挿話拾漆/照らし出された道筋
そして燿炎は何かを考え込む様に黙ってしまう。
燿炎は万象の名に聞き覚えがあって、それが何なのかを思い出そうと、必死に自らの記憶を探った。
そして暫くしてから燿炎が話し始める。
「五百年程前に炎の大陸を統一した
「ほほう。そんな昔の事を知っている者が、まだ、おったんじゃな」
少し感心する様に万象が応えた。
燿炎が驚きの表情を顕にして言う。
「まだ、ご健在だったのですね」
「勝手にわしを殺さんでくれよ」
万象が笑いながら応えた。
燿炎はバツが悪そうに謝る。
「すみません」
「いや、いいんじゃよ。すでに死んでいると思われていても、仕方のない事じゃ」
万象が勘違いされていても無理はない事を伝えた。
そして続けて話をする。
「実はわしはな、全ての精霊の守護を受けておって、その分なのか、寿命が通常の何倍も長い様なんじゃ」
それを聞いた燿炎は万象に訊く。
「と云うと、大地の精霊の守護も受けておられるのでしょうか?」
「そういう事になるかな」
万象はそう応えた。
燿炎が万象に伺う。
「もう一つ、お尋ねしたい事があります」
「なんじゃ?」
万象が短く応えた。
再び燿炎が万象に訊く。
「何故、炎帝の下を離れたのでしょうか?」
「なんの事はない。役目を終えただけの事じゃ」
万象があっさりと答えた。
三度、燿炎が万象に訊く。
「万象が炎帝の傍に居れば、炎の大陸が再び混乱に陥る事は無かったのかもしれないのでは?」
「いや、それは間違いじゃ。確かに、あの時、一時的に、ではあるが、平和を手にする事が出来たのかもしれない。しかし争いに依って手に入れた平和など、そう長続きするもんじゃないんじゃよ」
万象は燿炎の疑問を否定した上で、自身の考えを述べた。
幾度となく燿炎が万象に訊く。
「では、それも定めだと?」
「そうじゃ」
万象が短く応えた。
此処で燿炎は考え込んでしまう。
すると今度は万象の方から訊いてくる。
「主等、こらから、どうするつもりじゃ?」
燿炎は考え込んだまま答えようともしない。
それを見て
「
「それは解っておる。その前に、やっておく事があるんじゃよ」
凍浬の言葉を聞いた万象が言った。
今度は凍浬が万象に訊く。
「やっておく事とは?」
「大地の大陸を蘇らせる事じゃよ。そうする事で多くの民衆の支持を得られる」
万象が凍浬の問いに答えた。
凍浬は万象の言葉に疑問を呈する。
「なるほど。しかし大地の大陸はその存在すら明らかになっていないのでは?」
「大地の大陸は南にある。南にある四つの小島で、それぞれ炎、氷、風、大地の精霊の守護を受けて、この星に選ばれた者達の魔法に依り、大地の大陸は蘇る」
凍浬の疑問に対して、万象は信じられない様な話をした。
凍浬を始めに反乱軍の者達は皆、呆気に取られている。
そんな反乱軍の者達を横目に万象は続けて言う。
「主等は崩墟を加えて、この星に選ばれし者達が揃ったではないか」
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