第十四話 晴れたピクニック

 アーネストはディアナに、そして街の住民に怪しまれぬよう、細心の注意を払い、そしてそれがぼろを出すことはなかった。

 ヴァンパイアとなってから長い間の中で当たり前の習慣の様なものになっているのである。例えば、得意ではない晴れた昼には外出を避ける、恋人(と言っても獲物とほぼ同義である)の元へは人目に絶対につかないよう夜中、忍ぶというものなどだ。


 だが、この日ばかりは珍しく失態を演じたように思えてならなかった。元々出かける予定だった日は雲が低く垂れ込めていたが、ディアナの予定に合わせて変えた今日という日は快晴なのだ。


「昨日までは雨が降りそうなくらいに曇っていて心配でしたけど、朝になったらこんなに晴れていて、良かったですね、おじさま」

 アーネストの気も知らずにディアナは空を見上げ、くるくると表情を変えながらはしゃいでいる。この姿を見ると晴れていてもいいように感じられるから不思議だ。


 この日の馬車は舞踏会の時の絵キャリッジではなく、少しシンプルで乗りごごちも多少落ちるのだがディアナは全く気にならないようでピクニックについて色々とアーネストに話している。

「さあ、着いたよ」

 アーネストのエスコートで馬車を降りるとアシュレイの所有する公園といっても過言ではない、広い敷地だった。


「Ms.ファウラー、ようこそ。お待ちしておりました」

 ディアナの姿に気づきアシュレイが駆け寄ってきた。アーネストの姿に戸惑いを見せたようだが、それをすぐに隠しにこやかにアーネストに対して頭を下げる。


「こんにちは、Mr.ファウラー。貴方もいらっしゃるとは……」

「やあ、こんにちは。いや、こちらの方に用がありましてね。ここまで送ることになったのです。今日は姪を頼みますよ。……ディアナ、私の帰りは多分少しばかり遅くなるけどいいね。……それではまた。」


 ディアナと、馬車を置いて門に向かってアーネストが歩き始めるとアシュレイは他の参加者達のいる方へと案内しいていった。

「差し出がましいことでしょうが、おじ君は少々過保護ではありませんか?よほど大事なのでしょうが息苦しさを感じることもおありでは?」

 ディアナは何のことか分からない、というように首を小さくかしげたが納得がいったようでにっこりと微笑んだ。


「おじ様がここまで送って下さったり、よく一緒にいるからですか? そう思ったことはありませんわ。いてくださると、本当に安心しますし、今日のだって、私がお願いしたんです。でも、お気遣い感謝します」

 予想していなかった答えにしどろもどろになりながら返事をしているとじきに目的地へ着いた。

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