間章
無
無い、何も無い。
「そこ」には何も無かった。
最初から何も無かったのか、それとも何かを理由に何も無くなってしまったのか。
とにかく「そこ」には何も無かった。
色も無い。
音も無い。
臭いも無い。
味も無い。
感触も無い。
更には過ぎ行く時間すら無い。
そして何故、無いのかを考える、思考すらも無いのだ。
ただただ有りと有らゆる、何もかもが無いのである。
ひょっとしたら「そこ」そのものすら無いのかもしれない。
だから「そこ」としか表わす事が出来ないのであって、「そこ」を的確に表わす言葉すら無いのだ。
もし「そこ」に何かを持ち込んだとしても、その様な事実すら無くなってしまうのではなかろうか。
無い、何も無い。
「そこ」には何も無かった。
とにかく「そこ」には何も無かった。
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