第二十一話 夫人たちの噂
ミルクをたっぷり入れたアールグレイとママレードが出されると、それぞれ会話を楽しみながらのんびりと紅茶を飲んでいる。正式な茶会とは違い、内輪だけのものだからこその気楽さがある。
「最近若い人たちの間で、自転車が流行っていますでしょう? 私、あまり良いものとは思えないんですよね。男の方ならともかく、女の子たちがやっているのを見るのは危なっかしくて」
「そんなに危なくありません。最近よく見かけるのは特に安全の考えているものが多いのですし、慣れてしまえばとっても簡単ですから」
ディアナの反論に眉を引きつらせた夫人を見てディアナは軽く頭を下げて付け加えた。
「確かに少々危なっかしいですよね。でも慣れてしまえば怖くありませんし、それに風景の見え方が変わって、時々やると楽しくも思えますよ」
夫人は難しげな表情でディアナの方を見ていた。どこかの女学校の寮長かと聞きたくなるような表情だ。
「じゃあ、貴女もなさるのですね?」
「イギリスにいた頃やっていたことがありました。だから少し乗れるんです」
「それで、今はなさらないの?」
「こちらには持ってこなかったので。それに……」
横の方から遠慮がちに尋ねられた質問に答えると明らかに残念そうな声色になった。
「残念ね……。ディアナさんならみんなに内緒で教えて欲しいと言っても呆れたりしないと思ったのに」
新しいもの好きな人らしい。彼女の言葉を聞いてテーブルの周りは笑いに包まれた。先程自転車を批判した夫人も思わず笑っていて、硬い表情が欠片も見えない。
「言ってしまっては秘密になりませんよね。うっかりしました。ところでそろそろろ休憩終わりませんか?」
休憩を挟んだお陰か少し捗って、夕方頃に解散となった。
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