第十九話 二人の関係
ピクニックからディアナは友人と散歩を楽しんでみたりマクウェル夫人らと慈善活動をしたりと過ごしていた。
夕食や舞踏会への馬車に揺られながら、また、朝食をとりながらディアナにそんな日々の話を聞くのがアーネストの楽しみになっていた。ディアナが生き生きと楽しんででいるのが手に取るように分かるし、なによりもここ最近更に明るくなっているのである。
「……そうか、じゃあまた自転車を始めるか?」
アーネストが尋ねてみるとディアナは慌てて首を振る。
「そんな、私は練習に付き合うだけで楽しいので気にしないでください。もう色々頂いていますし……」
ディアナはこう言い出すと引き下がらない。慎み深いといえばだが美点なのだがアーネストとディアナはいわば家族ではないか。アーネストとしてはもっと我儘を言って欲しい。
だがディアナとしても簡単に譲れない。アーネストは捨てられ、そのままでは死んでいたかもしれなかったのを拾って、十年も養ってくれている。
その上、高価なドレスを買い与え、姪として大事にしてくれているのだ。あまり我儘を言ってはいけない。そう思うのだ。
アーネストはディアナの考えをおよそ理解していた。それ故、どうやったらディアナが素直に受け取るかを考え始めていた。
普通に渡そうとしても物が物だからディアナは遠慮するに違いない。いつなら良いだろうか?クリスマスや誕生日が妥当だろう。ドレスや小物なら必要だからと言えば済むのだが……。
アーネストが考えを巡らせていると時計の鐘が鳴って時間を告げた。
「あ、おじさま、マクウェルの奥様と約束をしているので出かけてきます」
慌てた様子で立ち上がってディアナは部屋を出て行った。
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