第二十四話 リチャードとアシュレイ

 いつの間にかリチャードはマイルズと共に少し離れたところに立っていた。

「あちらの会話に入らないんですか」

 マイルズに先程まで二人ともがいたあたりを指し示されたが大袈裟に肩をすくめた。


「まさか、あの三人で話し始めたら私にはそうそう入れませんよ。話術が足りないだけかもしれませんけれどね」

 笑うリチャードは楽しげに、けれど少し寂しげだった。

「彼女くらいの年頃なら叔父君とでなく、もっと若い男性ひとといそうなものですが、僕の認識違いでしょうか?」


「あの人は特別ですよ」

 ディアナを見つめる表情は遠い憧れを見ているそれだった。

「……お好きなんですね、彼女のことが。でも、あなただけじゃない。そうではないですか?」

 マイルズの視線をたどるとリチャードと同じようにディアナに熱い視線を向ける男性ーアシュレイの姿があった。


「そうですね、あいつ、アシュレイのようにもっと積極的になれたらいいんですけど」

 アシュレイは自然と三人の会話に入り、楽しげに話している。じっとリチャードが見つめているのに気がつくとアシュレイは片方の唇を釣り上げた。


 しかし、話が弾んできたところにディアナが女友達何人かに呼ばれてそちらへ行ってしまった。

「ごめんなさい、ちょっと失礼しますね。……みんな。どうしたの?」

「実はね……」



 それから踊って、しゃべって、はしゃいで、そうしているうちにバザーは幕を閉じた。友人に後々聞いてみるとその多くが新たに人をいつの間にか見つけていたようだ。



 帰りの馬車に揺られているうちに疲れてディアナは眠ってしまった。馬車の揺れに合わせて危なっかしく揺れていることに気づき、アーネストが自身の肩にもたれかけさせてやると安心したようにふっと微笑んだ。

「安心しきった顔をして…。おじと言っても血の繋がりは無いぞ? おじとはつまらないな」

「ん…アーネストおじさま…」

 彼女の頬をつつこうと指を伸ばしたところで呟きが聞こえたので慌てて指を離した。


「何をしているんだか…。いかん、良い状態じゃないな」

 自身とディアナの違いを確かめるように冷たい手で彼女の暖かな肩を撫でた。

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