第4章魅惑のピクニック

第十三話 ピクニックの誘い

 舞踏会から数日後、ファウラー邸に一通の書簡が届いた。



「おじさま、先日の舞踏会で知り合った、Mr.スチュワートとその他の何人かの人達でのピクニックに誘われたのですけれど、行っても構いませんか?」


 ディアナはアーネストに了承をとろうと尋ねたが最初から返答は予測していた。そしてその通りのことをアーネストは返してきた。誰が参加するのか等、最低限の事柄をまず確認するが、


「ああ、いいよ。行っておいで」

 いつもこう言うのである。とうに分かってはいるのだし、否やを言われるのでなく、問題はないのだが少々寂しいものがある。それに、参加者の大半は会ったことがあるものの皆、舞踏会で初めて会った人ばかりである。


「おじさまもいっしょに行きませんか? 忙しいのは知っていますけどおじさまも一緒の方がきっと楽しいわ」

 いつものそっけなさに少しの不安もあったのだろう。ディアナが少しの甘えを含んだ口調で言うのでアーネストは苦笑するしかなかった。


「私も行きたいのは山々なんだがしばらく手が離せなくてね、すまないが遠慮させてもらうよ。それに若者ばかりの中に入るもどうかと思うからね。だがまあ、そちらの方に用があるから途中までは一緒に行こう」

 その言葉に明らかに安心してディアナの表情が数段明るくなった。

「はい!」

 それから少ししてディアナがその場を離れると机の上の便箋を一枚とり、文章を綴り始めた。


「……よし、これでいいな」

 呼び鈴を鳴らして、その音を聞いてやって来た使用人に書いたばかりの手紙を託す。

「これを届けてくれ。それから、暫くは書斎に誰も立ち入らないように、と伝えておいて欲しい。いいね?」

「かしこまりました」

 そうして書斎に入り、鍵をかけると日差しの入らない一角に置かれた長椅子に横たわり瞼を閉じた。


「休息と言ってもあまり意味はないが……それにしてもベッドを使う日は来るんだろうか……」

 アーネストはもっぱら夜は書斎で仕事をするか、外出している。昼間から寝室にいるとディアナが心配するため昼にベッドで寝るというのは不可能に等しい。となると、自然に休みのも仕事をするのも書斎ということになってしまうのだ。仕方のないこと、そう思っても少し申し訳なくもあるのだ。


 暫くして目を覚ますと、夕暮れ前になっていた。ひとつ伸びをして衣服を整えると丁度光の当たりにくい位置を探してそこに座り、そこで食事に呼ばれるまで書類に目を通した。

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