

 悪い、ボール取ってくれ――と後ろから声が聞こえる。

 なんだか可笑しくなって、私は大いに笑った。

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