【五章までのあらすじと登場人物】

 *ここまでのストーリーのネタバレが多く含まれています。直前話までご高覧いただいたのちに、閲覧することをおすすめいたします。




 ラ・ガーディアの動乱後、グラン王国へと向かうブレイヴたち。

 一方、北の敵国ルドラスでは王女エルレインがひとりの俘虜ふりょの少女を気に掛けていた。

 少女はランツェス公女ウルスラ。ブレイヴとレオナの幼なじみであるディアスの妹だ。城塞都市ガレリアが落とされた際、白皙の聖職者エセルバードとの交渉により異母兄ホルストによってウルスラは敵国へと送られてしまったのだ。

 エルレインの騎士であるランスロットはあまり深く関わるなと忠告するものの、エルレインはウルスラを人質ではなく客人として扱い、保護する。


 モンタネール山脈を攻略するブレイヴたちだったが、山越えの途中で飛竜に襲われる。

 空中からの攻撃に苦戦していたところ、ブレイヴを救ったのはグランルーザの竜騎士セシリア。彼女の兄レオンハルトとブレイヴは士官生時代に親しかった仲だ。


 かくしてグランルーザに招かれたブレイヴたち。王子レオンハルトの妻アイリオーネも迎えてくれたものの、肝心レオンハルトの姿は見当たらない。疑念を抱くブレイヴたちにセシリアはグラン王国の歴史と、グランのふたつの国について教えてくれる。


 その頃、レオンハルトはグランのもうひとつの国であるエルグランを訪れていた。

 エルグランの公子ジェラールはレオンハルトと昔なじみの関係であったが、敬遠なヴァルハルワ教徒だった。

 グランルーザとエルグラン。ふたつの国で交わされていた不可侵条約には、まだ時間が残されていた。にもかかわらず、期限が切れる前にエルグランはグランルーザに侵攻。レオンハルトはこれをジェラールに問いただすものの、宗教心や価値観やちがうふたりの騎士とのあいだに深い溝が作られていた。

 

 単身で隣国へと乗り込んだレオンハルトはジェラールによって囚われてしまう。妹セシリアは戻らない兄を案じると同時に、とある問題を抱えていた。グランルーザの飛竜たちが次々に不調に陥ってしまったのだ。

 飛竜たちの不調を治すべく、ブレイヴたちは飛竜の谷に向かう。

 しかしそこはエルグランの領域であり、さらには野生の飛竜たちも棲息する危険な場所だった。


 飛竜の谷にて特効薬となる花を手に入れたブレイヴたちだが、ここでもエルグランの竜騎士に襲われる。戦うのは不利と判断し、逃げようとしたブレイヴを暴風が襲う。皆を守るために己の魔力で魔法壁を作ったレオナは、しかし谷底へと吹き飛ばされてしまう。


 そこに現れたのは竜人ドラグナーの青年だった。

 戦う意思はないという竜人ドラグナーは、ブレイヴたちを谷の奥へと連れて行く。そこには老いた竜が待っていた。

 風の一族を名乗る竜の一族たち。老いた竜は竜族に遺された呪いと、とある竜人ドラグナーについて語る。その身に竜の血と力を宿すレオナにとって無関係の話とはいえず、幼なじみに課せられた使命に胸が苦しくなるブレイヴ。レオナは度重なる戦いで、己の竜の力が強まっていくのを感じていた。


 イレスダートのムスタールでは、コンスタンツが戻らない夫を案じていた。

 コンスタンツはヴァルハルワ教徒の枢機卿の娘だが、あまり教会に頼りすぎるのは危険であると感じていた。教会の修道女シスターとの茶会を重ねるのも味方が少ないゆえに、あくまで近況を報告する程度の仲だった。

 一定の距離を保とうとするコンスタンツに、シスターは探りを入れてくる。教会が探しているのはルーファスという名の女騎士だ。イリア・ルーファス・クレインはかつて王女レオナの傍付きを務めていた騎士で、教会に軟禁されていたところをコンスタンツが救った。以後は公子の教育係としてイリアを名乗り、ルーファスという騎士は知らないと答えるのだった。


 また同時期にイレスダートのとある監獄にて、ひとりの囚人を密かにそこから脱出させる者がいた。自らの罪を認める囚人はしかし、彼を助けた騎士にひとつの助言を残した。


 ブレイヴらが飛竜の谷に向かった頃、エルグランの公子ジェラールはちいさな修道院を訪れていた。

 そこは子どもから大人まで療養する施設であり、ジェラールが自らの手で支援物資を届けると同時に、とある人物と会っていた。白の司祭と呼ばれるヴァルハルワ教徒はエルグランに救いの手を差し伸べた聖者だった。

 このように多数の病人を抱え込むエルグランには高額な薬を人数分用意できる余裕もなく、白の司祭はジェラールに早くグランルーザを手に入れるように勧めるのだった。


 レオンハルト救出に向かうブレイヴたち、その先頭に立つセシリアは果敢に戦ったものの、愛竜ベロニカとともに敵の手に落ちてしまう。

 まだそれを知らないブレイヴたちは無事レオンハルトと合流したものの、行く手をジェラールに阻まれる。レオンハルトの機転で彼の愛竜リュシオンとともに脱出したブレイヴは、その直前にジェラールと交わした会話に違和を感じていた。ジェラールの傍にいる白の司祭、それは何度もブレイヴやレオナの前に現れた竜人ドラグナーだったのだ。


 兄と入れ違うように囚われてしまったセシリアは、ここに残れというジェラールの声に従わない。ふたりは婚約者の関係だったがグランルーザとエルグランの関係が拗れてしまった以上、望めない未来だった。


