第二十話 バザーの準備と伝説
今日はマクウェル夫人達と教会のバザーに出す品物の用意をする日だ。 手袋や
「そういえばディアナさんはこの街で一番古い教会には行かれました? バロック調でとても綺麗なんですよ」
ディアナはスカーフの絹糸を手繰る手を顔をに持っていって考え込む素振りを見せたがすぐ首を傾げた。
「ええと、……いえ、まだ行っていませんわ。普段の礼拝はもう少し近くにある方の教会ですから。何かあるのですか?」
「いえね、少し古いんですけれども、とっても綺麗なんですよ。この街と教会にまつわる伝説もあって一回行ってみるといいと思いますよ」
教会の話をしていると幾人か集まってきた。それなりに有名らしい。
「ヴァンパイア退治の伝説ですよね。幼い頃に一度だけ曾祖父に聞きましたよ」
「確か、たくさんのにんにくで退治したんですよね」
「ええ、それにちなんで今でもにんにくをたくさん栽培しているのでしたっけ? 伝説にしても面白ですよね」
それを聞くうちにディアナはその教会に興味が湧いてきた。
「そのヴァンパイア伝説って、子供の頃に聞かされるものなんですか?」
ディアナの質問に首を傾げたりもしながら互いの顔を見合わせた。そのうち中でも年長と思われる一人が答えた。
「子供の頃と言いますか、私共の祖父、つまり貴女くらいの歳だとひいおじいさまくらいの頃のお話なのでそのくらいに聞いたのだと思いますよ」
実在のことではないけれども、当然のように伝説の存在が認められていると考えていいのだろうと思ったがそういう訳でもないようだ。
「でも……、あちらの教会とあまり関わりのない方はご存知ないですよね、きっと」
話に花を咲かせるといつの間にか時間が経ってしまうものである。ディアナがふと窓の方に目をやると太陽の位置が先ほどからだいぶ西の方へ動いていた。
「あら……」
ディアナの呟きに気づいてマクウェル夫人が会話を続けながら同じように窓の方を見た。
「皆さん、もうだいぶ経ってしまいましたよ。少し休憩をいたしませんか」
ざわざわと同意の声が上がるのを確認してからマクウェル夫人はメイドを呼んでお茶の用意をさせた。
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