挿話拾捌/伝説の魔法使い

万象ばんしょう


五百年程前に炎の大陸を統一したえん帝に仕えて、炎、氷、風の魔法を使いこなし、炎の大陸を統一する際に獅子奮迅の活躍をした、伝説の魔法使い。


実際には、炎、氷、風だけでなく、大地の魔法も使っていた。


しかし大地の魔法、そして大地の精霊に関しては、未だに、その存在すら信じられていない地域があったりもする。


更に万象は戦闘において、大地の魔法を使う事は殆ど無かった。


戦闘では炎、氷、風の魔法が使えれば十分に事足りていたし、万象が使う攻撃用の大地の魔法は周囲にも被害を及ぼすものであったからだ。


わざわざ大地の魔法を使う必要は無かった。


そして万象は戦闘での活躍が評価されて伝説となったのである。


その様な事から、五百年程前に万象が大地の魔法を使っている事に気付く者は誰一人として居なかった。


そして炎帝が炎の大陸を統一すると、その後、万象は炎帝の下を離れて、暫くの間、各地を転々とする事となる。


万象は自らが全ての精霊の守護を受けている事で、他の者達には出来ない、この精霊の星から自分だけに与えられた特別な使命がある様に思った。


そして万象はこの精霊の星に古くから伝わっていた、大地の大陸に関する伝説を説き明かす事こそが、自らに与えられた使命なのではないかと考えたのである。


ある意味、伝説の男が精霊の星の伝説に挑む事は運命付けられていたのかもしれない。


更に言うと、万象自身も大地の大陸に関する伝説には大変な興味を持っていた。


自分が大地の精霊の守護も受けているのに、この精霊の星において、現実には大地の大陸が存在しない。


その事がどうしても不思議でならなかった。


そして万象は各地を放浪しながら、大地の大陸に関する情報収集をする。


また実際に南半球に何度となく足を運び、調査を繰り返して、大地の大陸に関する伝説を解き明かそうとした。


その後、数百年の歳月を掛けて、やっとの事でその伝説を解明するまでに至る。


正に通常の何倍もの寿命を持った万象にしか出来ない事であったのかもしれない。


そして自分一人では大地の大陸を復活させる事が不可能である事を知って、その後、万象は再び炎の大陸へと戻って来る事となる。


しかし万象が放浪している間に、炎の大陸では炎帝が何者かに討たれていて、再び混乱を極めていた。


そんな中で万象は炎の大陸の奥地にある小さな村に辿り着く。


万象はその村で、大地の精霊の守護を受ける者達を受け入れながら、大地の大陸を復活する事が出来る、精霊の星に選ばれし者達が現れる事を待つ事になった。


そして辿り着いた村で待つ事、百年程、経った時、一人の大地の精霊の守護を受けた若者がやって来る。


その若者は崩墟ほうきょという名で、言葉を発する事が出来なかったが、言葉を解する事は出来た。


そんな崩墟に対して万象は大地の精霊の守護を受けた者同士で地面を振動させて意思疎通を図る、大地の魔法を教える。


それまでの崩墟にその様な事は思い付く事すら出来なかったが、万象から教わると、すぐに習得する事が出来た。


万象はそんな崩墟の潜在能力の高さを一目で見抜いて、精霊の星に選ばれた者だと確信する。


そして崩墟と共に燿炎ようえん達、他の精霊の星に選ばれし者達が来る事を待ち続ける事となった。

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