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「それで、結局手紙に何が書いてあったの?」


 なんだかんだ言って、無事に解決して、怪異現象も起きなかったと喜ばれたらしいと、事務所で報告やら、打ち上げの話をしている最中に聞かれた。


「いや、大したことはなかった。気にするな」

「気になるわよ、みせーなーさーいよ」

「今持ってないわー、かー、持ってたら見せれたなー、かー」

「グーではったおしてやろうかしら」


 そういいつつも、ふと思ったことを聞く。


「浄霊だとか、成仏だとか何とかって言ってたけど、あんな感じでよかったのか」

「今回のは最上の結果ね」

 報酬を受け取ったからか、上機嫌な相沢さんは、説明をしはじめる。


「——成仏っていうのは、一般的には、未練とかのある幽霊とか、死んだ人とかが、安らかに天国に行くっていうイメージでしょう?」

「まぁ、そうだな。そういう風使うことがほとんどだろ」

「本来は仏教の用語で、単純にこの世から解脱、まぁ死んで仏になるってことを指すことなのよ」

「つまり死んだら皆成仏か」

「そういうことね。だからこそ、私達のようなのは、この世に留まる霊を鎮めて、未練を浄化して送り出すことを浄霊って言うのよ」

「ようは成仏か」

「浄霊って言いなさいよ。ケチャップを野菜っていうぐらいの違いがあるわよ」

「そんなこと言う奴いるのか」

「トマト使ってるから、理論上は間違いではないけど、加工品よねぇ」

「打ち上げはファミレスでいいよな、鈴木さんも誘って」

「テストの後でいいわよね。所長、奢ってー」

「お駄賃分は、お仕事料金に上乗せしてるから、それで食べなさい」

「ケチー」

「ケチで結構、それよりも、浄霊についてちゃんと教えてあげなさいな」

「あ、そうだった。浄霊をするにはね、しっかりと霊と向き合って、強い祈りと信念、思いやりを持って在るべき場所へと行けるようにしてあげるのよ」

「浄霊っていうけど、除霊とはどう違うんだ」

「除霊は簡単に言えば、その場所から追っ払うってことよ。だからもしかしたらその後に帰ってくるかもしれない。それで商売してる悪徳な人もいるかもだし、マッチポンプ演出してるところも」


 コホンコホンと所長が咳払いをする。マッチポンプというのは確かに夢も希望もない話だし、あまり口に出すべきではないのだろう。


「あと、一番大事なことね。浄霊ができる人って限られてるのよ」

「限られている?」

「今回はあんたの場合はたまたま縁あったから楽にできたけど、本当はもっと修行したり、徳を積んだりした高い能力を持ってる霊能者にしかできないのよ」

「ほー」

「だからこそ、浄霊のための御札なんていうのが、高名な人謹製ってなると、一つ凄い値段して取引されちゃうのよ」

「結局金だな、おい」

「地獄の沙汰も金次第っていうでしょ。だから祝詞とか、御札とか、誰でも徳のある人物から力を借り受けることができるね、技術がそれなりに発展してるのよ。少しでも多くの彷徨える魂を救うために。少しでも才能がある人が、祀られた存在から力を借りれるように」

「俺でもできるのか?」

「できるんじゃない? 修行次第とかだろうけど」

「適当だなぁ」

「まだいいわよ、モグリとかだと、そういうの考えずに除霊消霊、今だけを解決して後で災いになることしでかすやつがいるんだから」

「消霊……?」

「気にしないで、あまり愉快な話でもないし」

「そうか、それなら聞かないでおこう」


 あーでもない、こーでもないといいながら、日報とでもいうべきか、今回のレポートについて少しずつ書いていく。隣の相沢さんは、スマホだったタブレットで打ち込んでいるが、こちらは手書きである。


「黒沢君、スクロールの方手配しておく? 例え今後やらないとしても、こういうの持っていても損はないわよ」

「あー……それじゃあお願いできますか?」

「今回はこっちで料金は持っておくわ」

「凄い怖いのですが」

「青田買いよ、例えうちに所属しなくてもいいけど、なるべく多くの霊能力者とは仲良くしたいのよね」

「あ、はい」

「届いたら、家の方に郵送しておくわね。いい? スクロールよ、スマホじゃないからね。それでカタログでデザイン色々あるけど、どれにする?」


 それはスマホって言えというフリなんじゃないだろうかと思いながら、カタログを眺める。既存のスマホと似たようなデザインのものを選んでしまう。あまり目立ちたくはない。


「さてと、おつかれさま。今回の依頼は大成功よ。遺品整理は問題なく終わり、問題だった相続関連も、孫娘が前向きに話し合いに参加していることで解決できそうとのことよ。アフターケアで様子見したけど、特に再発はなし。あとは好きに打ち上げにでも行ってらっしゃい」

「「はーい、おつかれさまでしたー」」



**


——リーンリーンリーン

『やぁ、黒沢暁君、元気かい? こちらから君に頼みたいことがあってね。期末試験が終わった後に来てほしい、それじゃあ』




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