第三十話 信頼と憧れ
「誰かと会うのじゃなくて?そういえば最近Mr.ファウラーといるところを見たわよ。いいの?」
メイベルがそれらしいことを言ったが、直後話題を微妙に変えてしまった。後半の方が口調が心なしか楽しそうだ。
「そのことだけど、色々教えてくれたのはありがたいわ。でも、おじさまの恋愛に口出しはできないわ」
「でも、大丈夫?……その、色々と」
「どういうこと?」
「スキャンダルとか、あとMr.ファウラーの奥様なり、そういった人とのこととかじゃないかしら」
「そ、そういうこと!Mr.ファウラーって落ち着いた素敵な方だから、騒ぎとかにもなりやすそうだもの。それにお幾つか知らないけど当主としては随分お若いでしょ」
「考えたことがなかったわ」
ディアナにとってアーネストは父でも叔父ではない。小父の方近い。彼との続柄を踏まえた関係を考えてしまうとどのような感情を持てばいいのか分からなくなる。
皆は叔父姪と思っているが私はそうは思っていない。一体、私たちは他人なのか身内なのか。
思考がどつぼにはまってしまっていることに気づいて慌てて首を振る。
「スキャンダルは平気よ。互いに独身だもの。あと、おじ様はああ見えてきっと人生経験も多うだし、何より何も心配することはないっておしゃってたわ。あと年齢だけど、きっと見た目ほど若くないのではないかしら」
少しに不安もなく言い切るディアナに1人で気まずいような気がして、無理やり言葉を紡いだ。
「でも、とってもかっこいい方だもの。コールラウシュ未亡人が本気にでもならないとは限らないわよね。そうなってもいいの?」
「もしもそうなった時のことは正直よく分からな行けど、ご本人がお幸せなら、それでいいわ。でも確かにありえないことではないかもしれないわね。おじ様って、普段は落ち着いて穏やかなのに時々冗談をおしゃっても下手だったり、とっても素敵な人だもの」
「そうなのよね、憧れるわ……って、え!?冗談おっしゃるの!?」
当然のような口調だったたせいで危うく聞き流すところだった。
「ほとんど聞かないけれどね。社交上手なはずなのに、不思議な人よね」
「でもそれはそれでいいんじゃない?いいなぁそういう方って……」
うっとりと眼を細めるメイベルに笑い混じりにカレンが声をかけた。
「彼が聞いたらしょげてしまうんじゃない?」
「それとこれとは別だからいいの。あの人を好いてないなんて言っていないじゃない」
ディアナは前からある話題になるとどうしてもついて行けない。
「ね、ねえ。メイベルって恋人いるの?」
「ええ、あら言ってなかった?」
「どんな方なの?」
興味津々といったふうに聞くとメイベルは頬を薄っすらと赤く染めて躊躇いがちに口を開いた。
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