【六章後半②までのあらすじと登場人物】

 *ここまでのストーリーのネタバレが多く含まれています。直前話までご高覧いただいたのちに、閲覧することをおすすめいたします。





 白の王宮で目覚めたレオナは、眠っているあいだに視た夢を思い返す。

 容姿がうりふたつの双子の夢を視るのはこれが三度目だった。レオナはそれが夢ではなく記憶であると感じ取っていた。


 王都マイアではブレイヴたちと戦った仲間たちが、それぞれ別れのときを迎えていた。

 ルダのアイリスとアロイス、そしてグランの竜騎士たちも早々に国へと引き揚げて行く中、イスカの戦士シオンはブレイヴを待ってくれていた。イスカが俘虜ふりょとして捕らえたひとりの騎士と会わせるためだ。

 ブレイヴを前にして、オリシス公女ロアは激しい怒りと憎悪を剥き出しにする。兄アルウェンの死はブレイヴにあるとロアは信じて疑わず、彼女は聖騎士の死を望んでいたのだった。


 王都マイアではフォルネの王女フレイアとクリスが街を散策していた。

 西のラ・ガーディアからずっとブレイヴらに同行しているふたりだが、これから先も同行者となる理由は見つからず、行く先はフレイア次第といったところだった。

 そんな中、ふたりはイレスダートを離れようとするクライドと出会う。聖騎士と白騎士団との戦いで、混乱に乗じて南のユングナハルが動き出していた。異国の剣士クライドはユングナハル出身であり、また此度の一件に関わっているのは彼の兄だという。聖騎士に別れも告げずに去って行ったクライドを見送ったあと、クリスは予期せぬ形で同胞たちと邂逅する。


 白の王宮でブレイヴは国王アナクレオンと相対する。

 かくして本物のアナクレオンはブレイヴに過去とこれからのことを語る。そしてブレイヴとレオナを伴い、白の王宮の地下深くへと赴く。王家の者、あるいは一部の聖職者を除いて立ち入ることが禁じられた聖堂だ。

 アナクレオンはとある昔話を語りながら、ブレイヴをそこへと導く。約十年前、レオナがはじめて竜人ドラグナーの証である聖痕を発動させた場所には、聖なる剣が封印されていた。聖なる・竜刃カーナ・ラージャ。伝承のなかで存在していたはずの剣をブレイヴはアナクレオンに託される。それはこの時代の竜人ドラグナー、ひいてはブレイヴにとってもっとも大事な人を守るための剣だった。


 ブレイヴが王都マイアに帰還するよりもうすこし前に、レナードとデューイは単独でアストレアに潜入していた。その目的はブレイヴの母エレノアとの接触、および蒼天騎士団のフランツに会うためだ。

 白の王宮の監視下に置かれたアストレアには、かつてブレイヴの上官だったランドルフが居座りつづけていた。やがてアストレアに王命が届く。ブレイヴ率いる叛乱軍と白騎士団のフランツ率いる王国軍、その戦いが終わっていること。叛乱軍と称された者たちにアナクレオンは真摯に対応し、すでに和解したこと。そしてランドルフは即刻アストレアから引き揚げるよう命じられていた。

 過去の確執から聖騎士の帰還を必要以上に怯えるランドルフに、麾下きかの騎士が諫言する。仮面の騎士は聖騎士など恐るるに足らずと言い、鼠退治と称して地下道から侵入しようとしたレナードたちを駆逐するのだった。


 ブレイヴとは別行動でアストレアに入ったレオナは、聖騎士の従兄弟であるダミアンと接触する。一癖も二癖もあるこの青年は、レオナの傍付きルテキアとはその昔婚約者の関係であった。協力を求めるレオナに対して、ダミアンはなかなか色好い返事をせずに逆に聖騎士の帰還を待つように諭す。


 一方のブレイヴは山毛欅ブナの森を抜けて、アストレア城下を目指していた。

 少ない味方でアストレアを取り戻すには限界があるものの、軍師セルジュと魔道士の少年アステアの生家であるエーベル家の協力を受け、真正面から堂々とアストレア城へと赴く。マイアの残党は残りわずか、城の中では蒼天騎士団が戦っていた。

 そして、ついにブレイヴはランドルフを追い詰める。

 人質にするエレノアにも逃げられたランドルフはいよいよ後がなく、命乞いすらする憐れな騎士にブレイヴは逡巡する。ランドルフの虚言に騙される形となったブレイヴだが、しかしここまでランドルフに従いつづけた仮面の騎士の剣が男を貫く。その正体は、自由都市サリタにてブレイヴたちを逃がしたアストレアの鴉だったのだ。


 役者と種明かしが行われたあと、ブレイヴは次の旅路へと準備を進める。行く先はユングナハル、異国の剣士クライドの祖国である。別れも告げずに去って行った薄情な友に会うため、それからユングナハルの情勢をこの目でたしかめるためだ。そのブレイヴの隣には幼なじみのレオナがいた。王都マイアの箱庭を出て、自分の意思で行動するレオナを守るのが自身の使命であるものの、このとき抱いた形容のできない漠然とした予感がブレイヴを後に後悔させるのだった。





【登場人物紹介】



 ブレイヴ

 21歳。ブレイヴ・ロイ・アストレア。主人公。イレスダートの聖騎士。イレスダートを追われたあと、西の大国ラ・ガーディアや山岳地帯のグラン王国の要人たちと誼を結んだ後、イレスダートへと帰還。祖国アストレアも取り戻した。


レオナ

 19歳。レオナ・エル・マイア。ヒロイン。ブレイヴの幼なじみ。イレスダートの王女。上の兄妹二人とは母親がちがう側室の子だが、竜人ドラグナーの力を持つ。


ディアス

 22歳。ディアス・ブラッド・ランツェス。ブレイヴとレオナの幼なじみ。赤い悪魔の異名は士官生時代に付けられた渾名。


アナクレオン

 30歳。アナクレオン・ギル・マイア。イレスダートの王。レオナの異母兄。


ソニア

 22歳。ソニア・リル・マイア。イレスダートの王女。レオナの異母姉。八年前にガレリアとルドラスのあいだにて消息を絶っているが……?




セルジュ

 28歳。ブレイヴの軍師。


アステア

 16歳。魔道士の少年。セルジュの弟。


レナード

 18歳。アストレアの騎士。


ノエル

 18歳。アストレアの弓騎士。


ルテキア

 20歳。アストレアの騎士。レオナの傍付き。


エレノア

 42歳。ブレイヴの母。亡き夫に代わってアストレアの城主を務めている。


トリスタン

 32歳。アストレア蒼天騎士団の団長。エレノアの騎士。



ランドルフ

 城塞都市ガレリアにてブレイヴの上官だった騎士。王命により、自由都市サリタの攻略を任される。ブレイヴとの確執はつづいている。


仮面の騎士

 44歳。ランドルフの麾下きか。あるときからランドルフの傍にいるが、その仮面の下は誰も見たことがないという。


ダミアン

 20歳。ブレイヴの従兄弟。アストレアの北部の領主バルタザール伯の息子。




シャルロット 

 14歳。オリシス公爵の養女。


デューイ

 22歳。自由都市サリタで出会った青年。旅の案内役を務めた。


クライド

 21歳。異国の剣士。砂漠の国ユングナハル出身だが、各地を放浪している途中でブレイヴと出会い、その後も同行をつづける。


フレイア

 18歳。フォルネの王女。同行する理由はブレイヴの借金の取り立て。


クリス

 23歳。白皙の聖職者。フレイアの従者。

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