黄泉國 3
……どういう事だろう。
猫耳少女の言っている意味がわからない。
人間じゃなくなるというのは一体どういう意味なのだろうか。
そもそも此処に来た時点で死んでるんだから、幽霊=人間ではないという意味なのだろうか。
頭が混乱してくる。
早人の混乱を察したのかイザナミが話しかける。
「なんじゃ、お主知らんのか?そもそもこの家に来れるのは人であって人ではないからじゃ。」
「……え?」
「……ん?」
早人のきょとんとした顔を見てイザナミも何故そのようなことになっているのじゃ?といいたそうな目で少女を見ている。
「……あー。早人さんに何も言ってませんでしたっけ?」
「まずアンタから何も聞いていないんだけど……」
「……てへっ♪」
初めて会った人(?)だが、本気で少女の顔面を殴ってやりたいと思ってしまう早人だが、なんとか耐えた。
そしてイザナミがあきれて話してくる。
「仕方ない。儂から話してやろう。早人はこの屋敷に来る前に何か黄泉國の食べ物を口にしなかったか?」
「黄泉國の食べ物……?」
早人は記憶をたどっていくが、食べ物らしい食べ物は一つしか当てはまらなかった。
「……そこの人に飴をもらって食べた……。」
「ふむ。それじゃろうな。お主はヨモツヘグイという言葉を知っておるか?」
「よもつ……へぐい?」
「そうじゃ。ヨモツヘグイは自分の居た世界とはまた違った世界の食べ物を食べると起こってしまう現象じゃ。儂もヨモツヘグイにやられた身じゃから痛いほどわかる。それに……お主の身体はすでに黄泉國の身体になっておる。つまり……」
———パチンッ
イザナミが指パッチンをすると、早人の見る世界が変わった。
きれいだった浴槽は垢まみれになり、またヘドロのような物が浮いている。
壁には黒カビのような物がびっしりと生えており、衛生面に問題がありすぎる程だ。
「どうじゃ?黄泉國の裏の姿は?」
「う、うわ!?」
今まで見ていた物の変わりようにただ驚くだけしかできなかった早人の前に立っているのは身体が腐りきったヒトの死体だった。
いや、ヒトの死体ではなく、神の死体といった方がいいのだろうか。
早人に話しかけた目の前の死体。つまり先ほどから早人の前に立っていた者。
イザナミだ。
死後に青春はやって来た 秋鹿 慧 @akisika0702
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