第五話 明日の楽しみ
ある日の夕食のことだった。
「美味しいからといってそんなに次々食べていいのか?先ほど如何にも淑やかな令嬢らしくすると言っていたと思ったのだが?」
「でも今はおじ様しかいないでしょう?少しくらいいいじゃないですか。それと、私が食べ過ぎなのではなくおじ様が食べなさすぎるんです!」
夕食の席で軽口を叩くと、ディアナは頰をふくらませ、腰を浮かして抗議した。けれどもアーネストは堪えた風でなく飄々と笑うだけだった。
美味しそうに料理を食べるディアナとは対照的にアーネストは既に食事を終えてナプキンで口を拭いていた。
「そのようなことはないよ。ああ、明日のことだが」
「またそうやって話をそらす……」
不満げなディアナに笑って返す。
「そんなことないよ。で、明日の舞踏会の主催はマクウェル夫妻だ」
「そうなんですね。先日訪問した時はお会いできなかったから、ますます楽しみになってきました」
「それは良かった。明日はうんと綺麗にしてやるから楽しみにしていなさい」
こっそり用意しておいたドレスを思い出しながら言うとディアナは大きく頷いた。
「ありがとうございます!」
「さて。そろそろ食事を終えて支度をしようか」
これ幸いとワインを飲み干し席を立とうとする。 そうまでして食事を早く終わらせたかったようだ。
「……そうですね。ごちそうさまです。おじさま、明日のドレスは何が良いかしら?」
お気に入りの舞踏会用ドレスをいくつか例に挙げてみた。
若い娘らしい淡い色あいの、ふわふわとしたドレスがほとんどだが、特に黄色い生地で腰のリボンがインパクトのあるものが好きだ。
せっかくだからそれにしようと思った。
「そのことだが、実は用意してある」
「ええっ?」
「先日、良い生地を見つけてディアナに似合いそうだと思ったので仕立てさせた」
なぜ勝手に決めたのか、とディアナが視線で告げるが、アーネストは涼しい顔で受け流す。
「いや、お前のドレスだからお前と決めるべきだとは思ったのだよ、一応。まあ、見るだけ見てくれ気に入らなかったら別のにしよう」
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