大きな窓のある場所で

星美里 蘭

大きな窓のある場所で

 廊下にある生徒たちの憩いの場。

 頭一つか二つ高いところから腰下程の大きさの開放的な窓があり、胸の位置には鉄製の手すりが一本あるというものだった。

 学生等はそこではしゃぎ、笑い、青春した。

 

 

――――あの事件があるまでは。

 

 いつも通りの放課後のはずだった。

 陸上部のある生徒がランニングコースとして指定されている道を走っていたそんなとき。

 偶々上を見た。

 見なければならないということではなかったし、何か特別な何かを感じたわけでもない。

 ただ単に、

 ただ単に、上を向きたかった。

 ただそれだけだった。

 それだけの理由で上を向いてしまった。


――『それは偶然』――

 

 1人の女子生徒が、

 

――『それは必然』――

 

 窓の縁にいた。

 

――『それは幻想的であり』――

 

 長く美しい髪が風で靡く。

 

――『それは現実的であり』――

 

 艶めかしくスカートが揺れる。

 

――『同時にそれは』――

 

 すっ、と、女子生徒が体を中に預け――――

 

――『酷く』――



 

 

 

 

 

 



――――目の前で四散する。

 

――『絶望的だった』――

END

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大きな窓のある場所で 星美里 蘭 @Ran_Y_1218

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