第十五話 友人

「ああ、来たきた。アシュレイ、その方がMs.ディアナ・ファウラー? 初めまして、わたしはカレン、カレン・スチュワート。カレンでいいわ。ねえ、私たち、お友達になりましょう!」


 いきなりカレンと名乗るディアナより幾つか年下に見える女性が手を握ってきて、驚いているとさらに女性がきた。今度はディアナとほとんど変わらないようだ。


「カレン、いきなりすぎてびっくりしているわ。わたしはメイベル・エルシングです。よろしく。メイベルって呼んでくださる?」

「あ、ええ。ディアナ・ファウラーです。どうぞよろしくお願いします」

 慌てて自己紹介をするとメイベルはふふっと笑った。


「あんまり硬くならないで。さ、みんな待ってるわ。行きましょう」

 三人に連れられた先ではもう用意がされていて各々好きに過ごしている。

「もう皆さんお揃いですか?」

 ディアナが尋ねるとアシュレイがが辺りを見回した。

「あとは……リチャードが来れば揃いますね。ひとまず簡単に紹介だけ済ませましょうか。リチャードとはもうお話したことがおありでしたよね」


 アシュレイのその言葉を皮切りに自己紹介が始まった。人数も多く、それだけでも時間のかかるように思えたが舞踏会ですでに知り合っている者も多く、案外すぐに済んだ。そうしているうちにリチャードも来て本格的にピクニックが始まった。


 木陰でカレンやメイベルと談笑していた時のことだった。

「そういえば舞踏会の時、Mr.ファウラーとコールラウシュ未亡人といらっしゃったのは見た? ……えっと、栗色の髪の派手な感じのする美人。あの日は青いドレスをきてたと思うんだけど」


 その人には心当たりがあった。夫人連中に陰口を叩かれていた、そしてアーネストといるところをリチャードがじっと見ていた女性だろう。

「ええ、多分。でもどうかしたの?」

 あまり評判が良くはないような雰囲気があったがどうしたのだろうか?

「どうかしたっていうか、あんまり詳しくはないんだけれどお母さま達からあまり関わるなって言われているから気を付けた方がいいんじゃないかなって」


 カレンにメイベルが補足する形で説明するには、こういうことだった。



 ・マリア・コールラウシュは少し遠くの街から嫁入りしてきた。

 ・彼女の実家は没落して生活が苦しい

 ・彼女の夫はとても評判の良い人であったが三年ほど前に亡くなっている。

 ・夫が亡くなって喪が明けてから多くの男性と浮名をながしている



 浮名をながしているらしいというのは親たちが話しているのを小耳にはさんだだけということだ。彼女らの言い分はもっともだが気をつけようがないし、おじの恋というものはあまり口出しできるような類ではない、というのがディアナの本音だがそれを言ってしまってはせっかくの好意に対して申し訳ないだろう。


「ありがとう。じゃあ気を付けてみるわ」

 話が終わり、ふと前を向いてみるとディアナら三人を何人かが手を振って呼んでいた。

「はーい、今行くわ」

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