 セシリアと別れたジェラールは、伯父であるエルグラン王を説得するために王城へと向かう。グランルーザのカミロ王とエルグラン王はレオンハルトとジェラールがそうであるように、旧友だった。宿痾しゅくあに苦しむエルグランの民には時間がない。王の背中を押すために飛び立ったジェラール、しかし白の司祭ことユノ・ジュールは彼に見切りを付ける。


 グランルーザでは悲報が届けられ、ブレイヴやレオンハルトを驚愕させた。

 ジェラールの死は、もはやグランルーザとエルグランの戦いが避けられないことを意味していた。ブレイヴらがエルグランへと出立したあと、先鋒隊がグランルーザへとたどり着く。激しい攻防戦を繰り広げるなか、強い魔力を感じ取ったレオナはカミロ王の元へと走る。


 病に伏せるカミロ王の寝室では、アイリオーネが王を守るために強力な魔法壁を作っていた。相対するのはユノ・ジュールという名の竜人ドラグナー。老王の死は運命だと言うユノ・ジュールにレオナは抗う。王とアイリオーネを守るために魔力を限界まで使うレオナ。拮抗するかのように思えたが、そこにもうひとりが干渉する。魔女イシュタリカ。女神の名を持つ魔女を見て、レオナは自身の姉の名を口にする。伸ばした手は届かずに、ユノ・ジュールとイシュタリカは消えるのだった。


 エルグランの王城に乗り込んだブレイヴは、先に行ったレオンハルトに追いつく。

 王の間ではエルグラン王が少ない騎士に守られていた。最後の説得をするレオンハルトの目の前で、エルグラン王は自ら胸に刃を突きつける。それは自殺が許されない教徒にとって、最後の抵抗だった。

 グラン王国の内乱のあと、レオンハルトに手紙が届く。

 送り主はアイリオーネの妹アイリス。ルダの公女であるアイリスはグランに援軍を求めていた。イレスダートの最北西に位置するルダには、現在王妃マリアベルと生まれて間もない王子バルトが身を寄せていたものの、王都マイアからの騎士団が迫っていたのだ。

 すぐに竜騎士団を動かせないレオンハルトに代わり、ブレイヴはこれを引き受ける。イレスダートを離れること約一年、これは祖国アストレアを取り戻す足がかりになるとブレイヴは覚悟した。


 一方、思わぬ形で姉と再会したレオナは動揺を隠せずに不安をブレイヴの前で吐露とろする。宿敵の傍にいる姉を取り戻すために強さを求めるレオナに、自身の思いを伝えるブレイヴ。遠い旅路を経て、イレスダートへと戻れるその日はまもなくだった。




【登場人物紹介】



ブレイヴ

 21歳。ブレイヴ・ロイ・アストレア。主人公。イレスダートの聖騎士。イレスダートを追われたあと、祖国アストレアを取り戻す手立てを探した後、グラン王国へとたどり着いた。


レオナ

 19歳。レオナ・エル・マイア。ヒロイン。ブレイヴの幼なじみ。イレスダートの王女。上の兄妹二人とは母親がちがう側室の子だが、竜人ドラグナーの力を持つ。


ディアス

 22歳。ディアス・ブラッド・ランツェス。ブレイヴとレオナの幼なじみ。赤い悪魔の異名は士官生時代に付けられた渾名。


アナクレオン

 30歳。アナクレオン・ギル・マイア。イレスダートの王。レオナの異母兄。


ソニア

 22歳。ソニア・リル・マイア。イレスダートの王女。レオナの異母姉。八年前にガレリアとルドラスのあいだにて消息を絶っているが……?



レオンハルト

 23歳。グランルーザの王子で竜騎士。ブレイヴより三つ上の友人。声が大きいし説教が長い。


セシリア

 21歳。グランルーザの王女でレオンハルトの妹。


ジェラール

 24歳。エルグランの公子。敬虔なヴァルハルワ教徒。レオンハルトの友人でセシリアとは婚約者だった。


アイリオーネ

 22歳。レオンハルトの妻。ルダの公女。



セルジュ

 28歳。ブレイヴの軍師。アステアの兄。イレスダートを出奔後は西を転々とし、イスカに身を寄せていた。


アステア

 16歳。魔道士の少年。セルジュの弟。


レナード

 18歳。アストレアの騎士。


ノエル

 18歳。アストレアの弓騎士。


ルテキア

 20歳。アストレアの騎士。レオナの傍付き。


シャルロット 

 14歳。オリシス公爵の養女。生まれは西の最果てサラザール。


デューイ

 22歳。自由都市サリタで出会った青年。旅の案内役を務めた。


クライド

 21歳。異国の剣士。


フレイア

 18歳。フォルネの王女。同行する理由はブレイヴの借金の取り立て。


クリス

 23歳。白皙の聖職者。フレイアの従者。






コンスタンツ

 24歳。ムスタール公爵の妻。夫不在のムスタールを守っている。




シスター

 年齢不詳。ヴァルハルワ教会の修道女。コンスタンツと友誼を結ぶ。



 

エルレイン

 19歳。ルドラスの王女。王家の姫君であるが庶子の子のためか、王都から離れたところで暮らしている。上の兄たちが病や戦争で死んだため、王位継承者第一位である。



ランスロット

 22歳。敵国であるルドラスの騎士。銀の騎士の異名を持つ。ブレイヴとの密会後、ルドラスの覇王に講和の声を届けると約束する。





ユノ・ジュール

 年齢不詳。白の司祭。竜人ドラグナー


イシュタリカ

 女神の名を持つ魔女。ユノ・ジュールと行動を共にしている。






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