分かりやすさやストーリーのテンポといった部分では昨今の流行にややそぐわない部分があるものの、アジアンテイストなファンタジー世界を紡ぎ出す文章には見習いたいものがありました。世界観を形作り、映し出す文章は見事であり、緻密に練られたのであろう設定を遺憾なく発揮している印象でした。
しかし途中まで読んでいて気になったのはジャンル設定が『SF』である、という点でした。ファンタジーじゃないの?……と思わせてからの後半の展開。
ネタバレになるので明言は避けますが、「ははぁ、そう来るか」と素直に感服しました。たしかにこの作品はSF分野だと思います。
ともすれば急展開とも思える場面も、確固たる文章力と堅牢なる構成に支えられ、ひとつの面白さとして受け入れることができました。
同じ作品の中で様々な表情を見せつつ、しかしそのどれもが一本筋の通った物語としてまとまっている所が、何よりの魅力だと思いました。