第十話 舞踏会ーダンスー
広間に着いたところで曲が終わってしまった。それなら丁度いいと辺りを見回したが、既にこれからの曲のペアが決まっているようで、若い紳士は皆女性をエスコートしているせいでディアナの相手ができそうになかった。つまらそうにおとなしく壁の方へ歩こうとしたところをアーネストが呼び止める。
「ディアナ、お手を。 一曲踊ってください」
礼儀にのっとって手を差し出すと心得たようにディアナも笑みを浮かべてその手を取る。人々の輪に入り、踊るうちに会場も熱気に包まれていった。
曲が終わると人々はまた礼をして、離れ、声をかけられて別の人と組み、または同じ人と組み、礼をする。
アーネストは輪から離れたが、ディアナはそばにいた若い男性に誘われ、踊ることになった。
「Ms.ファウラーのようなお美しい方と踊ることができるとは光栄です。私、アシュレイ・スチュワートと申します。Ms.ファウラーはイギリスからいらっしゃったとお聞きしましたが、こちらはいかがです?」
「まだ、昨日到着したばかりですので、まだよくわかりませんけれど、素敵なところですね。ところでMr.スチュワートはどのようなことをしていらっしゃるのですか?」
直接的な返答はせず、無理やり話題を変えたが、気を悪くしていないだろうか?少し不安を感じたが全くの杞憂だった。
「あまり大したことはしていないのですが、いくらか土地があるのでその関連が多いですね。とても良いところです。いつかご招待しましょう」
とても穏やかな性格なのか、終始和やかに談笑することができた。
何曲か踊って休憩のために端の方へ行くとマクウェル夫人と一人の青年と話すアーネストを見つけた。
「おじ様、マクウェル夫人」
声をかけるとアーネストが少し横にずれて、ディアナの場所を作った。
「ディアナさん、丁度よかった。これが先程話した息子です。いつ紹介しようかと、話していたところですよ」
言われてみれば、青年の顔立ちは何処かマクウェル夫妻のそれと似ている。特に頬の輪郭などはベンジャミンのそれとよく似ている。
「初めまして、リチャード・マクウェルと申します。両親から貴女のことは伺っておりました」
少し頰を紅潮させ緊張した面持ちで紳士的に礼をし、ディアナの手の甲に軽く唇を触れさせた。手が離れるとディアナも腰をかがめて礼を返した。
「こちらこそ、はじめまして。ディアナ・ファウラーです。お目にかかれて光栄です」
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